地震の揺れを科学する みえてきた強振動の姿 山中浩明編著

地震の揺れを科学する
みえてきた強振動の姿
山中浩明編著
武村雅之/岩田知孝/香川敬生/佐藤俊明著
東京大学出版会
総合科学2年 広岡 昌史
第1章 地震と被害
この章では地震とその被害に
ついての基本的な知識の説
明に重点が置かれている。
第一章でまとめたこと
 地震被害ワースト10
 プレート境界地震と内陸地殻内地
震について
 活断層について
 地震によるさまざまな被害
 震災の帯について
地震被害ワースト10
明治以後の日本の被害地震で、死
者数で見たワースト第一位は関東
地震
No.
西暦
月
1
1923
9
2
1896
3
日
地震名
M
死者
全潰.全焼 被害原因
1
関東地震
7.9
105385
293387
火災
6
15
三陸地震
8.5
21959
8891
津波
1891
10
28
濃尾地震
8.0
7273
39342
震動
4
1995
1
17
兵庫県南部
地震
7.3
5502
100282
震動
5
1948
6
28
福井地震
7.1
3728
39342
震動
6
1933
3
3
三陸地震
8.1
3008
4035
津波
7
1927
3
7
北丹後地震
7.3
2925
11608
震動
8
1945
1
13
三河地震
6.8
2306
7221
震動
9
1946
12
21
南海地震
8.0
1432
15640
津波
10
1944
12
7
東南海地震
7.9
1223
20476
津波
地震被害ワースト10
この表をみると地震を二種類に大別できる。
一つは、海底下で発生し陸上で強い揺れを
伴う場合もあるが、大津波を引き起こす危険
性が非常に高い地震→プレート境界地震
もう一つは、内陸の地下浅い部分で発生し、
震源の真上で非常に強い揺れをもたらす地
震→内陸地殻内地震
プレート境界地震とは・・・?
各海洋プレートの潜り込みに伴い日本列島をのせた
陸側のプレートとの境界で発生する地震
特徴
 100年程度という地震の世界では比較的短
い時間で繰り返す
 地震の規模がM8クラスになることが多い
 強い揺れだけではなく、海底を大きく変動さ
せるため大津波を引き起こす
例 三陸地震、南海地震、関東地震など
内陸地殻内地震とは・・・?
長年にわたって日本列島に溜まったひずみを解消
する際に発生する地震
特徴
 地震の規模はM7クラスとプレート境界地震
に比べ一段小さい
 震源が極めて浅く、震源の近くでは非常に強
い揺れに見舞われる
例 兵庫県南部地震、鳥取地震など
活断層
内陸地殻内地震により、「約200万年前から
始まる最新の地質時代」である第四紀に活
動してできた傷のことで、将来もずれる可能
性がある
活断層の形成過程を考えればその下に震源
があることは明らかであり、活断層は地殻内
地震の起こり方を知る重要な手がかりとなる
上の図は日本列島の活断層分布である。図が示すよ
うに地震を起こす可能性のある場所は全国に散ら
ばっている。
過去5~10年位の間隔で全国のどこかで
内陸地殻内地震が発生し、その都度震
源直上の地域に非常に強い揺れをもた
らし、大きな被害を与えてきたが、1950
年以降、ながらく低調だった地殻内地震
の活動が1995年の兵庫県南部地震を
境に、再び活発化の兆候を示しているこ
とが、何かの予兆ではないかと心配され
ている。
地震によるさまざまな被害
関東大震災を例に
関東地震による被害の主なものは建物の全
壊、火災、土砂崩れ、津波による被害である。
 関東地震の被害は、ほかの被害地震と比べ
て群をぬいて多い。
原因は?

都市部での大火災
なぜ火災の被害が大きくなったの
か?
 発生時刻が一般家庭で火を多く使う土
曜日の午ちょっと前であった
 当日の朝に台風が能登半島付近に進
み、相当強い南風が吹いていた
 東京・横浜などでは今日以上に人口密
度が高かったにもかかわらず、消防設
備が十分に完備されていなかった
教訓
単に地震による被害といってもさま
ざまなものがあり、その被害軽減の
ためには、発生時刻や発生場所、さ
らには季節や社会の状況等を考慮
し、被害の種類に応じた細かな対策
が必要
明暗を分けた地盤
ー「震災の帯」-
震災の帯とは・・・?
地震被害地域の中でも飛びぬけて住宅
が多数全壊して多くの死者を出し、墓石
の転倒率も80%以上と高い一部の地
域一帯のこと
縦軸が墓石の転倒率、横軸が六甲山
地の縁からの距離(km)
六甲山の縁から0~2.5kmの地点は非常に転
倒率が高い。何故同地域において、このよう
な差が生じるのか?
地盤構造が関係!
六甲山の縁周辺の地盤は固い地層と、軟ら
かい地層がある。軟らかい地層では地震波
のエネルギーを逆に吸収して、揺れを抑える
効果があり、それによって被害の差が生じた
と考えられている。
地盤構造によって地震動の強さが大きく変わ
り、ほんの数100m離れただけでも、被害の
明暗を分けてしまう。