ソシオセマンティクス 第10回講義

2011-06-07
ソシオセマンティクス
ソシオセマンティクス創りのスタート地点を振り返る
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ソシオセマンティクス:社会意味論
 ソシオセマンティクスは人間及び人間社会を意味とコ
ミュニケーションの視点から取り扱うSFC生まれの新
しい学問である
ソシオセマンティクス創りのスタート地点を振り返る
 私の問題意識の原点
 人間及び人間社会に関する基本認識と諸学
私の問題意識の原点
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合意形成への関心
 民主主義における社会的意思決定
議論を尽くしたのちに多数決をもって社会の意思
決定とする
このような社会的意思決定を学問としてどう扱えば
よいのか
→ → →経済学・財政学専攻であった深谷の
問題意識
合意形成と経済理論
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経済理論は多数決を扱えるが議論を扱えない
 アローらは多数決の理論的取り扱いを開拓した
 だが話し合いによる妥協や新提案による対立の解消・合
意といった事象をもたらしうる議論の役割は経済理論の
射程外である
 それは効用関数所与が経済理論の基本前提だからであ
る→ → →経済学の外へ
人間および人間社会の見直し
 世界観や価値判断をコミュニケーションを通じて再編成
する人間および人間社会のありようを見据えるには不可
欠な作業であった
人間および人間社会をどう見るか
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生物学から学ぶ
 プリミティブな生物は意味を検出するが人間はものごとをさ
まざまに意味づけする(ユクスキュル:ウンベルト)
 プリミティブであろうと人間であろうと社会関係はコミュニ
ケーションなくして成立しえない(社会生物学)
 文化的多様性はプリミティブな社会性生物には見られない
人間社会のみに見られる特徴である(霊長類研究)
認知科学・人工知能論から学ぶ
 プリミティブな生物とヒトとを分つのは知的能力である
 しかし人間の知的能力はたんなる情報処理能力ではない
 そのコミュニケーションは情報理論的扱いで捉えきれない
ヒューマンコミュニケーションの新理論構築に向けて
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多様な文化を生み出す人間の知的能力のあり方を踏まえ
たコミュニケーション理論を必要とする
 人工知能論が提起するフレーム問題に応えうること
 社会学のダブルコンティンジェンシー問題に応えうること
 言語の意味の確定論・不確定論を止揚すること
 脳科学などの知見と整合的であること

このような諸条件を充足しうるならば新しい理論は人間
および人間社会の特徴を捉えるヒューマンコミュニケー
ション論となる―――意味づけ論:ことばを人に返す試み
新理論へ向けて:創造的合意形成・文化・意味の創造
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問題意識と関わらせての諸学の展望
 自律的に振る舞う単位同士が如何にして秩序や協調関係
を形成しうるか
 そのような協調形成の中で不確定性・創造性を内包してい
るものは如何なるものか
 無から有を生じるといった神秘主義に陥らない創造性の取
り扱いは如何にすれば可能か
意味の確定論・不確定論の止揚
 科学知と解釈知の解釈学的総合