「東海地震」と濃尾地震の関係について 東京大学地震研究所 茂木

茂木清夫 先生のことは、ホームページの 「東海地震は単独で発生するのか」 の中で何度も登場して
いますが、茂木先生が東京大学地震研究所の教授をしておられた時期(1986年~1989年)の論文
『「東海地震」と濃尾地震の関係について』が見つかりましたので掲載させていただきます。
この論文では、濃尾地震の大規模な断層の横ずれ運動によって
東海地震の発生が遅らされたのではないかという仮説が提唱されています。
濃尾地震は日本の内陸地震では最大規模(M8.0)の1000年に1度ほどの大事件であり、
東海地震が歴史上単独で発生したことがないことだけに注目して、
東海地震が単独で発生することを否定することは適切な判断とは言えず、
東海地震の単独発生の可能性を考慮した対策を今後も続けてゆくべきだ、と主張しておられます。
-
「東海地震」と濃尾地震の関係について
東京大学地震研究所 茂木清夫
第 図に示したように,
年の宝永地震及び
年の安政地震の破壊域は多かれ少なか
れ南海トラフから駿河湾内にまで及んでいたが, )~ )
年の昭和・東南海地震の大規模破壊は
駿河湾内には達していなかったと思われ,御前崎沖から駿河湾にかけては未破壊のまま,
ひずみの蓄積が継続しており,第一種地震空白域として「東海地震」の可能性が考えられている。
しかし,ここで( )何故,
年の東南海地震の場合にだけ,東海地域が未破壊のままとり残
されたのか,( )歴史史料によると東海地域だけで単独の大地震が起こったという例が知られて
いないので,この地域の地震は次回の東南海,南海道の大地震まで起こらないのではないか,
という問題の提起があった。
この問題は東海地震の発生の時期を大局的に考える上で重要と思われるので私見を述べる。
本報告では,東海地域が
年の東南海地震の際に空白域としてとり残されたのは,
年の濃尾地震の発生によるのではないかという仮説を提唱したい。
濃尾地震( ~ )は,内陸地震としては例外的に大きい地震であり,本州を縦断する形で大規模な
左横ずれ運動が起こった。
第一図の最下段に示したように,この地震によって,その南西側では圧縮変形が加速されたが,
北東側では圧縮ひずみが若干解放された可能性がある。
その影響によって,
年の東南海地震の際に破壊が東海地域にまで達せず,この部分が空白域
として残されたのではないか。
濃尾地震のような大事件は
年に一度位しか起こらないことなので史料に無いからといって
「東海地震」が単独で発生しないとは言えない。
東海地域のひずみは順調に蓄積されているので,次回の東南海地震とは別に,単独で発生する
可能性が十分考えられ,短期的予知のための監視体制を強化,継続することが必要であるという,
これまでの方針は適切であると言える。
第 図 宝永,安政,昭和における南海トラフ及び相模トラフ沿いの大地震の推定
震源域。最下段の図は昭和の南海トラフ沿いの大地震の破壊域の広がりが,
年の濃尾地震の際の大規模左横ずれ運動によって若干影響され,駿
河湾から御前崎沖にかけての東海地域が未破壊のままとり残された機構を
示す。最上段の図は西日本内陸部の広範囲の地震活動のレベルから推定し
たこの地域の応力の時間的変化
茂木 先生は、東京大学地震研究所教授、同所長を歴任後、日本大学生産工学部教授、
東海地震判定会会長、地震予知連絡会会長を務められ、浜岡原発の危険性を強く警鐘されてきました。
◎ チームから ぱいんさん
”想定「東海地震」と浜岡原発について”
出席レポート
月 日 土 に静岡県三島市で行われた
”想定「東海地震」と浜岡原発について”という講演会に
行ってきました。
朝日新聞静岡版に記事があります。
講師は前地震予知連絡会会長の茂木清夫氏、
司会は浜岡原発・巨大地震対策虹のネットワーク
事務局長の古長谷 稔さんでした。
今回の講演は
年札幌で開催された、
国際地球物理学連合総会の中の地震予知シンポジウ
ムで、茂木氏が「想定される東海地震の二つの問題」
と題して発表したことを中心にお話されていました。
その2つの問題とは下記のことでした。
1、白か黒かだけの予知情報を出すことの危険性
2、想定東海地震の震源域の中心に浜岡原発があることの危険性
こういう国際学会で発表する研究は、複数の査読者が審査をしてそれを潜り抜けたものだけが
採用されるので、この研究の考え方は国際的に見て常識的なことだということがわかります。
●白か黒かだけの予知情報を出すことの危険性について
1970年茂木氏によって東海地方に巨大地震が起こる可能性が指摘されました。
その後地震予知連絡会が発足し、観測して異常な状態になると警戒宣言を発令することになりましたが、
茂木氏の提案は 注意報を出すことによって地震予知情報をよりきめ細かく出すことが出来、
対策が打ちやすくなる、というものです。
灰色の状態から地震が発生することもあり、黒の情報だけでは不十分というわけです。
当時はこれが検討されず、茂木氏は予知連会長を辞任することとなりました。
*現在は
「東海地震観測情報」観測された現象が地震の前兆であると直ちに判断できない場合
「東海地震注意情報」観測された現象が前兆現象である可能性が高まった場合
「東海地震予知情報」東海地震の発生の恐れがあると判断した場合
の3段階になっています。
注意情報が発表されると防災準備行動の開始となります。
予知情報が発表されると首相からの「警戒宣言」の発令となります。
●想定東海地震の震源域の中心に浜岡原発があることの危険性
大地震の発生地域と原発の分布状況を示した2枚の世界地図を
スクリーン上で重ね合わせたときに、日本だけが重なっていました。
原発のたくさんあるアメリカも、ヨーロッパも大地震がかつて起こったような場所には立っていないのです。
巨大地震( 以上)の起こりやすい環太平洋には建てていません。
日本だけです。
福岡の地震についても触れていましたが
政府の最近発表の地震観測強化地域でも安全とされていたところで大きな地震がおきた・・・・。
ということは、やっぱりあてにしてはいけないということでした。
安全はないのだと。
この茂木清夫氏は
年に東海地方で 8クラスの地震が起きる可能性を一番に発表した方です。
その発表の 年後の
年 月浜岡原発 号機建設の申請。
そして ヵ月後の 月に許可が下りています。
8クラスの震源域に原発を建てるのに ヶ月の審査・・・。
もう「はぁ????」としか言いようがありません。
この日、茂木氏は「こんなところに原発があることは賛成できない」
浜岡付近の断層についても「○○断層が○年動いていないから、大丈夫だというのは信用できない」
核の高レベル廃棄物を地中深く埋めて処分することについても
「あの広いアメリカでもどの州でも自分の州で埋めるのを嫌がって
結局はロッキー山脈にトンネル掘って埋めている。そこに埋めることに1州以外賛成している(苦笑)。」
最後には
「大地震は常に想定外のことが起きる(スマトラ沖地震のように)
安全ということよりも、悪いことを想定しておいたほうがよい。
破壊(地下の破壊活動)についてもまだわかっていないことが多い」
とおっしゃっていました。
会場ではいろんな会(原発を止めようとか、学ぶ会とか)の方々の
ブースがあり、いろいろ見てまわりました。
あの「原発がどんなものか知って欲しい」平井憲夫著もありました。
原発が壊れて放射能が漏れた場合、
一番最初に被害にあうのは子供たちです。
自分の目の前で子供が苦しむこと、ましてや命を落とすことは
想像だってしたくありません。
「原発震災を防ぐ全国署名」が4月19日まで受け付けています。
(日付が過ぎてしまっても、浜岡が止まるまで
署名運動は続けられるというお話です)
みなさまのご協力お願いいたします。
東日本大震災の直後の2011年5月に、政府の指令で浜岡原発が停止されたことは、
非常に適切なことだったと思います。
原発停止後の数年間を、東海地域の電気の供給を正常化するための様々な取組みについやすことが
できたことでしょう。
現在も、中部電力は浜岡原発再稼働のための活動を続けているようですが、
東海地震の発生で大きな被害を受ければ、おそらく実現することはないでしょう。
茂木清夫 先生は、石橋克彦先生が駿河湾地震説を発表する6年前の1970年に、
東海地域の遠州灘沖に大地震発生のポテンシャルがあると指摘した論文を発表されていたそうです。
茂木清夫先生や石橋克彦先生が東海地震の危険性を警鐘しなかったならば、
故山本敬三郎静岡県知事が政府に法律の制定を必死に促さなかったならば、
東海地震の防災対策は現在のものとは比べようもないほど、脆弱なものになっていたことでしょう。
30年以上にわたる官民の多くの方々のご尽力によって、現在の予知体制・防災対策・救助体制
復興体制が出来あがっています。
来たるべき東海地震に直面した時には、これらを最大限に活用した取組みを、多くの方が実行され、
被害が出来る限り縮小することを願っています。