自然現象記録媒体としての 中世史料の分析

自然現象記録媒体としての
中世史料の分析
小山研究室
2年 瀬戸 遥
研究目的
歴史時代の地震史を正確に復元するためには、
古記録中に残る天変地異記述を収集・解析する
作業が欠かせない。これまでの文献史料にもと
づく研究の多くは、原史料から抜き出された記録
をもとにして行われ、その記録件数や内容から各
時代の自然災害の特徴や盛衰が検討されてきた。
→記録の乏しい時代の史料の記録媒体としての
特性を明らかにし、分析を行うことで歴史時代の
地震活動史を復元する。
13世紀を対象とすることの意義
●東海地震の発生史
684年
白鳳の南海・東海地震
887年
仁和の南海・東海地震
1498年
明応東海地震
1096年
永長東海地震
1605年
慶長の東海・南海地震
1099年
康和南海地震
1707年
宝永地震
1854年
安政の東海・南海地震
~
~
12世紀~13世紀の間が空白
→この間に巨大地震があったのでは?
●史料の存在
飛鳥時代末から平安時代前期にかけて、朝廷に
よって編纂された6つの連続する編年体歴史書
である「六国史」(~887年)以降の古代~中世
にかけては、公的機関による全国規模の系統的
な歴史記録は残っていない。
→中世の古記録を分析することで未知の地震の
歴史が明らかになる可能性がある。
分析の方法
古記録は完全な記録媒体ではない。
→情報量、時代変遷を調べ、自然災害記録媒体としての性
能を知る必要がある。
●史料の信頼性を推し量るポイント
・原史料か二次史料か
・いつか書かれたか(地震からどれくらい後か)
・誰が書いたか(体験者、直接の伝聞、噂、別の史料から)
・他の信頼すべき史料と矛盾がないか
・記述が地質学的・考古学的証拠などと矛盾がないか
(「はじめての史料地震・火山学」 小山・早川)
十分な検討をほどこし、事例に即した選択基準を定める。
→具体的にどの地域のどのが歴史記録自体の欠落記に
あたるか、あるいは記録自体は現存するが地震記録が
ない日かを区別した基礎カレンダーを作成する。
(「日本の史料地震学研究の問題点と展望」 小山)
研究対象とする史料
記録年表中世を参考にした、とくに情報量の多い
以下の史料。(後12世紀~13世紀)
・鶴岡社務記録
・明月記
・中臣祐明記
・三長記
・猪隅関白記
・業資王記
・玉蘂
・仁和寺次日記
・岡屋関白記
・民経記
・吉続記
・平戸記
・勘仲記
・中臣祐定記
・建治三年記
・葉黄記
・実躬卿記
・経俊卿記
・中臣祐春記
・太神宮司神事供奉記
・深心院関白記
・大乗院具注暦日記
・外記日記
・歴代天皇御記
・中臣祐賢記
(信頼性については確認済み)
これまでに行った作業
史料の所在調べ
図書館にないもの、途中巻がないものあり。
情報量調べ
(各年の月別ページ数、年別総字数、
総年数、史料全体の総字数)
作業結果
例) 明月記→1P=1092文字
二段構成
1192年・・・3月7.5P 4月8P 5月1P 計16.5P
1194年・・・12月0.5P 計0.5P
1195年・・・12月0.5P 計0.5P
1196年・・・2月0.1P 3月0.5P 4月8.5P
5月5.5P・・・
作業結果
総字数
(明月記、民経記、猪隈関白記、実躬卿記、平戸記、三長記、葉黄記)
2000000
1800000
1600000
1400000
1200000
1000000
800000
600000
400000
200000
0
0
10
20
総年数
30
40
分かったこと
史料によって文章形式や情報量に大きく
違いがある。
途中欠落している年が多い。
広い年代にわたって大まかに記述してあ
るものもあれば、せまい時期のみについ
て詳しく記述してあるものなどさまざま。
今後の作業
未確認の史料、欠落史料を探す。
残りの集計を進める。
史料を選定する。
基礎カレンダーの作成