エピペンについて

食物アレルギーとエピペン注
~学校薬剤師としての取り組み
~
平成25年11月16日(土)
平成25年度北海道学校薬剤師(羽幌)大会
苫小牧市学校薬剤師会
会長 木村春樹
エピペンに関する動向
年月
動向
2003.8
「エピペン注0.3㎎」発売 (効能・効果:蜂毒)
2005.3
「エピペン注0.3㎎」効能・効果追加:食物及び薬物など
「エピペン注0.15㎎」発売 (効能・効果:蜂毒、食物及び薬物など)
2005.4
「食物アレルギーによるアナフィラキシー学校対応マニュアル」小・中学校編
2008.3
緊急時には、本人に代わって教職員によるエピペン使用を認める。
(厚生労働省・文部科学省)
2009.3
救命救急士によるエピペン使用を認める。(厚生労働省)
2011.3
「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」(厚生労働省)
2011.9
日本で初めてアナフィラキシー補助治療剤として保険適用
2012.4
新しいデザインのエピペンが発売
2012.11
2013.7
マイラン製薬㈱からファイザー㈱へ製造販売承認を承継
日本小児アレルギー学会「一般向けエピペンの適応」発表
アレルギー対策基本法案(概
要)
 基本理念:総合的な施策による生活環境の改善や、居住地域に関係
なく適切な医療を受けられる体制づくり。
国に対しては、対策を進めるための基本指針の策定を義務付け、策
定の際は関係者で構成される協議会の意見を厚生労働相が聞くもの
とする。指針は5年ごとに見直す。都道府県については対策の推進
に関する計画を「策定できる」とした。
基本的施策:学校の教職員などに対する研修機会の確保や、患者・
家族への相談体制の整備を要請。大気汚染の防止や森林の適正な整
備、食品表示の充実など、省庁を超えた対策も進めていく。
専門医のほか、専門的な知識・技能を持つ保健師、助産師、栄養士、
調理師などの育成にも取り組むとした。医療機関の整備、研究の促
進と成果の活用、治療薬などの早期承認に向けた環境の整備なども
盛り込んだ。
新聞報
道
給食での最近のアレルギー事故
2008年10月:横浜市小学校
卵アレルギー:卵白入りちくわで13人が嘔
吐・腹痛
2008年11月:仙台市小学校
小麦アレルギー:スパゲティで1人が腹痛・
呼吸困難
2008年12月:仙台市小学校
小麦アレルギー:非対応給食でじんましん
2011年1月:岡山県津山市中学
校
ピーナツアレルギー:バンバンジー嘔吐・呼
吸困難
2011年3月:高知市小学校
小麦アレルギー:1人が小麦入りデザート嘔
吐症状
2012年7月:島根県益田市小学
校
卵アレルギー:2人が卵入りプリンで体調不
良
2012年9月:調布市小学校
卵アレルギー:1人がオムレツで咳き込むな
苫小牧市学校薬剤師会の動き
平成24年4月:担当校で養護教諭から相談
平成24年6月:養護教員との連絡協議会で提言
平成25年3月:市内の小学校よりエピペン注の相談
平成25年4月:養護教諭会よりエピペンについての講演
依頼
~エピペン注トレーナーの収集開始~
平成25年5月:教育長との面談の際、食物アレルギー対
策に
ついて提言及び実態調査の依頼
平成25年6月:「エピペン注」持参者数の調査結果報告
平成25年7月:苫小牧教育委員会において食物アレル
ギー
対策マニュアル作成開始の連絡と協力
苫小牧市における
「エピペン注」所持の児童・生徒
数
エピペン所持
%
今後予想?
%
小学校
4名
0.042%
13名
0.14%
中学校
2名
0.035%
8名
0.14%
計
6名
0.040%
21名
苫小牧市の児童・生徒数(平成24年度)
小学校(24校):9,461名
中学校(15校):5,637名
※文部科学省(2004~05年)調査では(1280万人)
食物アレルギーを持つ 2.6%
アナフィラキシーを持つ 0.14%
苫小牧市民薬局における「エピペン注」調剤
動向
平成20年~25年10月
平成23年9月:保険適用開始
平成25年の小児の年齢構成:2、4、6、7、8、8、9、11、13、14、15歳
成人の年齢構成:17歳
※赤字は継続の人
延べ人数
小児
成人
7
アレルゲンは?(薬歴より)
年齢
アレルゲンなど
2
小麦、牛乳
4
卵、牛乳他多数
6
卵、落花生、小麦・鮭・イクラ・トウモロコシ・小松菜・
鱈・鶏肉・柿・巨峰・生のリンゴ
7
そば
8
不明
8
卵
9
牛乳・桃など
(タミフル)
(ただし、エンテロノンRは可)
11
ハウスダスト、ダニ、イヌ、ネコ
13
不明
14
不明(生の魚の可能性)
15
米、大豆、そば、小麦、牛乳、卵白
17
不明(喘息)
8
調査期間中に医療機関を受診した患者数
(即時型食物アレルギーで食後60分以内)
0歳:1270例(32.7%)
0~1歳:50.7%
~4才:70.7%
20歳以上の成人:9.4%
9
全年齢における原因食物
10
(H14・17年度 厚生労働科学研究報告より)
年齢別 主な原因食物
0歳
N=1270
1歳
N=699
2、3歳
N=594
4-6歳
N=454
7-19歳
N=499
20歳以上
N=366
No.1
鶏卵
62%
鶏卵
45%
鶏卵
30%
鶏卵
23%
甲殻類
16%
甲殻類
18%
No.2
乳製品
20%
乳製品
16%
乳製品
20%
乳製品
19%
鶏卵
15%
小麦
15%
No.3
小麦
7%
小麦
7%
小麦
8%
甲殻類
9%
ソバ
11%
果実
13%
魚卵
7%
ピーナッツ
5%
果実
9%
小麦
10%
魚
11%
甲殻類
5%
ピーナッツ
6%
果実
9%
ソバ
7%
果実
5%
ソバ
6%
乳製品
8%
鶏卵
7%
71%
11
小麦
5%
66%
魚
7%
61%
64%
No.4
No.5
小計
89%
80%
(H14・17年度 厚生労働科学研究報告より)
新しいタイプの食物アレルギー
 口腔アレルギー
全ての年齢にありますが、成人女性に多いとされます。
アレルゲンは、果物(キウイ、メロン、モモ、リンゴ、
パイナップル等)、あるいはトマトなどの野菜。
症状は口腔だけですが、ショックを起こすことともある。
花粉症との関連が疑われている。
 食物依存性運動誘発アナフィラキシー
特定の食物と運動の組み合わせで起こる
アレルギーのこと。(小麦、甲殻類、魚介類)
原因はよくわかっていませんが、食後に運動すること
消化吸収に影響を与え、抗原が吸収されることが
関係しているとも考えらている。
12
あらためてエピペンとは・・
 食物・薬物アレルギー、蜂毒によるアナフィラキ
シー症状を緩和するために自己注射する補助治療
剤
 アナフィラキシー発現時の治療に用いられるエピ
ネフリン(アドレナリン)が入っている
処方されている人
 過去に食物により重篤なアナフィラキシー反応を
起こしたことがある方
 医師により重篤なアナフィラキシー反応が起きる
可能性が高いと判断された方
 アナフィラキシー症状が起きても直ちに医療機関
で治療を受けることができない状況の方
エピペン処方時の留意事項
 2011年9月より健康保険の適応となっている。
 処方できる医師:あらかじめ講習を受け、登録された医師
 患者自身や保護者が使用する自己注射である。患者が注射できな
いときは、代わりに園・学校の教員が注射してもよい。その場合、
医師法などには抵触しない。
 適応:アナフィラキシーの既往orアナフィラキシーのリスクが高
い患者
 製剤の選択:体重15㎏以上30㎏未満では0.15㎎、30㎏以上では0.3
㎎
製剤
 医師は指導をしっかり実施し、確認と同意を文書にする。
※
処方医登録確認or各種情報は、
適エ
ピ
正ペ
ン
使注
用射
液
の
た
め
の
理
解
確
認
事
項
適
正
使
用
同
意
書
指導のポイント(処方医)
アナフィラキシーの初期症状(しびれ感、違和感、口唇の浮腫、気分
不快、吐気、嘔吐、腹痛、蕁麻疹、咳き込みなど)からアナフィラキ
シーショックまで重症度症状を説明する。症状は進行性であり、初期
症状から急速に悪化することがある。特に、アナフィラキシーの既往
がある患者は初期症状を察知することが大切である。
2. 大腿部の前外側に筋肉注射する。緊急時には衣服の上からでも注射可
能。
3. 注射後は直ちに医療機関を受診する(救急車の要請も検討)
4. 1回使用するとニードルカバーが伸びて二度と使えない。
5. 安全キャップをはずすと予期せぬ作動をする恐れがある。注射を必要
とする時まで、絶対に安全キャップをはずさない。
6. 誤注射を防止するため、指または手をオレンジ色の先端に当てない。
誤注射した場合は医療機関で適切な処置を受ける。
7. 期限切れ、または使用後の製剤は、家庭で破棄せず、医療機関に届け
る。
1.
調剤時のポイント(薬剤師)
 在庫困難、登録医の確認作業等でお薬を渡すまで、日数を要
する旨の説明。
 使用後・使用期限切れの現物を医療廃棄物として処方医師に
渡す旨の説明。(葉書による登録)
 使用について(医師から説明されたかを確認する)
 医師からアナフィラキシーの症状、使い方、使うタイミング
等十分な説明がなされたか確認する。
 使い方を練習しておく旨の説明。
 使用後は、必ず医療機関で処置してもらう旨の説明(エピペ
ンはあくまで補助治療薬)
調剤時のポイント(薬剤師)続
 保管について
1、必要事項を記入した連絡シールを携帯ケースに添付する
。
2、保管方法:アドレナリンは光で分解しやすいので必ず携
帯用
ケースに入れ、直射日光や高温をさける
(ダッシュボ
ードなど)
15~30℃が望ましいため、冷蔵庫に
は入れないこと
 副作用について
医師処方時の確認事項として、副作用等を処方医が同意書
エピペンは2種類
0.15mg
(体重15~30㎏が目安)
0.3mg
(体重30㎏以上が目安)
オレンジ色の先端を太ももの前外側に強く押し付けるだ
けで、バネの力で一定量(約0.15㎎ないし0.3㎎)の薬液
が筋肉内に注射される
ファイザー株式会社ホームページより
構造
ファイザー株式会社ホームページより
使うタイミング
 皮膚、粘膜症状が拡大傾向にある
 皮膚、粘膜症状以外に咳嗽、声が出にくい、呼吸困難、
喘鳴等の症状が出現したとき
アナフィラキシーショック症状が出る前にすみや
かに使用すること
(事前に、本人・保護者・主治医などと確認をすることが必要)
アナフィラキシー症状のグレー
ド
「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」より
一般向けエピペン®の適応(日本小児アレルギー学会)
エピペン®が処方されている患者でアナフィラキシーショックを疑う場合、
下記の症状が一つでもあれば使用すべきである。
消化器の症状
・繰り返し吐き続ける
・持続する強い(がまんできない)おなかの痛み
・のどや胸が締め付けられる
・声がかすれる
・犬が吠えるような咳
・持続する強い咳込み
・ゼーゼーする呼吸
・息がしにくい
・唇や爪が青白い
・脈を触れにくい・不規則
・意識がもうろうとしている
・ぐったりしている
呼吸器の症状
全身の症状
・尿や便を漏らす
当学会としてエピペン®の適応の患者さん・保護者の方への説明、今後作成される保育所
(園)・幼稚園・学校などのアレルギー・アナフィラキシー対応のガイドライン、マニュア
ルはすべてこれに準拠することを基本とします。 2013年7月
アナフィラキシー発症時の対応フロー
異常に気づく
(発見者)
●応援を呼ぶ
●異常を示す症状
皮膚粘膜症状:じんましん。かゆみ、目の充血
呼吸器症状:咳、ゼーゼー、ヒューヒュー、呼吸困難
消化器症状:吐気、嘔吐、腹痛
アナフィラキシーショック:血圧低下、頻脈、意識障害・消失
発見者及び応援にかけつけた養護教諭などの教職員
●意識があるか?
あり
緊急常備薬(抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、ス
テロイドなど)があれば内服し、症状観察
なし
●119番通報
●エピペンの注射
●AEDの準備
●一次救命処置
・気道確保
※自発呼吸がない、
心停止もしくは心停
止の疑いがある場合
・心臓マッサージ
・人工呼吸
・AEDの使用
●状態の把握
・意識状態、呼吸、心拍数
・症状、経過の把握
症状は分単位で急速に進行することが多く、最低1
時間は目を離さないようにする。
●応急処置
事前に決められた指示に基づく
エピペンが処方されてる場合は、
使用する環境を整える
エピペンが医師から認められてる場合は、自己注射する。
エピペンは、アナフィラキシーの補助治療剤であり、呼吸
困難などの呼吸器症状が出現したら、すぐに使用すべき。
●救急車要請の目安
・アナフィラキシーの症状はある
・食物アレルギーで呼吸症状がある
・エピペンを使用した場合
・主治医、学校医、保護者からの要請
救急隊へのバトンタッチ
校長・教頭等
●緊急時の対応
1.対応者への指示
2.救急車要請の判断
3.緊急時連絡先への
連絡・相談
4.保護者への連絡
周囲の教職員
1.観察者とともに応
急処置に参加
2.症状の記録
3.周囲の子供の管理
4.救急隊の誘導など
※原因となる
アレルゲンや
状況を正確に
伝える。
札
幌
市
教
育
委
員
会
ア
レ
ル
ギ
ー
疾
患
対
応
マ
ニ
ュ
ア
ル
よ
り
苫小牧市教育研究大会養護教諭部会
平成25年11月6日(水)
使い方の具体的留意点(1)
 オレンジ色の部分を強く推すことで、針が出て薬液が注
入される。
 青いキャップをとらないと出ない。
 キャップを外すときのミスとしては~キャップを外した
後、逆さに持ち替えることがあり、薬液が出ない。ある
いは親指でオレンジ色部分を押さえていると、針が指を
貫くことになる。
エピペンは初めから(利き手でグー)で持つよう
にする
27
使い方の具体的留意点(2)
 注射する場所
大腿部の外側の上4分の1程度部分で、手を
そのまま下におろした辺りがよい。
筋肉注射なので、筋肉が多く、骨までも遠く、
太い血管や神経はかなり内側を走っているた
め。
振り下ろす必要はなく、打とうと思うところ
まで先端を持っていき、バチッと音がするま
で押し込む。
着衣のままでよく、消毒の必要もない
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使い方の具体的留意点(3)
 エピペンを押し込むと強力なバネが伸びるので、
間隔が手に伝わる。
 その状態で3秒から10秒保って、ゆっくり垂直
にエピペンを抜く。
 アナフィラキシーショックでも、痛みには反応す
るので、注射するときは、必ず声をかけ、別のス
タッフが患者を抑えるようにするのがよい。
 抜いた後は、20~30秒ほど注射部位をよく揉
む。
29
使い方のまとめ・・・
 実際の行動
①本人の所持しているエピペンを取り出す
透明な容器から取り出す。
②青い安全キャップをはずす
利き手でグー握り。逆手で青キャップ。
③そのまま大腿部外側に打つ
ムニューではなく、ガチッと。数秒そ
のまま。
衣服の上からでOK。しばらく揉む。
30
エピペントレーナー入手(1)
エピペントレーナー入手(2)
最後に・・・・・
学校給食の対応
(除去食など)
意識改革
管理職・現場職員の
危機管理、当事者意識
環境整備
管理職・現場職員の
知識と能力を高める
マニュアル作成
シミュレーション
の実施
マニュアル化することでの
知識・能力の実践
定期的なシミュレートで
突発的な事故に対応
33