中世資料にもとづく未知の東海地震 発生時期の検討 小山研究室 3041-6016 塩田圭佑 研究目的 古代から近世初期にかけての歴史記録 欠落ははなはだしい。「データ欠落期間」 の詳細は、明らかになっていないため地 震史料の不在が必ずしも現実の大地震 の不在を意味しない。しかしこれまで地震 がなかったとされてきた期間の中に巨大 地震が隠れているのではないか。 中世の古記録を分析することで未知の地 震があったという可能性 研究について 飛鳥時代末から平安時代前期にかけて、朝 廷に編纂された編年体歴史書である「六国 史」以降の古代~中世にかけては公的機関 による全国規模の系統的な歴史記録が残っ ていない。 →この間に巨大な地震があったのではないか という疑問。 ●東海地震の発生史 684年 白鳳の南海・東海地震 ~ 887年 仁和の南海・東海地震 1498年 明応東海地震 1096年 永長東海地震 1605年 慶長の東海・南海地震 1099年 康和南海地震 1707年 宝永地震 1854年 安政の東海・南海地震 ~ この空白の12~13世紀の間に巨大地震が あったのではないか? 歴史時代の地震史を正確に復元するためには、古記 録中に残る天変地異記述を収集・解析する作業が欠 かせない。これまでの文献史料にもとづく研究の多く は、原史料から抜き出された記録をもとにして行われ、 その記録件数や内容から各時代の自然災害の特徴 や盛衰が検討されてきた。しかし厳密には、史料自体 の欠落期間や、自然現象に対する史料の記録特性が 把握されていなければ、その時代の自然災害発生状 況を正確に知ることは困難である。 (小山,1999) ↓ 13世紀を対象に検討する 研究方法 史料地震学研究をする上で重要な史料(特に情報量 の多いもの)を見つけ出す。 情報量、時代変遷を調べ、自然災害記録媒体として の性能を知る必要がある。 史料の信頼性を推し量るポイント ・原史料か二次史料か ・いつ書かれたか(地震からどれくらい後か) ・誰が書いたか(体験者、直接の伝聞、噂、別の史料 から) ・他の信頼すべき史料と矛盾がないか ・記述が地質学的・考古学的証拠などと矛盾がないか (「はじめての史料地震・火山学」 小山・早川) 参考史料 記録年表中世を参考にした、とくに情報量の多い 以下の史料(後12世紀~13世紀) ・鶴岡社務記録 ・明月記 ・中臣祐明記 ・三長記 ・猪隅関白記 ・業資王記 ・玉蘂 ・仁和寺次日記 ・岡屋関白記 ・民経記 ・吉続記 ・平戸記 ・勘仲記 ・中臣祐定記 ・建治三年記 ・葉黄記 ・実躬卿記 ・経俊卿記 ・中臣祐春記 ・太神宮司神事供奉記 ・深心院関白記 ・大乗院具注暦日記 ・外記日記 ・歴代天皇御記 ・中臣祐賢記 今回研究する史料の一部の刊行本「続史料大成」 ↑鶴岡社務記録 これらの史料から「所在チェック」と「情報量調べ」を進 めていく。 情報量調べとは主に一年のページ数カウントとおよそ の文字数を数えて情報量が多いかどうかを調べる。 具体的にどの年代のどこが歴史記録自体の欠落記に あたるか、あるいは記録自体は現存するが地震記録 がない日かを区別した基礎カレンダーを作成する。 (「日本の史料地震学研究の問題点と展望」 小山) 問題点と今後の課題 これらの研究作業を進めるにあたって史料の 信頼性と活用の困難さが問題となってくる。 信頼性に関しては様々な史料から記述が地 質学的・考古学的証拠などと矛盾がないか吟 味する必要がある。 今後は古記録を調べる作業を継続して13世 紀に果たして未知の東海大地震が発生した のかという事を検討していきたい。 参考文献 日本の古代・中世の地震史料の校訂とデータ ベース化 (古代・中世地震史料データ ベース化研究グループ) 自然現象記録媒体としての中世史料の分析 (総合科学2年瀬戸)
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