物性物理学序論

磁性を議論する時の基本的な量
H:磁場 (外からかける)
M:磁化
χ:帯磁率
F
MH
F: ヘルムホルツの
自由エネルギー
M

H
1
常磁性体の簡単なモデル:
独立な磁気モーメントの場合
磁場Hの方向に、gμBm (m=J, J-1, ..., -J)の
磁気モーメントが単位体積中にn個ある。
異なる磁気モーメントは独立とする。
問題1:この系のエネルギーEを書け。
問題2:この系の分配関数Zを書け。
1 

sinh(
J

)a 

2
Z 

a
 sinh

2 

n
問題3:磁化Mを求めよ。
a
磁場Hが小さい時の関数形を書け。
磁場Hが大きい時はどうなるか?
問題4:磁場Hが小さい時、
帯磁率χの温度依存性が、 χ=C/Tであることを示せ。
g B H
kT
2
1 

sinh(
J

)a 

2
Z 

a
 sinh

2 

解答
問題3:
n
g B H
a
kT
 
1 
a 

F  kT ln Z  nkTln sinh(J  )a   ln sinh 
2 
2 

 
F
1
1
1
a

 ng B ( J  ) coth(J  )a  coth 
H
2
2
2
2

磁場が大きい時
xが大きい時、cothx ~1 より、
M 
F
M 
 ng B J
温度、磁場によらない一定値
H
磁場が小さい時、coth xを展開する必要がある。
3
相互作用のない系
キュリー則
U   H  si
C

T
i
常磁性体のモデル。
相互作用のある系
キュリー・ワイスの法則
U  2 J  si  s j
ij 
分子場近似
C

T  Tc
強磁性体のモデル
4
ポリマーの話
1.ポリマーとは。
2.ポリマーの広がりを表す指標
末端間距離と慣性半径
3.スケーリング則
5
高分子とは
1つの単位(モノマーを呼ぶ)が繰り返した分子。
例:PET ポリエチレンテレフタレート
テレフタル酸+ エチレングリコール
2価アルコール(OHが2個)
COOH
H H
COOH
HO C C OH
H H
H2Oがとれて重縮合
...
どんどん長くなれる。
6
スケールの概念
マクロ
->
macroscopic
人間の目で見える程度
PETボトル
ミクロ
microscopic
原子レベル: C, H, O, ...
メソ (mesoscopic)
中間の領域。
数十nm~μmくらい。
原子レベルの情報は消え、
分子集団のレベル。
(しかしマクロよりは小さい)
7
ポリマーのいろいろな扱い方
・格子点の上に載せる、離散的なポリマー
・連続的に動けるポリマー
排除体積(excluded volume)の考え方。
質点の力学では、無限小の大きさだった。
現実のポリマーでは、鎖と鎖は互いに
すり抜けられない。
8
ポリマーの鎖の広がり具合
r0
鎖の広がり具合を表す量
R  r0  rN 
末端間距離
(end-to-end distance)
N 1
2
2
2
rN
1
2



r

r

i
G
N i 0
RG
慣性半径
(gyration radius)
rG
重心の座標
2つの量はN(モノマー数)が大きい所で、
同じN依存性を示す。
R~N

ν:フローリー指数
νの値について考える。
スケーリング則
9
フローリー指数
R~N
ν

問題1: d次元空間でポリマーがぎっしりつまっていたら、
νはどうなるか? 特にd=2や3の場合はどうなるか?
問題2:ポリマーがまっすぐ伸びて棒のようになっている時、
νはいくつか?
問題3:ランダムな場合、ν~1/2になることを示せ。
問題4:モノマーが互いに重なれない場合、
νはどの範囲になるか、不等式で書け。
10
フローリー指数
ν
R~N

問題1: N~RdよりR~N1/d。
d=2でR~N0.5、d=3でR~N0.33
問題2:まっすぐな時は、R~N1
問題3:ボンドベクトルの方向が完全にランダムなので、
R 2  r0  rN   (r1  r0 )  (r2  r1 )  ...(rN  rN 1 )
2

2
N 1
u
i 1
i
N 1
  ui
i 1
2
2
  ui  u j
i j
第2項は理想鎖(完全ランダム)な場合はゼロになる。
よって、
R  Nb より、 R~N
2
問題4: 0.5 < ν< 1
2
0.5
11
前回の復習
高分子の広がり方は大事。
恐牛病は、タンパク質の折れ曲がり方が
正しくできなくなる。
R~N

ν:フローリー指数
R
N:モノマー数
スケーリング則(Nが大きい所での大体の振る舞い)
0.5 < ν< 1
まっすぐに
理想鎖
伸びた場合
(完全ランダム)
実在鎖(排除体積を考慮)
でどうなるか?
0.33 < ν
ぎっしりつまった場合
12
フローリーの自由エネルギー
F=
モノマー斥力による
反発項
(Rが大きくなろうとする。)
+
エントロピー項
(Rが小さくなろうとする。)
13
モノマー斥力による反発項
Frep~T (T )c V
2
α(T)は排除体積パラメータ
V=Rdは系の体積。
cはモノマー濃度。
c~N/Rdにより、
2
N
Frep~T  d
R
モノマー間の反発力により、Rが大きい方が、
エネルギーが低くなる。
14
エントロピー項
2
R
Frep~T
2
Na
ランダムコイルの場合
Rが小さい方が、自由エネルギーが低い。
(まっすぐな棒の場合の数は1、
小さいRを指定すると場合の数が大きい。
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配置の個数の計算
問題:N=5の2次元格子上のポリマーに関して、
配置が何通りあるか、適当な方法で分類して書け。
モノマー間のボンドの長さは一定とする。
1つの格子点には、モノマーは1つしか置けないとする。
各配置について、R(末端間距離)を求めよ。
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エントロピー項の導出
2
R
Frep~T
Na 2
末端距離Rの分布関数
 3R 2 
P(R)  exp
2
2
Nb


 R 2  Nb 2
を導ければ、
S=klogP(R), F=E-TS より出る。
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2つの項を合わせると、
N2
R2
F~aT d  bT
R
N
a,bはN, Rに依存しない定数。
問題:自由エネルギーF(R)を最小にするRを求めよ。
フローリー指数νをd(次元)の関数として書け。
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フローリーの議論の結果
3

2d
d=1 ν=1
d=2
ν=3/4
d=3
ν=3/5
シミュレーションの結果もこれに近い。
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