慢性膿胸外科治療における有茎大網充填術の有用性の検討

第24回日本呼吸器外科学会総会号
229(423)
PS−045−2 春灘:繍お些鴇に閉倉l」し治癒せしめた右肺全摘後
PS−045−3
滋賀医科大学医学部呼吸器外科
愛知県厚生連加茂病院呼吸器外科
尾崎 良智,大塩 麻友美 鹿島 祥隆 北野 晴久,藤田 琢也,
藤田 美奈子 澤井 聡,手塚 則明,藤野 昇三
平松 義規,横見 直敬
術後難治性気管支断端痩に対し金属コイルによる閉
鎖と遊離筋肉皮弁により完治した1例
【症例167歳,男性.63歳に胃癌にて胃切除の既往がある.平成16年12月21日
1はじめに】肺全摘後の有痩性膿胸は治療に難渋し,しばしば致死的転帰をと
ることもある重篤な術後合併症である.今回われわれは右肺全摘術後に発症
した有痩性膿胸に対し開窓術後に大網被覆を行い,痩孔閉鎖を確認後単純創
閉鎖にて治癒しえた症例を経験したので報告する・1症例】患者は30代後半の
男性.特に基礎疾患は無く咳徽を主訴に前医を受診したところ,右中間気管
支幹より発生する腫瘍を指摘され当院紹介された.気管支鏡検査では確定診
断はつかず手術を施行した.術中迅速病理で腺癌の診断であったため右肺全
摘を施行した.術後の病理検査では定型カルチノイドの診断であった.術翌
日に気管支断端痩を認、め再開胸し痩孔の閉鎖を行ったが全濃胸となり,初圓
手衛より1週間後に第4および5肋骨の一部を切除して開窓術を施行した.開
窓後膿胸腔は清浄化されたが気管支断端は完全に離開した.開窓術後48日目
に大網を有茎性に採取し経横隔膜で膿胸腔に誘導して気管支断端に被覆,園
定した.気管支断端の直接閉鎖は不可能であったため・創部の閉鎖はせず開
窓のまま包交処置を継続した、一時大網のやせのため気管支断端馬囲に遊離
腔が鵬現し気漏がみられたが,その後大網の成長とともに断端周囲の遊離腔
は縮小し,大網被覆後60日欝に気漏は消失,さらに気管支鏡検査で断端の閉
鎖を確認した.大網被覆後135日目に創部を洗浄,郭清したのち胸郭成形を
追加せず単純翻閉鎖した,術後感染の徴候を認めず創閉鎖後12日目に退院し
た.【考察1本症例では治癒までに長期間を要したが,痩孔の閉鎖後二期的に
創閉鎖することで侵襲の大きな胸郭成形を回避できた.
右S6発生の扁平上皮癌にて右下葉切除とND2aを行った〈pT4(PM1)NOMO
3B期〉.気管支は自動縫合器(3.5mm)にて切離し,断端被覆は行わなかった.
術後9日目に軽快退院となった、しかし術後58日目に咳と多量の疾を認め,
気管支断端痩と診断された.MRSA膿胸も合併し,胸腔ドレナージと洗浄
および抗生剤投与の保存的治療を行ったが,断端旗の改善は得られなかった.
このため平成17年8月12日気管支断端の再縫合と肋間筋弁による被覆術を行
ったが,この術後14日目に断端痩の再発を認めた・MRSA膿胸の再燃と抗
生剤による腎機能低下から術後36日目に開窓術を行い,外来通院治療とした.
しかし平成17年12月腎機能が悪化し人工透析を開始した、同時に」紹葵,腎性
貧塗L,高盈圧,低栄養も合併し,MRSA膿胸および気管支断端痩の改善は
晃られなかった.平成18年7月人工透析の離脱と全身状況の安定が得られた
ため,全身麻酔下に気管支断端痩に対し血管塞栓用金属コイルとサージセル,
フィブリン糊による気管支鏡下の充填閉鎖を行った.岡時に膿胸腔に対して
は醸膿膜切除と肋骨切除による胸郭形成さらに腹直筋の遊離筋皮弁と右大腿
からの植皮術により開放された膿胸腔を閉鎖した.術後経過は良好で術後23
日目に軽快退院となった.1まとめ】MRSA膿胸を合併した難治性の気管支
断端痩に対し金属コイルと遊離筋皮弁により根治に成功した症携を報告した、
長期に再発を繰り返す有痩性膿胸は治療に難渋する、特に断端痩の閉鎖は縫
合,被覆が困難となると残された有効手段は少ない.今回の経験より撫管塞
栓用コイルは痩孔閉鎖に有効な手段の一つと思われた、
PS−045−4 騰欝胸外科治療における有茎大網充填術の有朧
PS−045−5
東北摩生年金病院呼吸器外科
和泉市立病院外科
鈴木 隆哉,田畑 俊治,井上 團彦,藤用 奈々子,石橋 直也,
三友 英紀,藤村 重文
澤田 隆吾,須浪
小坂 錦司,阪本
慢性膿胸外科治療における有茎大網充填術の有用性の検討1目的1慢性膿胸外
科治療における大網充填術の有用性について検討する.【方法】当院における
2005年1月以降の慢性膿胸症例のうち,有茎大網充填術を施行した4例につい
て検討した.1結果】症例はすべて男性で年齢は48才∼80才,右側3例・左側1
例であった.対象疾患は侵襲性肺アスペルギルス症・肺アスペルギローマ・
症例は50歳,女性.6年前に右肺癌にて右肺全摘術を施行,無再発で経過し
ていた.定期験査にて気管支ファイバーを施行した際,右気管支断端に軽度
の隆起性病変あり,生検行うも異常は認められなかった.検査後より摂食後
に咳徽がひどくなり,平成17年8月の胸部X線写真にて右胸腔内にair一且uid
右肺全摘後の晩発牲食道胸腔痩に対して胸腔鏡,腹
腔鏡補助下に大網被覆充填術を施行した1例
毅,雪本 清隆,松岡 翼,柏木
一次 山下 隆史
伸一郎,中尾 重窟,
levelが認められ,CTにて食道胸腔痩による膿胸が疑われた.ガストログ
MRSA膿胸・非定型抗酸菌症各1例であり,全例が再手術であった、症例1
ラフィン造影にて食道と右胸腔内の痩孔が確認、され・内視鏡にて門歯より
は左鎖骨下動脈へ浸潤した肺癌に対し,左上葉切除と人工血管置換術を施行
した男性で,術後7年目に人工廠管付近の空洞にアスペルギルスが感染した.
Compietion pneumonectomy・大網充填・胸郭形成術を施行した.症擁2は
急性膿胸術後の右上葉にアスペルギルス菌球が形成されたもので,上葉切
除・大網充填・胸壁再建術を施行した.症例3は肺癌右肺全摘術とゴアテッ
25cmの胸部中部食道右壁に約IOmm径の痩孔が認められた.胸腔内は,厚
の後に痩孔切除・大網充填・胸郭形成術を施行した.症例4は右結核に対す
い膿苔で覆われ食物残渣が貯留していた.同時に気管支ファイバーにて,ご
く小さな気管支胸腔旗も確認された、以上より,右肺全摘後の晩発性食道痩
による有痩性膿胸と診断し,保存的に加療しつつ,栄養状態の改善を図った
後に、平成18年5月手術を施行した、手術では腹腔鏡補助下,上腹部小切開
にて右胃大網動脈を栄養動脈とした有茎大網弁の作成を先行し,第4肋間薗
測方開胸にて胸腔にアプローチし,胸腔鏡補助下に膿苔,腓腫を掻破し,縦
る人工気胸術後の男性で,術後50年目にMycobacteriumに感染し有痩性膿
隔面に径1cmの食道痩開口部を確認した.すぐ頭側に右気管支断端閉鎖部
胸となった.右肺全摘術・大網充填・胸郭形成術を施行した.全例とも術後
炎症所見や喀疾・盛疾,その他膿胸に伴う諸症状は著開に改善した.大網の
機能不全はなかった、1例に術後心不全を認めた・また全例に食欲不振と胃
内容物の停滞が認められ,一時的に経静脈栄養を必要とした.1結論1慢性膿
胸に対する根治術として大網充填術は有効な手段と考えられた.特に人工物
の存在により感染が遷延している場合,空間の充填のみならず感染巣の積極
と思われる縫合糸を認めるも,明らかな気管支痩は確認されなかった、可及
的に膿胸腔の清浄化を図った後に大網弁を胸骨後経路にて胸腔へ誘導し,食
遵内視鏡にて痩孔内に引き込み充填し,さらに痩孔周囲と縫合し被覆閉鎖し
た.胸腔は大網弁のみで充填できため,他の処置は追加しなかった.疲孔の
閉鎖を造影で確認した後,食事摂取を開始し,30目目に退院,術後6ヶ月ま
で良好に経過している、今回,肺全摘後の食道痩による膿胸に対して鏡視下
手技を併用し,比較的低侵襲に根治手術を施行しえたので若干の文献的考察
クスシートによる心嚢膜形成術後にMRSA膿胸で,2年間のドレナージ治療
的な浄化作用が期待できる.
を加えて報告する.