2.地震

2.1 2津波災害
2.1.2.1津波被害
2.1.2.1.1明治三陸地震津波
• 1896年(明治29年)地震発生M8.5,海
溝内側,プレート間浅発逆断層。三陸
沖約200km。第1波30分後。震害なし。
• 死者は北海道〜宮城県の海岸で計
21,959人,特に岩手県で18,158人。波
高は,綾里(りょうり)村白浜38.2m。
ハワイでも2.4〜9.1mの津波。世界に報
道され国際用語tsunamiが生まれた。
2.1.2.1.2チリ地震津波
• 1960年(昭和35年)地震M8.5(
Mm9.5)発生,チリ海溝の内側,プ
レート間浅発逆断層。チリの海岸で
波高20m,死者5700人。ハワイ島で
10mの津波,死者61人。日本で死者
・行方不明者142人。
• 日本への襲来は22時間半後早朝。波
高は三陸沿岸の湾奥などで5mを超
える。広域に被害。
チリ地震津波時の女川津波襲来4:45amの様子と
女川港の潮位変動(潮位計破損まで)
2.1.2.1.2.2教訓
• 地球の裏側での地震による津波被害は,
津波前兆の沈黙性を知らしめた
• 日本でもこの時代にあっても津波警報は
発令されなかったのである
• これを契機にして1966年に太平洋津波警
報組織国際調整グループ(ICG/ITSU)が
UNESCOの政府間海洋委員会に設置。
アメリカのPTWC
(太平洋津波警報センター)
• PTWC(太平洋津波警報センター)は
1946年のアリューシャン列島東部ウ
ニマック島付近の地震によるハワイ
の津波禍(163名)を契機として
1948年にハワイに設立されていた。
2.1.2.1.3昭和58年日本海中部地震
• 1983年(昭和58年)正午地震発生。
秋田・青森県沖100km。M7.7。秋田,
深浦,むつで震度5(周期の関係で揺
れによる被害は少)
• 死者104人のうち津波の犠牲100人。
段波(後続の津波が前方の津波に積
み上がる現象)観察
• 早いところでは津波警報発令以前に
津波が到達。
2.1.2.1.3.2 教訓
• 日本海では津波の経験が少ないという
が1964年の新潟地震でも体験されてい
た
• とにかく,海岸付近にいて地震が感じ
られたら,警報などがなくてもとにか
く,高台に逃げること。
2.1.2.1.4スマトラ沖地震
• 世界最大の犠牲者を出した地震は,唐
山地震(1976年,M7.6,深さ23km)で
犠牲者242,769人
• 世界最大の犠牲者を出した津波は,イ
ンドネシアクラカタウ島の水蒸気爆発
(1883年)で36,000人 津波高30m
• スマトラ沖地震での犠牲者は30万人を
超え,観測史上,最悪。
バンダアチェそばの集落の全滅 2005.1.4
2.1.2.1.4.1.1概要
• 2004年(平成16年)12月26日午前7時58分(
日本時間26日午前9時58分)地震発生(プレ
ート間浅発逆断層)
• 地震動はゆっくりと約200秒続く
• M9.0(M9.4説もあり) 深さ30km
• プレート境界型で,波源域はスンダ海溝の東
側の長さ1000km,幅200〜250kmで,ずれ幅は
30mに達した
• なお,この本震の約100秒前には,M8クラス
の地震。
図2.9スマトラ沖地震による
津波伝播図
図2.10日本に到達したスマト
ラ沖地震の地震/地震波形
2.1.2.1.4.2.2国際支援
• 日本の陸海空3自衛隊もこれまでにない
1千6百人が投入 「結果的に海外任務
の本来任務化に弾みをつける」(日本
の外務省首脳),「自衛隊の今後をに
らんだプレゼンテーションの場」(政
府関係者),「今回の対応で,米国は
日本がどのような役割を果たすのかみ
ている」(防衛庁幹部)点もある。
個人または企業や国の支援内容
• 個人:MS社ビル・ゲイツ会長夫妻の財
団,予防接種支援費として770億円,別
途ビル・ゲイツ 個 人 3億1200万円,F1レ
ーサー シ ュ ー マ ッ ハ 10億4000万円,ニ
ューヨークヤンキーズの松井秀樹5000
万円。
• 海外企業:ファイザー12億円とその2倍
以上相当の医薬品,コカコーラ12億円
と飲料水や車両 日本の企業:スズキ
4000万円,トヨタ3000万円など。
2.1.2.2津波防災システム
構築の機運
• インド洋沿岸地域の津波早期警戒シス
テムの構築を含む国連防災世界会議が
阪神大震災10年に合わせて神戸市で開
催
• 緊急対応として,既存の太平洋津波早
期警戒システムを利用。
2.1.2.2.1. スマトラ沖地震
3カ月後の試練
• 12月26日の地震のほぼ3ヶ月後,スマトラ
沖大地震M9.0の震源から近い南東でM8.7
(USGS,気象庁M8.5)の地震
• 震源地に近いニアス島(人口50万人)で
最も大きな被害 震源の深さは30km
• 太平洋津波警報センター(PTWC:ホノル
ル)によると,スリランカやモルディブ
など20cmほどで警報は数時間後に解除。
2.1.2.2.1.2教訓
• 気象庁 インド洋周辺11カ国に緊急地
震・津波情報送信 地震発生からS波
が日本に到達するのに15分前後 発生
から26分後の1時36分(日本時間)に
地震情報と津波情報
• 1時50分,つまり地震発生の40分後に
は沿岸6カ国にファクシミリ スマト
ラ大地震時には津波被害が出てからの
会見だった この対応は画期的。
図2.20
タイの素早い対応:
プーケット島の警報
タワー 2005.9.5西
海岸パトンビーチ
インド政府のインド
洋津波ブイ
2.1.3予知と防災
2.1.3.1東海,南海,東南海地震
2.1.3.1.1 沈み込み帯のプレート境界型
巨大地震の周期性
• 四国沖から駿河湾までの地域について
は,白鳳地震(684年)から現在までの
地震と津波履歴が残る
• 江戸時代では90〜150年間隔で,震源域
は3分され,連動性がある 東海地震
領域の空白 →表2.1
図2.12 南海地震,東南海地震,東海地震
の震源域と今後30年以内の地震発生確率
プレート境界
2.1.3.1.2 予測
2.1.3.1.2.1 東海地震
• 東海地震説 石橋克彦によって提唱
• 大規模地震対策特別措置法(大震法)
1978年 by 静岡県知事
• 海溝型地震だが,静岡県では陸域にも
震源域がかかる
• 近いところでは津波到達時間は地震後,
10分以内。
東海地震および関東地震予知
のための高密度観測網
東海地震発生シナリオ
水準測量から
2004±0.8年
地震の静穏化現
象では2001年か
ら7年後
GPS観測からは
2002年中頃
予知担当者:予
知は不可能かも
しれないという気
もする。
2.1.3.1.2.2 東南海地震と南海地震
• 両地震発生の確率の発表
• さらに3地震複合型の被害想定
• 津波は東海地域を除けば,5分程度の余
裕→犠牲者を12,700人から2000人に
• なお, 1995年兵庫県南部地震,2005年
3月の福岡県西方沖地震に対応する活断
層は,前もって見つかっていなかった。
南海トラフで過
去に起きた大地
震震源域の
時空間分布
南海トラフ全域を考慮した多様な震源パター
ン
2.1.3.1.3 長周期地震動
• 地震のマグニチュードが大きいほど
– 長周期(2秒以上)
– 長周期の地震波は減衰しにくい
• 比較的軟弱な地盤では進行速度は低下し,
震幅は増大する
– 関東平野では周期5〜10秒(50階建)
– 大阪平野・濃尾平野では2〜5秒(30階
建),の揺れが増幅されやすい。
2.1.3.2国の地震動と被害予測
• 今後30年以内に深度6弱以上の揺れ
に見舞われる確率の分布図(図2.15)
• 内陸地震の平均活動間隔は1000年以上
• 海溝型地震は100年前後
• 「表層地盤のゆれやすさ全国マップ」
1kmで使用には耐え得ない。
2012年から30年間に震度6弱以上の揺れに見舞
われる確率の分布
上段左図:すべての地震
上段右図:CategoryI 海
溝型地震のうち震源断
層が特定できるもの
下段左図:CategoryII 海
溝型 特定しにくい
下段右図:CategoryIII
活断層など陸域と海域
の浅い地震 再来周期
数千年オーダー
確率論的地震動予測地図の凡例
地震の繰り返し発生モデル
南海地震を例にした,
時間予測モデルの発生確率密度,
30年以内に発生する確率,
ポアソン過程の地震発生確率
大阪府の被害想定結果(上町断層帯地震
A)
昭和南海地震の
相対速度応答スペクトル(周期3秒と5
秒)と最大速度と
継続時間の分布
新旧地下構造モデルとVs=0.6km/s堆積層の上面深度
表層地盤のゆれやすさ全国マップ
首都直下型地震:東京湾北部地震M7.3
首都直下型地震:東京湾北部地震M7.3
大阪市沿岸部の津波浸水想定図
大阪駅周辺の津波
浸水想定詳細図
2.1.3.3 個人の防災対策
• 避難: 家庭内で避難場所,連絡法を
決める
• 水と食糧(日本): 飲料3リットル/日
×3日分
• 兵庫県民: 2005年の調査で2割ほどが
地震の対策を何もしていない
• 情報と一時資金: 現金,健康保険証,
単三乾電池使用のラジオ,携帯電話電
池式充電器。
個人の防災対策2
• ガス,電気,近所とのつながり: 家
族数に応じた懐中電灯,ろうそく,
ホットプレート,電子レンジ。給水車,
わき水情報,協力することで安心感。
個人の防災対策3 津波
• 警報の前に避難,実際に高台への避難
ルートを移動する,鉄筋建物2階以上,
津波シェルター(伊東市,大紀町錦地
区) 次ページ錦地区。
錦
タ
ワ
ー
個人の防災対策4 緊急地震速
報システム
• P波7km/s, S波4kmの速度差を利用
• 2004年2月から導入 原発や高速交通機
関は数秒に意味
• 2005年夏宮城県沖地震 図2.17(次ペー
ジ)。
図2.17
2005年夏
宮城県沖
地震 緊
急地震速
報
B-Δ法
東北地方太平洋沖地震
P波初動部の振幅増加の比較
おわり