ソシオセマンティクス 第10回講義

2011-06-14
ソシオセマンティクス
第2部の構成


第2部:言語・コミュニケーションの新しい理論パラダイム
人間社会の諸現象は意味の社会的編成と深く関わっている。ここで
は、意味の社会的ダイナミズムを取り扱うため、特に1部で提示され
た問題に対し、「意味づけ論」の紹介を中心に意味論・言語コミュニ
ケーション理論的な観点からの説明、解説を加える。

II-1.意味の不確定性と会話モデル

II-2.意味の共有感覚:事態構成の同型性と言語の秩序性

II-3.意味の共有感覚:意味知識の類似と概念形成過程

II-4.意味の共有感覚:スクリプトと言説の体制化
II-2.意味の共有感覚:事態構成の同型性と言語の秩序性

世界をどのように理解するかが各主体の意味づけに由来するもので
あるならば、物事の意味とはどこかに「在る」ものではなく、その場そ
の場で人それぞれに「作られる」という原理的な不確定性を伴ったも
のと言うことになる。一方で我々は日常「お互いに意味が通じる」とい
う意味の「共有感覚」を(ほとんど無自覚に)持っており、日々のコミュ
ニケーションはこの感覚を大前提として営まれている。つまり「確か
に不確定ではあるけれどもデタラメではない」という一見漠然とした
意味づけの特性がヒューマンコミュニケーションの核である。ここで
はそのような「デタラメではない」「共有感覚」を、意味づけおよびコ
ミュニケーションの最大のメディアである言語の秩序性(≒文法)に
注目して説明する。
言葉の意味を巡る言説



言葉には意味が「ある(在る)」

「どこに」言葉の意味がある?

外在説:人間の外に、言語の意味の体系や構造が存在する

内在説:人間それぞれが、内なる辞書(言葉の意味についての知識)を持っている
言葉の意味は「作られる」

「何から」言葉の意味は作られる?

記憶の引き込みあいとしての意味づけ:本講義の立場、以降でその内容を説明
「ある」「作られる」どちらが正しいと言うわけではない


(特定の問題においてどちらが適切かというもの)
「作られる」のほうが言葉の意味の持つしなやかさ、柔軟性、創造性を重視した捉え方
意味づけという営み




意味:その場その場での意味づけにより定まる
意味づけ:記憶連鎖の引き込みあいによりその情況に即した意味を
編成するプロセス
記憶連鎖の引き込みあい:関連する記憶の加工・変形・編集のプロ
セス(意味づけ内のプロセス)
コトバ:記憶連鎖の引き込み合いのトリガー(今回)であるとともに、
その引き込み合いを整序する(次回以降)
意味世界の基本的枠組み

情況編成と意味づけ



情況編成は主体各自の意味づけを通じ
て行われる
意味
意味づけと意味知識

対象をどのように意味づけるかについて
は、対象についての個々の記憶の連鎖
の集合が素材となる(意味知識)

コトバやモノゴトそのものに意味があ
るのではない
記憶連鎖の引き込みあいと意味

当該の文脈や状況に応じてモノやコト(を
指し示すコトバ)が関連しあい、それぞれ
の記憶が引き込みあい、初めてその場で
の「意味」が作られる
意味知識
(記憶連鎖集合)
記憶連鎖の引き込みあい
バラ
女はバラである
バラ
バラと女
バラ 女
女
記憶連鎖の引き込みあいの例①

「バラ」


「バラと女」


並置されたそれぞれのコトバが想起させる記憶同士が引き込みあい、何らかの関
連性を意識させ、意味の可能性が縮減されていく
「女はバラだ」


単なる記号としてのコトバ、とりとめのない記憶、多くの場合はプロトタイプ
AはBであるという形式によって「女」と「バラ」が一種の=の関係で結ばれることに
より、さらに意味づけの範囲が収縮されていく(「女」「バラ」それぞれの意味づけが
相互に干渉しあい調和するような意味づけへとつながっていく)
「○○さんはバラだ」

○○さんという人が具体的にどういう人なのかという知識や記憶によって、バラの
記憶のどの部分が引き立てたられるかは変わるだろうか(○○さんがバラのプロト
タイプのイメージにふさわしい人であった場合は?そうでなければ?)
記憶連鎖の引き込みあいの例②

「(母の日に)カーネーション贈ったほうがいいかな」
「最近はバラを贈ったりもするらしいよ」


状況や文脈との関連、「贈る」という動作の対象としての「バラ」、この場合の
「バラ」の意味は?
「庭に真っ赤なバラが咲いた」
「胸に真っ赤なバラが咲いた」

「バラ」自体と関連付けられる、あるいは「(真っ赤な)バラが咲く」という情景
の起こる場としての「庭」と「胸」

状況とのつじつま合わせの中で生まれる比喩や暗喩としての「バラ」の意味
は?
記憶連鎖の引き込みあいの例③

「カリブーのステーキってなかなかいけるんだよ」
「カリブーって?」
「いや、北極圏に住んでて、鹿に似た動物なんだけど、それをステー
キにするとね、美味いんだよ」
「へえ、そりゃいい感じだね」

「カリブー」という動物を知らなくても、相手の例示を通じて「鹿」や各種の「ス
テーキ」についての記憶・知識・経験を動員し、まとめあげることで見たことも
食べたこともないはずの「カリブーのステーキ」を「多分こんな感じのもの」とし
て意味づけてしまう

もちろん彼が想像した(意味づけした)「カリブーのステーキ」が実際のものと
同じであるかどうかは別問題

(「学習」で使うこと)
意味の不確定性①

意味が「ある」のではなく、記憶の編集によってその場その場で「作られる」とした
ならば、意味については以下の通りの不確定性が想定される

情況依存性


履歴変容性


経験依存性、意味の素材である意味知識(記憶)は生きる過程において常に
変化しうる
主体間多様性


多義性、どのような情況かによって意味づけられる意味は変わる
記憶依存性、人によって意味知識(記憶)は様々に異なる
不可知性

暗黙知や潜在記憶といった我々が自覚できないような記憶も意味づけに関わ
りうる
意味の不確定性②


意味の不確定性からの結論として、自分と他者の間でコトバは共有できても
意味は共有されえない
特に情況依存性と主体間多様性について、それでは「他者にとっての意味」
をどうして理解することができるのか(他者情況の忖度)、意味に齟齬が生じ
た場合どうやってそれを調整できるのか、などの問題を発生させる
→相互行為の成立問題
ダブルコンティンジェンシー再燃

意味づけしあう者同士の相互行為

コトバは共有されても意味は共有されない



他者の記憶連鎖を使用できない以上、自らの情況編成において他者
情況を再現することはできないし、したがって他者のコトバの意味も再
現できない
この命題を原理的に受け入れなければならないとすれば、会話の成
立は保証されてないことになるダブル・コンティンジェンシー問題が再
燃する
では、会話の成立に不可欠な、他者情況や他者のコトバの意味
を理解することとはどういうことなのだろうか?
参考:コード表モデルの限界
decoding
コトバ
コード表
コード表
encoding


decoding
コトバ
encoding
共有のコード表(ラング)により意味(意味づけの内容)が確定しているという
前提のモデル
コトバや行動の意味づけは確定しているというモデルでは、意味づけのやり
取りであるヒューマンコミュニケーションのダイナミズムには対応しきれない
相互行為の成立問題
コトバ
Aの情況編成
Bの情況編成
記憶連鎖の引き込み合い
記憶連鎖の引き込み合い
理解の相(コトバからの意味づけ)
理解の相(コトバからの意味づけ)
応答の相(コトバへの意味づけ)
応答の相(コトバへの意味づけ)
コトバ

会話はなぜ成立するのか

会話をはじめとした日常的な相互行為は、「お互いに意味が通じる」という意味の共有感覚
を暗黙の前提にしている

原理的に不確定なはずの意味づけのやり取りがなぜ相互に了解可能な形に収まるのか?

なぜ「相手の言っている意味がわかる」という状態がそこそこに維持されるのか?
意味づけを支える共通の基盤①


会話の成立に不可欠な「意味の共有感覚」
 あくまで「感覚」であることに注意
 確かに意味づけは不確定ではあるけれど、デタラメではない
 そのデタラメでないという部分(意味づけの同型性・類似性)を保証す
るものが、意味づけにおける共有の秩序性
意味の共有感覚を支える共有の秩序性
 こちらはほぼ「共有」と言って差し支えない
 意味づけの仕方に関する秩序性
 意味知識の形成に関する秩序性
意味づけを支える共通の基盤②


意味づけの仕方に関する秩序性(今週)
 コトバの持つ機能性(文法的知識)
 名詞:意識の対象としてモノ(thing)化する
 動詞:コト(event)の図式に適応するような意味づけを要請する
 助詞:先行する名詞の取り扱い方を指示する
意味知識の形成に関する秩序性(来週以降)
 概念形成過程の共通
 差異化:「Aと非A」の関係
 一般化:「A:a, b, c」の関係
 典型化:差異化と一般化を通じての「Aらしさ」の獲得
意味づけのルールとしての文法


どのように記憶連鎖を配置し、関連付け、引き込みあいを起こすかを整序するのが助
詞や動詞といった品詞の持つ働き
「女」 「バラ」


2つの記号を、ただ空間上に並置しているだけ(関連性の示唆程度)
「女はバラである」

「である」=「にて、在る」

「女」という記号(から想起される記憶連鎖)を、「バラ」の領域へと重ね合わせるイメージ(類似性、共
通性へと意味づけを促す)
女
女
バラ
女
バラ
女
バラ
コトバ からの意味づけ
情況とのつじつまあわせ
他者情況の忖度
コトバ(の配列)
字義的な解釈
コトバの機能に沿っての
意味知識の関連付け
意味知識(意味づけに関連
する記憶の連鎖)の想起
[ コトバは記憶連鎖の引き込みあいのトリガー ]
意味づけ(記憶連鎖の引き込みあい)のプロセス
(その場での)
意味
コトバからの意味づけ
情況とのつじつまあわせ
「中野は人間(動物の犬なわけがない)
「教室という場」「授業の内容」「中野と深谷の関係」…
その他
「私は犬です」
「犬」という領域への「私」の位置づけ
「私」と「犬」の=の関係、類似性・共通性の示唆
「は」「です」などのコトバ
による「私」と「犬」の関
連付け
「私」で指示される対象についての意味知識
「犬」で指示される対象についての意味知識
意味づけ(記憶連鎖の引き込みあい)のプロセス
?
「中野が犬なわけはないが、ある
意味で犬である」
「犬」と「中野」、その他について
の記憶連鎖の引き込みあいの再
度の試行
意味づけの仕方に関する秩序性

少なくとも字義的な解釈の部分に関して誰でも(日本語話者であれば)、
「私は犬だ」が構成する「私=犬」の字義的な関係を理解できる


コトバがその意味知識(個別に異なる)とは別に品詞として持つ機能
 (名詞チャンクの編成機能)
 動詞の図式構成機能
 助詞の操作子機能
これらの知識が日本語話者としてほぼ共有されているといってもいいほ
ど共通しているからこそ、コトバへの(からの)事態構成にある程度の同
型性が保たれる
名詞の対象指示機能①


意識の対象としてモノ(thing)化する
モノ的な要素は名詞によって取りまとめられることによって、意味づけの
意識の志向の対象となる



ぼく、幼稚園、いく
山に(を)のぼる
太郎が次郎を花子に紹介する
名詞の対象指示機能②

指示行為と「名づけ」の拡張


動詞や形容詞などの意味内容を意味づけの対象にするにも名詞化が必要

いき(いくこと)、のぼり(のぼること)

暑さ(暑いこと)、寒さ(寒いこと)、静かさ(静かなこと)
名詞としてとりあげ、モノ化することにより、意識の志向は単に「そこにある」
事物対象だけでなく、抽象的な観念対象にまで及ぶ

「あの机」「このPC」「君」「私」「あれ」「これ」

「こういうことってつまりさ、~だよね」

「(友達が彼女と別れたという話を聞いて)それはお前が悪い」

「正義とは~」「自由とは~」「近年のテロリズムとは~」
動詞の図式構成機能①

コト(event)の図式に適応するような意味づけを要請する

行為や状態、出来事の枠組み・図式

ぼく、幼稚園、いく

山に(を)のぼる

太郎が次郎を花子に紹介する

「いく(行く)」:視点から遠ざかる移動

「のぼる」:垂直線の上方への移動

「紹介する」:N1、N2、N3の紹介関係への関係付け
動詞の図式構成機能②

(1)人・動物・乗り物が、移動する。話し手に近づく場合は「来る」という。

(ア)人・動物・乗り物が、話し手のいる場所から遠くへ移動する。


(イ)人・動物・乗り物が、目的の地点に向かって進む。また至りつく。


(ア)手紙・通知・電話などがある地点に到達する。


「風が~かないように戸をしめる」
(4)学校の生徒や軍隊の兵士などになる。《行》

「うちの次男は幼稚園に~っています」「父は戦時中兵隊に~っていました」
(5)(「嫁に行く」「養子に行く」などの形で)他の家へ移る。《行》


「該当者には役所から通知が~くはずだ」
(イ)風・匂いなどがある所に到達する。


「映画を見に行くところなんだが、君も一緒に~かないか」
(3)人・動物以外のものが、運ばれて移動する。話し手に近づく場合は「来る」という。


「道く人々の服装もカラフルだ」「野~き山~き我来れど/万葉 4344」
(2)動作者が話し手とともに移動する。話し手を中心に考えたときは「来る」で表現することも可能。


「京都を見たあと奈良へ~く」「プールに泳ぎに~く」「何度も神戸へ~ったことがある」「大阪から九州へ~く列車」
(ウ)ある地点を通過する。往来する。


「これから銀行へ~くところだ」「父は今、タバコを買いに~っています」「まっすぐ~けば駅へ出ます」
「大阪へ嫁に~った娘」
(6)去って帰らない。

(ア)年月が経過する。


「~く春を惜しむ」「~く年来る年」
(イ)水が流れ去る。

「~く河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず/方丈記」
「行く」の辞書的な意味(一部)
『大辞林第二版』(三省堂)から
動詞の図式構成機能③
例:「行く」という動詞
(視点から遠ざかる移動)
C
(移動の主体)
B
(~へ)
A
(~から)
移動の経路(距離)
動詞の図式構成機能④
例:「売る」という動詞
「売る」主体(売り手)
「売る」という行為の宛先(買い手)
「売る」という行為の対象
C
A
B
(対価の支払い)
(「買う」という行為の宛先)
(「買う」主体)
助詞の操作子機能①

先行する名詞の取り扱い方を指示する

例えば動詞が示す図式においての名詞(句)の取り扱い方を示す

ぼく、幼稚園、いく

山に(を)のぼる

太郎が次郎を花子に紹介する

特に助詞は文脈には依存しない固有の機能を持つ

(どんな情況や文脈であれ、助詞の意味が変わることはまずない)

意味内容の決定に先行し、意味づけを整序するオペレーター(操作子)
助詞の操作子機能②
例:「僕は友人にテレビを1万円で売った」
「売る」主体(売り手)
「売る」という行為の宛先(買い手)
「売る」という行為の対象
僕
テレビ
友人
(1万円)
(「買う」という行為の宛先)
(「買う」主体)
助詞の操作子機能③

(1)特に一つの物事をとりあげて提示する。


(2)題目を提示して、叙述の範囲をきめる。


(ア)〔格助詞・副詞などに付いて〕意味や語勢を強める。


「たいてい~、そのまま帰る」「君と~もう会わない」
(イ)〔動詞・形容詞の連用形、および助詞「て・で」に付いて〕一続きの叙述の一部分を強調する。

「絶対に行き~しない」「なるほど美しく~ある」「まだ書いて~いない」「真実で~ない」
(5)〔「…(で)は…(だ)が」の形で〕譲歩の気持ちを表す。活用語の連用形に付くこともある。


「行き~よいよい、帰り~こわい」「親に~孝行、友人に~信義」
(4)叙述を強める。


「象~鼻が長い」「ぼく~学生だ」「今日~よい天気だ」
(3)二つ以上の判断を対照的に示す。


「お酒~ぼくが買う」「食事~もうすんだ」
「雨も、降り~降ったが、ほんのわずかだ」「ごめんどうで~ございますが」
(6)動作・作用の行われる条件・事態を表す。

「不正があって~ならない」「おこられて~大変だ」「会社として~万全の備えをするつもりです」
「は」の辞書的な意味(一部)
『大辞林第二版』(三省堂)から
助詞の操作子機能④

「が」と「は」

ガ:Nを焦点に据えよ(注視せよ)

ハ:Nを意味視野の焦点に据え(注視し)、かつその周辺にも意味視
野を開いておく
昔々 あるところに おじいさんとおばあさんがいました
ある日 おじいさんは山へ柴刈りに おばあさんは川へ洗濯に行きました
おばあさんが川で洗濯をしていると 川上から大きな桃が・・・
助詞の操作子機能⑤

(1)動作・作用の対象を表す。


(2)使役表現において動作の主体を表す。


「この一年~無事に生きてきた」「今~盛りに咲く」「朝日照る佐田の岡辺に鳴く鳥の夜泣き反らふこの年
ころ~/万葉 192」
(5)動作の出発点・分離点を表す。


「いつもの道~通る」「大空~飛ぶ」「新治筑波~過ぎて幾夜か寝つる/古事記(中)」
(4)動作・作用の行われる時間・期間を表す。


「子供~泣かせないようにして下さい」「今年こそ美しい花~咲かせよう」
(3)移動性の動作の経過する場所を表す。


「本~読む」「講演~終わる」「太刀が緒もいまだ解かずて襲(おすひ)~もいまだ解かねば/古事記(上)」
「毎朝九時に家~出ます」「バス~降りてから五分ほど歩く」「故郷~離れる」「たらちねの母~別れてまこ
と我旅の仮廬(かりほ)に安く寝むかも/万葉 4348」
(6)希望・好悪などの心情の向けられる対象を表す。現代語では「が」も用いられる。

「水~飲みたい」「君~好きな人はずいぶんいるよ」「身~惜しとも思ひたらず/徒然 9」
「を」の辞書的な意味(一部)
『大辞林第二版』(三省堂)から
助詞の操作子機能⑥

「を」と「に」

ヲ:Nをコトが示す動作が直接働きかける対象として取り扱え

二:Nをコトが示す図式に差し向けよ(ハ、ガ、ヲなどよりも優先度が
低く、特にヲのような動作の作用性を強く要求しない)
山をのぼる
山にのぼる
肩をさわる
肩にさわる
肩をなでる X肩になでる
肩にふれる ×肩を触れる
黒板に手をふれる
コトバの共有:コトバの機能がもたらす意味づけの同型性

コトバの機能


動詞(述語)の機能と名詞、助詞などの機能との協働で意味は事態としてまと
められ構成される
コトバの共有

話し手と聞き手はコトバを共有することによって同じようにコトバからの記憶
連鎖の引き込みあいを整徐させ、意味づけに同型性を確保する

個々のコトバが担う意味のゆらぎも、引き込み合いが互いに制約され、大幅
に縮減される(単なる連想ゲームにはならない)
なぞかけの構造

「Aと掛けて、Bと解く。その心はC。」

まずAを題目として登場させ(「掛けて」)

A=B、つまり(ある意味において)AはBであると説明する(「解く」)

その理由(「心」)としてCを提示する。



基本的には「AはBである(A=B)」の形式の変形であるが、「掛ける」「解く」といっ
た動作によってAとBの関係が単なるイコールではないことが暗示される。
通常AとBには一見かけ離れた、つまり記憶連鎖同士がすんなりと引き込みあい
を起こしにくい言葉が投入される。
CはAとBとの記憶連鎖の引き込みあいを補助するような、AとBについての記憶
連鎖にある普段優先的に想起されるようなものではない共通項を示す言葉が投
入される。
ソシオセマンティクス 第2回課題レポート


課題内容

次の3枚のスライドにおける①~⑤について解釈を試み、自分自身の記憶連鎖の引き込みあいを体感し、最後のなぞ
かけにも応えてください。その後、この一連の作業結果を講義の内容、参考文献等を参照しつつ考察し、まとめてくださ
い。

Word等を利用し、A4用紙の設定で1~2枚程度でレポートを作成してください。文字数やその他の様式は制限しません。
提出形式・期日

前回と同様SFC-SFS上からのオンラインでの提出と、紙媒体に印刷したものの提出の両方を要求します。

提出状況の確認をSFSで行い(紛失などの人的ミスを避けるため)、内容の評価を印刷物にて行います。ゆえに、どうし
ても講義に出席できないやむをえない事情などがない限り、原則として両方の提出がなければ評価を受けることができ
ません。

オンラインでの提出


期日:6月28日火曜日の午前10時。

形式:作成した文書ファイルをSFSの課題ページから提出してください。
印刷物の提出

6月28日火曜日の講義終了後に紙媒体に印刷したものを提出してください。
課題スライド(①~②)
たんなる抽象的な記号の並置
①
A
B
記憶連鎖を想起させやすいコトバの並置
②
女
ネコ
課題スライド(③)
記憶連鎖をもつコトバの「AはBである」形式での並置
③
女は ネコである
②のような自由な連想ではなく比喩としての理解が促されるはず。その際自分が抱い
ているネコのプロトタイプ、典型的なイメージが働くのが分かるでしょう
課題スライド(④~⑤)
④
⑤
キョウコは ネコである
クミは ネコである
「キョウコ」や「クミ」によってネコの意味も変わらなかったでしょうか?また、キョウコ
やクミに新たな面が浮上しなかったでしょうか?キョウコやクミを猫の名前とする解
釈もありますが、安直なのでここでは考慮の外に置くことにします。
課題スライド(なぞかけ)
「Aとかけて、Bととく、そのこころはC」というなぞかけの形式において、「自由」という言葉をお題とします。
つまり、
「自由とかけて、(
B
)ととく。そのこころは(
C
)」
のBとCに言葉を埋め、なぞかけを解いてください。
またその際、まずBに入れる言葉を先に考えてからCを考える方式(B先取方式)と
先にCに入れる言葉を決めてからBを考える方式(C先取方式)の二種類の方式による回答を
それぞれ2つ以上回答してください(計4回以上の回答)。
*B先取方式ではまず「自由」と併置される何かの言葉を考え、両者の共通項をCとして捻り出す方式です。
*それに対し、C先取方式は「自由」に関連する項目であるCをまず決め、同様の項目をもつBを考える方式です。
さらに余力があれば自分で自由にお題を設定して試みたものも記してください。