コミュニケーション ダイナミクス 担当者 政策・メディア研究科 深谷昌弘 第Ⅰ部 ヒューマンコミュニケーションと 社会現象 人間同士のコミュニケーション、つまり、ヒューマンコミュニケーショ におけるダイナミックな意味の社会的編成可能性が多様性豊かな 文化を地球上に発展させてきた。 しかし、このようなヒューマン コミニケーションを取り扱うには、情報理論的コミュニケーション論 には限界があることを指摘する。そして、新しい理論の必要性と その理論が備えるべき条件を明らかにする。 (1)人間の問題解決能力を考える:フレーム問題 (2)社会関係の成立を考える: ダブルコンティンジェンシー問題 (3)情報理論的コミュニケーション論の限界と新理論の必要性 (1) ヒトの問題解決能力を考える: フレーム問題と人間の柔軟な情況編成 情報・意味づけ・行為 (2) 社会関係の成立を考える: ダブル・コンティンジェンシー問題 (3) 情報理論的コミュニケーション論 の 限界と新理論の必要性 意味と社会現象との ダイナミックな関係を捉えるために 「人々にとっての意味」の 社会的ダイナミズムを 取り扱う 新しい言語・コミュニケーション論が 必要です 第II部 新しい言語・コミュニケーション論 人間社会の諸現象は意味の社会的編成と 深く関わっている。ここでは、意味の社会的ダ イナミズムを取り扱うためにSFCで開発されて きた言語・コミュニケーション論(意味づけ論)を 概説する。 (1)会話モデル (2)創造と迷走:意味の不確定性 (3)会話を支える意味の共有感覚: 意味づけにおける共有の秩序性 (1) 会話モデル (2) 創造と迷走:意味の不確定性 (3) 会話を支える意味の共有感覚 コトバの意味づけにおける 意味づけ文法と意味知識の類似 コトバの意味は不確定であっても デタラメではない コトバの共有によって 事態構成の同型性と意味の類似性が そこそこに確保され 会話はそこそこに成立する だが会話は意味の不確定性の二重奏で あり、その成立が保証されている わけではない お知らせ ソシオセマンティクスの創業・発展 を できりだけ分かりやすく授業内容に 組み込むため 第Ⅲ・第Ⅳ部の構成を変更します 第Ⅲ部 ソシオセマンティクスの誕生・発展 ミクロだけでなくセミ・マクロやマクロの人々を対象とする実証的な 意味世界に関する研究は、利用可能なデータが入手できないため 本格的発展が阻まれてきた。しかし、ネットワーク社会の進展で 事情は劇的に変化した。すなわち、ウェッブなどから人々の意味 表出データ・テクストが豊富に入手可能になってきたからである。 新しい理論パラダイムとこのパラダイムに立脚した自然言語解析 システムによって、われわれは、人々の意味世界を研究する ソシオセマンティクスを創業し、その有効性を実証しつつある。 (1)ネットワークと人々の意味世界の研究 (2)カルチュラル・セマンティクスの試み (3)コンテンツ分析:ネット・マーケティング・ブランド調査 (1) ネットワーク社会の進展 と 人々の意味世界の研究 ■人々の意味世界 今、研究の可能性が開けてきた データ 理論と方法 インターネットは 人々の意味表出データの 宝庫です 個人HP・BBS・チャットログ テクスト/写真・動画/リンク/ アクセス記録 これらは全て人々の意味世界を反映 する広義の意味表出のデータです インターネットには人々の意味世界を 探る膨大なデータがあります 意味表出データとは あらゆる行為はその人の心の中の意味世界を反映 しています 中でも発話や芸術表現は意味世界を表現する行為・ 意味表出行為です そのような意味表出行為の記録をここでは狭義の 意味表出データと呼びます 例えば、テクストは意味表出データの代表例です このように規定すればインターネットは 意味表出データの宝庫です 幅広い人々のデータが利用可能に 例えば、テクストについて考えて見ましょう 特定の人物、小集団、大集団、不特定多数の 市民に至るまで、幅広い人々の言説の記録、 テクストがネットワークから採集可能に なってきました このことが人々の意味世界を研究するのに きわめて重要な意味をもっています ■テクスト・データ コトバは意味連関構造を表す あらゆる人がコトバで意味表出する だからテクストは基軸データです コトバは意味連関構造を表す 例えば 動詞は助詞と協働して名詞が担う事物を 意味的に関係づけます 接続詞や指示詞は意味図式間の関係を 示します 助動詞などの言い回しでアスペクト(完了、 継続、終始などの諸相)やモダリティ(話者の態 度・様相)を表します テクストから話者の意味連関が分かります コトバはもっとも一般性がある 表出メディアです ほとんど全ての人がコトバを用いて ありとあらゆる事についてさまざまな動機で 自らの意味づけを語ったり書いたりします 幅広い人々 多彩なテーマ 多様な動機 このような一般性は絵画、音楽、映像などの 表出メディアにはないコトバの特質です だからテクストは基軸データです 人々の意味づけの意味連関構造を分析できる さまざまな意味世界研究のデータとなりうる テクストはこの二つの特質から 人々の意味世界研究の基軸データとなります もちろん必要に応じて他の表出データを 併せて使えばよい研究展開が期待できます ■人々の意味世界 の 研究 不特定多数の人々の 意味世界まで拡大する事の重要性 意味世界はコミュニケーションを介して 社会的に編成されます 多くの社会現象の理解にとって特定の人物や 小集団の意味世界の研究では不十分です (例えば、リーダーとフォロワー、マーケティング) 社会の文化・価値観などの研究では名も無い 普通の人々の意味世界が重要です (社会、組織、集団のより深い掘り下げた理解) 最大の障害:データ・アベイラビリティ 今それが解消されつつあります これまでも意味を重視した研究はありました エスノ・メソドロジー 現象学的社会学 シンボリック相互作用論 M.ウェーバー「プロテスタンティズムの倫理と資本主義経済の発展」 しかし研究は限られたもので不特定多数の 人々まで射程に納めた本格的研究は未発展に とどまってました 最大の障害だったデータ・アベイラビリティが 今ネットワーク社会の進展で解消されようと しています ■理論と方法 大量のテクスト・データを扱う 理論と方法が必要です 三つの要件 意味づけする者にとってのコトバと意味との 関係を扱う言語コミュニケーション理論 人間の解釈とコンピュータの解析の協働を 自覚的に行う解釈学的方法論 この理論・方法論に基づく分析システム スクリプト分析(後述)の経験から ①大量のテクスト・データを利用して 人々の意味世界を研究することが可能である ②意味図式が纏める基礎意味チャンクを解析の 基礎単位にすれば解釈の恣意性を回避できる ③データ収集システムを開発すれば顕現態・潜勢態 いずれについても研究可能である ④時系列・組織・集団別のより詳細な意味世界の 研究がこれから展開されるであろう ⑤多彩な意味世界研究に適用できる テクスト分析システムの開発が急務である テクスト意味空間分システム の 開発 研究会や教室におけるスクリプト分析の 経験に基づいて、私たちはウェッブ社会 調査法開発(政策COEプロジェクト)を提案 するとともに人々の意味世界に踏み込んだ 社会研究を進めるためのテクスト意味空間分析 システムの開発を本格化しました テクスト意味空間分析法の開発戦略 新しい言語コミュニケーション論の採用 コンピュータの解析と人間の解釈の協働を 支援するシステムの開発 今後の発展 スクリプト分析の拡充 コンテンツ分析の拡充 基礎意味チャンク間関係の解析 テクスト検索システムの開発 テクスト意味空間分析システム 基礎意味チャンク(解析の基本単位)の抽出 意味の揺れを縮減 基礎意味チャンク複合として文の意味空間を解析 さまざまなタイプの意味解析を支援する システムへの発展 スクリプト分析 各種タイプのコンテンツ分析(言説分析) 概観分析、イメージ評価分析、願望分析etc. 顧客の声、ブランド調査、パブリックコメントetc. 政策COEプロジェクトとして展開中 ソシオセマンティクス は 人々の意味世界 への アプローチを開きつつあります ■参考文献など 意味づけ論そのものについて ・田中茂範・深谷昌弘、『意味づけ論の展開』、紀伊国屋書店、1998 ・深谷昌弘・田中茂範、『コトバの意味づけ論』、紀伊国屋書店、1996 スクリプト分析について ・深谷研究会、『意味空間分析マニュアル: ・『世間」の概念スクリプト分析』、深谷研究会 その他 ・深谷昌弘のホームページ (http://www.sfc.keio.ac.jp/~fukaya/index.html) ウェッブ社会調査法開発:ソシオセマンティクス (政策COE)
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