電気回路学講義ノート

電気回路学
Electric Circuits
情報コース4セメ開講
分布定数回路
山田 博仁
今後の講義日程
喜安、斎藤 著 電気回路
8章 分布定数線路
8.1 線路の伝送方程式
8.2 伝送方程式の定常解
8.3 波の伝ぱん
山田 博仁 著 電気回路
7章 分布定数回路
7.1 分布定数回路とは
7.2 伝送線路
12/4
7.3 伝送方程式の定常解
7.4 波の伝搬
8.4 線路の縦続行列
7.5 線路の行列表現
8.5 波の反射
7.6 線路端条件による電圧・電流分布
12/11
8.6 反射係数
7.7 波の反射と定在波
7.8 反射係数
8.8 理想線路、無ひずみ線路、RC線路 7.9 各種線路
8.8.1 理想線路
a 理想線路
12/18
8.8.2 減衰極小条件
b 減衰極小条件と無ひずみ線路
8.8.3 無ひずみ線路
9章 分布定数回路としての線路
7.10 複合線路
9.1 複合線路
1/8
9.2 無損失線路と反射波、
インピーダンスの測定
9.2.1 伝送式
7.11 無損失線路上での電圧, 電流
9.2.2 電圧、電流の円線図
a 線路の伝送式
1/15
9.2.3 定在波比
b 線路上の電圧, 電流の円線図
9.2.4 定在波による負荷の測定
c 定在波比
分布定数回路とは
電圧(電界)、電流(磁界)は回路
内の位置に依存
TE, TM波
v(x, y, z, t), i(x, y, z, t)
E(x, y, z, t), H(x, y, z, t)
立体回路
x, y, z ≥ l
l
x
z
y
Maxwell方程式を解かなければ
ならない (電磁気学の範疇)
分布定数回路
l
l
本章で扱う回路
電圧、電流は線路上の位置に
依存 v(z, t), i(z, t)
TEM波
集中定数回路
d
x
l
y z
これまでの章で扱ってきた回路
電圧、電流は回路部品内での
位置には依存しない v(t), i(t)
x, y, z, d, l≪l
波長l = c/f c: 光速度、f: 周波数
c = 約3×108 m/sなので、
f = 50Hzでは l = 6,000 km
f = 3GHzでは l = 10 cm
d
d≪l
l≥l
l
伝送線路
R
L
送電端
受電端
i+Di
v+Dv
E
i
v
Dx
R: 線路単位長当りの抵抗 (W/m)
L: 線路単位長当りのインダクタンス (H/m)
C: 線路単位長当りの容量 (F/m)
G: 線路単位長当りのコンダクタンス (S/m)
i+Di RDx
v+Dv
LDx
CDx
Dx
ZL
x
x=0
C
G
i
GDx v
線路の伝送方程式
伝送路微小区間の等価回路に対してキルヒホッフの法則を用いると、
Dv  RDx(i  Di)  LDx{(i  Di) / t}
Di  GDx  v  CDx(v / t )
従って、 Dv  R (i  Di )  L  (i  Di )
Dx
t
Di
v
 Gv  C
Dx
t
Dv v
i

 Ri  L
Dx 0 Dx
x
t
Di i
v
lim

 Gv  C
Dx 0 Dx
x
t
lim
伝送の
基礎方程式
v, i は x と t の関数、即ち v(x, t), i(x, t)
基礎方程式第1式の両辺をxについて微分し、第2式と以下の関係式より、
 (i t )
 (i  Di ) / t  i t
 (Di ) / t
 lim
 lim
Dx 0
Dx 0
x
Dx
Dx
電圧或いは電流のみで表現した以下の線路方程式が得られる。
 2v
v
 2v
 RGv  ( RC  GL)  LC 2
x 2
t
t
電信方程式あるいは伝送方程式
 2i
i
 2i
 RGi  ( RC  GL)  LC 2
2
電圧(電流)が波動として伝送線路を伝搬
x
t
t
していく様子を表す波動方程式の一種
伝送方程式の定常解
v(t, x), i(t, x)正弦波交流(高周波)の場合を考えると、
v(t , x)  Vx e j t
と表せる
ここで、: 角周波数
j t
i(t , x)  I x e
Vx, Ixは位置 x の関数であるが時刻 t には依存しない(つまり、変数分離できる)とする
この仮定は今後様々な問題を扱う場合によく出てくるが、特に一般性は失われない
伝送の基礎方程式に当てはめると、
dVx
 ( R  jL) I x zI x
dx
dI x
 (G  jC )V x yVx
dx
上式より、
d 2Vx
 zyVx
2
dx
d 2Ix
 zyI x
dx2
(8.8)式
ただし、R + jL=z, G + jC=y と置いた
波動方程式を得る
(電信方程式からも直接導出できる)
波動方程式の解
波動方程式の一般解
Vx  V0 e
I x  I 0 e
zy x
zy x
 V0 e 
 I 0 e 
zy x
zy x
V0 , V0 , I 0 , I 0 は積分定数
この一般解を(8.8)第2式に代入すると、
I0  V0 / z y , I0  V0 / z y
従って、
Vx  V0 e x  V0 e  x
V0  x V0  x
Ix 
e 
e
Z0
Z0
 , Z0は、伝送線路を特徴づける
ここで、
    j  yz , Z0  z y
: 伝搬定数
: 減衰定数 単位: ネーパ(Np)
: 位相定数 単位: ラジアン(rad)
ことから、線路の二次定数という
Z0: 特性インピーダンス 単位: オーム(W)
これに対して R, G, L, Cは、線路
の一次定数という
波長 l=2p/
周期 T=1/f=2p/
波の伝搬
時間依存因子ejt を含む伝送式
Vx e j t  V0 e x e j ( t   x )  V0 e  x e j ( t   x )
I xe
j t
V0  x j ( t   x ) V0  x j ( t   x )

e e

e e
Z0
Z0
ej(t±x) は、∓x方向に進む角周波数, 位相定数 の正弦波を表す
何故なら、ej(t±x) =cos(t±x)+j sin(t±x)

ここで、 ( v p )

x
vp: 位相速度
V0e x は波の振幅を表し、>0 (<0)なら、xが増大する方向に振幅が増大(減少)する
x
因みに、波の包絡線の
形状が伝わる速度を群
速度: vgという
d
vg 
d
波の伝搬
Vxe j t  V0e xe j ( t  x)  V0e xe j ( t  x)
-x方向(つまり、送電端から受電端の方向)に位相速度/で進む波(進行波)で、
>0なら、波の伝搬に伴い振幅が指数関数的に減衰していく電圧波
+x方向(つまり、受電端から送電端の方向)に位相速度/で進む波(進行波)で、
>0なら、波の伝搬に伴い振幅が指数関数的に減衰していく電圧波
送電端
受電端
x
入射波
E
反射波
Vx  Vx  Vx  (入射電圧波 )  (反射電圧波 )
I x  I x  I x  (入射電流波 )  (反射電流波 )

1
1
(Vx  Vx )  {(入射電圧波 )  (反射電圧波 )}
Z0
Z0

 x

  x
ただし、 Vx  V0 e , Vx  V0 e

x
 x
0
I I e
V0 e x
V0 e  x

  x

, I x  I0 e  
Z0
Z0
ZL
線路の縦続行列
送電端
E
受電端
l
Ix
I0
Vx
x
受電端
送電端
V0 ZL
E
A
B
C
D
x=0
受電端電圧V0および電流I0で、
任意点の電圧、電流を表すと
任意点xでの電圧Vx、電流Ixは、
双曲線関数の公式
1
cosh  x  (e x  e  x )
2
1
sinh  x  (e x  e  x ) より、
2
1
1
(V0  Z 0 I 0 )e x  (V0  Z 0 I 0 )e  x
2
2
1
1
Ix 
(V0  Z 0 I 0 )e x 
(V0  Z 0 I 0 )e  x
2Z 0
2Z 0
Vx 
Vx  V0 cosh x  Z 0 I 0 sinh  x
Ix 
V0
sinh  x  I 0 cosh x
Z0
特性インピーダンスZ0, 長さ l の線路に対するF行列
 cosh  l
 A B 

   1
 C D   Z sinh  l
 0
ZL
Z 0 sinh  l 

cosh  l 

A  D,
AD  BC  1
線路は、対称、相反(可逆)回路
出席レポート問題
伝搬定数が  , 特性インピーダンスが Z0, 長さ が l の線路に
負荷インピーダンス ZL が接続されている。線路の入力イン
ピーダンス Zin を求めよ
送電端
Zin
l
 , Z0
受電端
ZL
※ 次回の講義(12/11)前までに私のメールボックスに投函か、講義に持参のこと