食物アレルギー

正しい知識を持ちましょう
小学校入学前に食物 負荷試験を! 食物アレルギー
なり、非常に多くのものが制限され
ります。また、集団生活も送りやすく
の検査で診断されてきました。
体検査で、多くの食物アレルギーはこ
アレルギーを調べる血液検査で最も
広く行われているのが特異的IgE抗
疑わしい食べ物までも広く除去対象と
で す。 現 在 の 親 世 代 が 子 ど も の 頃 は、
症状を起こさないためには、原因食
物を口にしないこと︵除去食︶が基本
まう状態です。
粘膜などにいろいろな症状が起きてし
疫﹂が過剰に反応してしまい、皮膚や
によって、本来は体を外敵から守る﹁免
することはできないのです。
るため、この検査だけでは診断を確定
クラスが低くても症状が出ることがあ
く て も 症 状 が 出 な い、 あ る い は 逆 に、
が高くなります。しかし、クラスが高
よってアレルギー反応を起こす可能性
され、子どもの栄養面での心配も減
す。除去食に対する親の負担も軽減
除去食物が少ないほど、子どもの
食生活の幅は拡がり、豊かになりま
する必要はありません。
物であっても、基本的に鶏肉を除去
原則となっています。鶏卵が原因食
しかし現在は、原因となる食物だ
けを取り除く、必要最小限の除去が
別することがとても大切です。
親の目の届きにくい集団生活を送り
始める前に、本当に食べられるものと
ろで食物負荷試験を行うわけです。
的に確認し、ある程度減ってきたとこ
たとえば、鶏卵アレルギーであれば、
鶏卵に対するIgE抗体の増減を定期
くまでも〝よい指標〟になるだけです。
物アレルギーの診断はできません。あ
しかし、血液検査の結果だけでは、食
そのため多くの患者さんが、これまで
原因食物を特定するためには、定期
的 な 血 液 検 査 が よ い 指 標 に な り ま す。
べないように指導されていたのです。
特異的IgE抗体検査では、アレル
ギー反応を起こす原因のひとつである
このため、最終的には食物経口負荷
試 験︵ 以 下、 食 物 負 荷 試 験 ︶ を 行 い、
鶏卵
45%
鶏卵
30%
鶏卵
23%
甲殻類
16%
甲殻類
18%
№2
乳製品
20%
乳製品
16%
乳製品
20%
乳製品
19%
鶏卵
15%
小麦
15%
№3
小麦
7%
小麦
7%
小麦
8%
甲殻類
9%
ソバ
11%
果実
13%
№4
魚卵
7%
ソバ
8%
果実
9%
小麦
10%
魚
11%
№5
魚
5%
魚卵
5%
ピーナツ
6%
果実
9%
ソバ
7%
80%
71%
66%
61%
64%
89%
乳幼児の食物アレルギーは、鶏卵、乳製品、小麦が原因物質であること
が多く、約9割が6歳までに食べられるようになります
性がとても高いので、必ずしも食物負
学校就学前には、ぜひ食物負荷試験を
食物負荷試験は、食物アレルギーの
診断に不可欠な検査ですが、実施して
受けてみるべきです。
食物負荷試験は、実際に原因食物と
思われるものを食べ、その反応を確認
するものです。食べた食物によって症
状が誘発されるリスクを伴いますので、
必ず医師の管理下で行います。
か月ごとに血
特異的IgE抗体検査の結果で、お
よそのリスクが計れるため、3歳未満
は6か月、3歳以上は
12
液検査を行い、評価していきます。
原因食物(抗原)と、抗原を排除しようとつ
くられた抗体との間で、過剰な反応(免疫)
が起きて症状が起こります
鶏卵や牛乳、小麦などは
6歳までに治る可能性
荷試験は行いません。
食べられないものをしっかり調べて区
に 血 液 検 査 を 受 け て き た と 思 い ま す。
らいあるかを計り、その量を0∼6の
診断を確定します。ただし、特異的I
小児に多い鶏卵、牛乳、小麦、大豆
ア レ ル ギ ー の 子 ど も た ち の 約 9 割 が、
鶏卵
62%
IgEという物質が、血液中にどれく
7段階でクラス表示します。
gE抗体検査で、クラスが5や6など
正しい診断に不可欠な
食物経口負荷試験
なるなど、家族と子どもの生活の質が
1996 年、東京慈恵会医科大学医学部卒業。昭
和大学医学部小児科学講座入局。2004 年、独
立行政法人国立病院機構相模原病院小児科、
2011 年、同病院小児科医長。2012 年より現
職。専門は食物アレルギー研究。
日本小児科学会専門医、日本アレルギー学会
指導医・代議員、日本小児アレルギー学会評
議員。1996 年、厚生労働省(旧厚生省)食物
アレルギー対策検討委員。2013 年より文部科
学省「学校給食における食物アレルギー対応
に関する調査研究協力者会議」委員。厚生労
働科学研究班『食物アレルギーの栄養指導の
手引き 2008』『同 2011』作成委員長。
ていました。たとえば、鶏卵アレル
◉略歴
向上します。
今井 孝成 先生
ギーと判明すると、以前は鶏肉も食
食物アレルギーとは、特定の食物が原
因で皮膚や粘膜などにいろいろな症状が
起きてしまう状態です。
鶏卵、牛乳、小麦などの場合、乳幼児
までに発症し、消化などの機能が発達す
る6歳くらいまでには9割の子どもが食
べられるようになります。できるだけ早
く食物除去を終わらせるため、定期的な
血液検査と食物経口負荷試験を受けるこ
とが薦められます。
昔とは大きく変わった
食物アレルギーの診療
(いまい・たかのり)
6歳までに治っていますので、特に小
食物アレルギーとは、特定の食物︵原
因食物︶を食べたり飲んだりすること
昭和大学小児科学講座講師
高い場合、アレルギー症状が出る可能
0歳
1歳
2、3 歳
4 ̶ 6 歳 7 ̶ 19 歳 20 歳以上
N= 1270 N= 699 N= 594 N= 454 N= 499 N= 366
26
27
監 修
クラスが高いほど、その原因食物に
№1
小計
(H14・17 年度厚生労働科学研究報告より)
■ 年齢別 主な原因食物
6歳を過ぎても続く場合は
経口免疫療法を試すことも
見すると同じような表示がありますが、
その信頼度は低く、表示を信じて食べ
る の は、
〝分のわるい賭け〟をするよ
うなものです。特に、重篤な食物アレ
ルギーの患者さんは、外食や中食はす
るべきではありません。
また、集団給食では、痛ましい死亡
事故以来、二度と同じことが起こらな
いように、各方面で取り組みが強化さ
識 を 持 ち、 医 師 の 正 し い 診 断 の も と、
除去食を行いながら生活の質を維持
するためには、加工食品のアレルギー
28
いる医療機関は、まだ限られています。
まずは、かかりつけ医の小児科医に相
談してみましょう。また、食物アレル
ギー研究会のホームページでは、食物
︶。
www.foodallergy.jp/
負荷試験の実施施設を紹介しています
︵
〝食べて治す〟治療は
必ず専門医のもとで
この取り組みはまだ研究段階ですの
で、治療を希望する場合は、日本アレ
学校・幼稚園・保育所と協力して、子
れ て い ま す。 子 ど も の 安 全 の た め に、
施設はまだ一部ですが、経口免疫療法
ルギー学会のホームページで、学会に
どもたちにとってよりよい環境をつ
医師の指導なしに保護者が勝手に行
うことは絶対にしないでください。万
表示を正しく読むチカラを身につけま
多くの食物アレルギーは、原因食品を摂
取してから 1−2 時間のうちに症状が現れ
ますが、まれに、それよりも遅れて症状が
現れる場合があります。これが「遅延型食
物アレルギー」です。
現在、この遅延型食物アレルギーを診断
できるとして、高額な保険適用外の IgG 抗
体検査がありますが、その診断の有用性は
米国や欧州のアレルギー学会で公式に否定
され、また最近、日本アレルギー学会や食
物アレルギー研究会でも、この検査に対す
る注意を呼びかけています。
親も食物アレルギーに対する正しい知
︵減感作療法︶という先進的な取り組
認 定 さ れ た 指 導 医 や 専 門 医 を 探 し て、
くっていきましょう。
残念ながら6歳までに食べられるよ
うにならなかった場合、実施している
みを試すことができます。
問い合わせたり相談したりするとよい
一、症状が強く出たときに、適正な対
しょう。
「遅延型食物アレルギー検査」に注意!
︶
。
www.jsaweb.jp/
でしょう︵
処ができないと、命にかかわる可能性
食品表示を正しく読み
外食や中食にも注意を
もあります。必ず食物アレルギーに精
通した医師のもとで行ってください。
外食や中食︵惣菜や調理パン、コン
ビニ弁当などの調理済み食品︶も、一
に管理しながら慎重に行うものです。
い取り組みであり、専門の医師が厳密
なくないのですが、本来はリスクの高
近年、この取り組みは﹁食べて治す﹂
と説明され、気軽に行われることも少
定期的な血液検査と食物負荷試験で、本当に食
べられない食物を把握しておくことが大切です