Ⅰ群 -医師部門③- 3. 腹腔鏡下虫垂切除術における術中大量洗浄の有用性の検討 演者 田園調布中央病院 鈴木 直人 【目的(はじめに)】 内視鏡外科診療ガイドラインでは、虫垂炎に対する腹腔鏡手術の適応基準は「穿孔あるいは膿瘍形成が疑わ れる場合には腹腔鏡手術は積極的には推奨されない」とされている。当院では虫垂周囲膿瘍を含め手術適応と なる急性虫垂炎すべてを本術式の適応とし、術式の工夫として全例に高速洗浄器による術中大量洗浄を施行し ている。今回我々は当院における腹腔鏡下虫垂切除術の有用性について報告する。 【方法(内容)】 2006 年 10 月から 2010 年 3 月までに当院で施行した腹腔鏡下虫垂切除術 75 症例を対象とした。3 ポート で施行し、虫垂間膜は超音波凝固切開装置、虫垂根部は Endo-loop で二重結紮処理をしている。洗浄は高速 洗浄器を使用し、洗浄量は術中に炎症性腹水を少量でも認めれば温生食 10ℓとし、それ以外は温生食 5ℓとし た。ポート挿入は 10ℓ症例では右側アプローチとし、術者は片手で操作を行い、5ℓ症例では左側アプローチと し、術者は両手で操作を行う。洗浄部位は局所およびダグラス窩とした。虫垂の回収は全例回収バックを用い た。開放型ドレーンを全例ダグラス窩に挿入し、翌日抜去とした。 【結果(結論)】 男性が 32 例、女性が 43 例であった。平均年齢は 37.1 歳、平均手術時間は 82.6 分で開腹移行例はなかっ た。洗浄量の内訳は 10ℓが 41 例、5ℓが 34 例であった。組織学的にはカタル性が 6 例、蜂窩織炎性が 37 例、 壊疽性が 32 例であった。これらすべての症例で術後合併症は認めなかった。一方、大量洗浄導入以前の 5 年 間 77 症例中では術後合併症として腹腔内膿瘍 1 例、腹壁膿瘍 1 例であった。 【考察】 腹腔鏡下虫垂切除術の普及には高度炎症症例や膿瘍形成症例に対しても積極的に本術式を取り入れ、開 腹虫垂切除術と比較し、術後合併症を減少させる手技が必要となる。その手技の一つが高速洗浄器による術中 大量洗浄であると考えられた。
© Copyright 2024 ExpyDoc