よこはま 学校評価 ニュース - 横浜市

平成20年10月30日
横浜市立学校を元気につなぐ
V o l u me
よこはま 学校評価 ニュース
⑮
発行 : 教育センター
授業改善支援課
「学校評価のポイント」
9 月 17 日(水)教育センターで第 2 回横浜市学校評価運営委員会が開催
されました。 委員の玉川大学 通信教育部准教授 福本みちよ先生からは、
「学校
評価のポイント」について貴重なお話をお伺いすることができました。福本先
生は教育行政、学校経営、学校評価を主な研究領域とされており、平成18年
度より横浜市の学校評価運営委員や第三者評価委員としてご協力をいただいて
います。以下に当日の福本先生のお話をまとめました。
福本みちよ准教授
ツールとしての学校評価
まず、最初のポイントは、学校評価はツー
ルでしかないということをしっかり意識する
ということです。学校評価そのものを実施す
ることがねらいではないのです。学校評価に
ふりまわされてはいけません。また学校評価
は学校の成績表でもありません。評価した数
値結果は、5がよくて1がよくないというこ
とではなく、なぜ5なのかなぜ1なのかとい
うとらえが大事なのです。原寸大の姿をとら
えてその姿をどうしていくのかということで
す。それを学校の中で共通認識することが必
要です。いろいろな先生方がいらっしゃるの
で全ての先生方の考え方を一つにまとめるこ
とは困難な場合もありますが、それぞれの先
生の持ち味を活かしながら同じ方向に向かっ
ていくことが大事です。
に取り組むとよいでしょう。10の分野を3
年見越して評価するのです。独自項目につい
ても同様です。1年で全ての分野にわたって
独自項目が出せなくてもよいと思います。3
年で全ての分野について独自項目を出せるよ
うになるとよいと思います。独自項目は職員
会議で考えて出てくるものではありません。
学校のどこを見てほしいのか、この学校の
特徴は何か、ということを先生方が普段から
意識し理解していることが大切です。現在、
自校の独自項目が思い浮かばないということ
であれば、それが現実であり、今の学校の原
寸大の姿です。評価で大事なのは気づきです。
ないのにあるふりをして、立派な報告書を作
ることが狙いではありません。学校評価によ
って学校が改善され、先生方が元気になって
いくことが大事なのです。
重点的な評価の実施
次のポイントは、重点的な評価を実施して
いくということです。総花的な評価よりも重
点的な評価が望ましいといえます。初年度に
10の分野で評価項目を設定したら、1年間
ですべてを詳細に評価しようとするのではな
く、年度ごとに重点をしぼり、3年1サイク
ルですべての分野を重点的に評価できるよう
原寸大の学校の姿
3番目のポイントは、学校評価を通して、
学校の原寸大の姿を見るということと、学校
がどのように成長してきたかをきちんと把握
するということです。教職員の自己評価と保
護者の評価にずれがあったらそれは原寸大だ
とは言い難いといえます。そのずれを補正し
ていくには具体性が必要です。授業評価を保
護者の方に協力していただくときも「自由に
ご意見をお書き下さい」とするのではなく、
「・・・についてどう思いましたか。」という
ように何を見てほしいのか、具体的に記述し
思いやねらいを伝えていくことが必要です。
地域や保護者の方々に適切なご協力をいただ
き、学校評価の結果を積極的に活用していく
ことが大切です。
評価項目についても抽象的な学校がありま
す。特定の限られた人数の職員で評価項目を
たてると抽象的になってしまう場合がありま
す。評価項目が書かれている書類の学校名を
消した場合でも、それが自分の学校だと分か
るような具体的な内容があるとよいです。あ
る学校では「算数の○年生のノート指導を徹
底する」などの具体性があります。環境教育
の項目をつくるとしても学校として具体的に
どうとらえるのかということをクリアにして
いくことが必要です。
PLAN-DO-CHECK-ACTION の PLAN
(計画)の部分をいかに具体的に立てられるの
かが大事なのです。何のために学校評価をす
るのかということをしっかり意識しなければ
なりません。ただ報告書を提出して終わりと
いうことであれば、もったいないです。
効果的な『評価の構造化』
また、もし可能であれば、評価の構造化を
行いそれを活用してください。それぞれの評
価項目を評価し結果が出たときに、他の項目
とどうリンクしているかということを考察す
るのです。例えば「教員研修に関しての項目」
と「子どもが授業を楽しいと捉えているか」
という項目はまったく無関係ではく、何らか
の相関関係があることが考えられます。一つ
ひとつの項目が去年と比べどうだったという
ことだけではなく、他の項目との関連を探る
ことが大事です。そのように評価結果を読み
解いていくということができればさらに学校
評価を有効に活用することができます。
学校関係者評価の位置付け
さらに、学校関係者評価に関してですが、
学校関係者評価は、学校の自己評価を評価す
るのが前提なので、自己評価がきちんとして
いなければ、関係者評価は成り立ちません。
また学校関係者にどこを見てほしいのかとい
うことを、教職員が事前に考えなくておかな
くてはなりません。全ての分野や項目につい
て学校関係者に一度に評価してもらうのは無
理です。こちらも3年の積み重ねを考えつつ
重点化していくとよいです。
学校評価で学校を元気に
学校評価では、取組が遅い速いという比較
をすることではなく、学校ごとにタイプがあ
ると認識する必要があります。他の学校と比
べて自分の学校をどう位置づけるかというこ
とではなく、原寸大の学校をとらえ、評価の
結果を活用して学校をさらによくしていくこ
とが大事です。
先生方には自信をもって取り組んでいただ
き、学校評価を通して学校も先生も元気にな
っていただきたいです。
福本みちよ先生の
玉川大学通信教育部准教授。
国立教育政策研究所研究協力者、青山学院大
学講師、山梨英和大学人間文化学部教職課程
准教授などを経て現職。主な研究領域は、教
育行政・学校経営・学校評価(ニュージーラ
ンドの学校評価システム)。文部科学省「義
務教育諸学校における学校評価ガイドライ
ン」作成検討のための研究会(学校評価シス
テム研究会)協力委員、平成 18 年度横浜市学
校評価事業運営委員、平成 19 年度横浜市第三
者評価委員などを歴任。
横浜市学校評価研究推進校
第3回協議会
授業改善の取組を核とした学校評価の推進
9月12日(金)金沢区能見台南小学校を会場に横浜市学校評価研究推進校の第3回協議会
を行いました。小学校5校(白幡小学校・日枝小学校・山下みどり台小学校・三保小学校・能
見台南小学校)と中学校3校(篠原中学校・根岸中学校・森中学校)の学校評価担当者が集ま
り、授業研究会を参観する中で「授業改善を核とした学校評価」について協議を進めました。
能見台南小学校の武山朋子主幹教諭からは、授業改善に向けた取組の紹介がありました。
■
協議会の開始
・・・
能見台南小学校から「授
業改善に焦点化したPD
CAサイクルを構築する
学校評価」の実践について
● 提案の骨子 ●
能見台南小「授業改善に焦点化したPDCAサイクル」について
授業改善につながる学校評価を行うために、効果的なPDCAサイクルと連動した授業研究に取り組む
P 研究授業は、授業者と学年部会で計画を立てる。
D 公開授業は、他校にも呼びかけて開催する。また、授業研究会は、授業者個人ではなく、
C
A
■
■
学年部会からの提案とする。
研究協議は、ワークショップ型で行い、授業についての協議に全員が参加して共通理解を
図れるようにする。
研究協議を通して得た学びを、個人で次に活かしたり、推進委員会で次の授業研究会につ
なげたりする。
※ このPDCAサイクルを学校評価の評価指標に位置付けていく。
授業研究会の見学
この日、能見台南小学校では、生活科と理科の
授業を、他校にも呼びかけて公開しました。
その後のワークショップ型の研究協議にも他校
の教員が入り、活発に意見交換が行われました。
協議会では、その場面を見学し、授業研究会の在
り方を考えました。
協
議 「授業改善の取組を核とした学校評価の推進について」 (出された意見の中から抜粋)
□ ワークショップ型の授業研究会では、参加者全員が
活発に意見を出し合える大きな成果を感じた。ファ
シリテーションの役割の大切さも分かった。
□ 見学したワークショップ型の授業研究会は、中学校
でも各教科の授業改善に向けた研究会で生かせる
と考えている。
□ 学校評価のPDCAサイクルを構築する中に生徒
の授業評価を授業改善に結びつける視点を採り入
れていこうとしている。
□ 1月に中学校の全クラスを公開しての授業公開を
考えている。その際には、生徒の授業アンケートか
ら改善された授業提案をしたいと考えている。
□ 中学校では、授業研究会の機会をつくる大切さを感
じている。先生たちが意識できるように年間計画に
示している。
□ 授業研究会をソーシャルワーカーや臨床心理士な
ど、様々な立場の方をお迎えして実施している。専
門的な意見が授業研究に役立っている。
□ 授業公開を保護者にも、授業を見る視点を提示して
行うことで学校理解につなげていきたい。
□ 「授業改善に焦点化したPDCAサイクル」を構築
するために、その学校の職員が学校評価の評価指標
として意識し自己点検・自己改善の取組として意識
していくことが大切だと考える。
第3回学校評価実践研究校協議会
9 月 17 日(水)15時より教育センターにおいて、学校評価実践研究
校協議会が開かれました。
新羽小学校の寺澤みゆき主幹教諭からは、
「評価指標に基づく学校評価
の取組」について、小中一貫などの重点を中心に学校独自の評価指標を
考え学校評価を推進することで、学校が何を目指しているのかが明確に
なったとの実践報告がありました。それを受けて「評価指標の設定の仕
方と今後の課題」について研究協議がなされ、最後に「学校評価のポイント」について、玉川大学通信教育
部准教授の福本みちよ先生より講話をいただきました。
学校評価をツールとして、学校の原寸大の姿をとらえ活用していくこと、各校の特色に応じた具体的な取
組を推進していくことなどが話題に上りました。このときの福本先生の講話の詳細につきましては本号の
1・2 面に掲載しましたので合わせてご覧下さい。
第2回学校評価運営委員会
9 月 17 日(水)学校評価実践研究校協議会終了後、17時より、第 2
回学校評価運営委員会が開かれました。
「協議会及び運営委員会年間スケ
ジュール」について、また「学校評価計画書集計結果」について報告が
なされました。評価指標の設定は 5~9 月とする学校が多いこと、自己
評価の実施の時期としては、「7~9 月」と「12 月~2 月」にピークがあ
り、中間評価を入れて、評価を年2回実施するところも多く見られるこ
とが分かりました。また、3月に自己評価を公表する学校が多い中で、時期を半年ずらし「9 月~10 月」に
公表を考えている学校もあります。夏休みを利用し、「自己評価書」「学校関係者評価書」をじっくりとまと
める時間を確保するというねらいもあるようです。
さらに、評価項目の重点化について、全体の評価項目を見渡した上で行う必要があること、学校評価を推
進するにあたっても、学習評価のときのような「指導(運営)と評価の一体化」が必要であることなどが協
議されました。実効性のある学校評価の在り方につきましては、12 月 17 日(水)15:00 から鶴見会館で開
催される学校評価シンポジウムでも引き続き発信してまいります。
横浜市広報印刷物登録
第203009号
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