第24回日本医療薬学会年会抄録

第 24 回
日本医療薬学会年会抄録
演題名:メサドン塩酸塩錠の使用状況調査
兵庫県立がんセンター薬剤部
○塚本早百合、逸見結衣、渡辺小百合、濱谷安希子、伊勢原祐子、藤原正幸、安達嘉織、
小田中みのり、柴田直子、中晴徹、大前隆広、川高菜緒、大谷祐子、見上千昭、吉田直恵、
奥川斉
[目的]メサドン塩酸塩錠は 2012 年 9 月に製造販売承認された癌性疼痛治療薬で、オピオイ
ドローテーションの選択肢のひとつとなっている。しかし、FDA から過量投与、薬物相互
作用、心毒性等に起因すると考えられる呼吸抑制、心室頻拍が生じ、死亡する例が報告さ
れていることから、適正に使用するよう注意喚起が出されている。今回は、当院でのメサ
ドン塩酸塩錠の使用状況を調査した。
[方法]2013 年 4 月~2014 年 3 月に当院でメサドン塩酸塩を処方された患者を対象に、メ
サドン塩酸塩錠導入前オピオイド、メサドン塩酸塩錠の投与量、有害事象、NRS の変化等
をカルテにてレトロスペクティブに調査した。
[結果]メサドン塩酸塩錠を処方された患者は 28 例(男性 19 例、女性 9 例、年齢 20~70 代)
であり、原疾患は肺癌 9 例、大腸癌 5 例、胃癌、腎癌、前立腺癌がそれぞれ 2 例、その他 8
例であった。導入前オピオイドはオキシコドン徐放錠 11 例、フェンタニル貼付剤 8 例、多
剤併用 7 例、その他 2 例であった。メサドン塩酸塩錠初回投与量は 15~45mg/日であり、
最終投与量は 15mg~95mg/日であった。有害事象は主に便秘 6 例、悪心・嘔吐 11 例、眠
気 17 例等、他のオピオイド鎮痛剤と同様のものであったが、呼吸抑制 2 例、電解質異常 3
例の発現等もあった。便秘に対しては下剤の追加・増量、悪心・嘔吐に対しては制吐剤の
変更・追加等、眠気に対してはメサドン塩酸塩錠の減量で対応可能であった。NRS は全例
で改善が認められた。導入前から QT 延長があったが患者希望によりメサドン塩酸塩錠を導
入し、投与前にマグネシウムの補正、投与中の心電図モニター管理、頻回な血液検査によ
る電解質の確認等を行い、投与中、QT 延長、不整脈の発症なくメサドン塩酸塩錠の増量も
行えた症例が 1 例あった。
[考察・結論]メサドン塩酸塩錠は他のオピオイド鎮痛薬の多剤併用にて疼痛コントロール不
良な患者にも有効であり、有害事象は追加処方、メサドン塩酸塩錠の減量等で対応可能な
ものであったが、過量投与と思われる有害事象の発現もあった。QT 延長のある患者への投
与は状態に応じて可能であることが示唆されるが、十分な管理下で投与する必要がある。