平成27 年度 長崎市自然環境調査報告書:水生生物

平成 27 年度 長崎市自然環境調査報告書:水生生物
長崎市自然環境調査委員 深 川 元 太 郎
≪平成 27 年 4 月~平成 28 年 1 月≫
○神浦川源流部(琴海村松町)
:4 月 12 日
確認種は、魚類がクロヨシノボリとタカハヤ、十脚甲殻類がサワガニ、貝類がカワニナの計
4種でした。その他、ムカシトンボ幼虫、シマアメンボ、ミゾツヤドロムシ、アカモンミゾド
ロムシ、ヒメツヤドロムシ属の一種(未記載種と思われます)、マルヒラタドロムシ属の一種(幼
虫)などの水生昆虫類も見つかっています。
○北浦川河口部(北浦町)
:4 月 18 日
干潮時にできる本干潟は、主に砂質ですが、一部で礫質や砂泥質となっている場所もありま
す。コアマモの群生が広範囲にあり、一部アマモもみられますが少ない状況です。確認種は、
貝類 49 種、甲殻類 14 種および魚類 8 種の計 71 種でした。イボキサゴ、イボウミニナ及びユ
キガイなどの希少な動物も見つかっています。
地点状況と確認種(イボウミニナ、クロシタナシウミウシ)
○三重川支流シジャク川横湿地 (長崎市松崎町)
:5 月 17 日
シジャク川下流に広がる湿地状となった場所で調査を行いました。確認種は魚類 1 種、十脚
甲殻類 1 種、貝類 2 種、水生昆虫類 20 種およびその他 15 種の計 39 種でした。オオマルケシ
ゲンゴロウやドジョウなどが確認され、市内では数少ない湿地環境の一つです。
調査地点の状況
キアシネクイハムシ オキナワイトアメンボ
コオイムシ
ナガマルチビゲンゴロウ
オオマルケシゲンゴロウ
地点状況と確認種
○樫ノ久保湿地(長崎市松崎町)
:6 月 14 日
長崎市の保全すべき地域に指定されている樫ノ久保湿地の調査を実施しました。本地域は、
放棄水田が湿地状となっており、一部で水深が 10cm 以浅のごく浅い水域が認められます。確
認種は、貝類 1 種、節足動物(昆虫含む)36 種、脊椎動物 5 種の計 42 種でした。ホソクロマメ
ゲンゴロウやスジヒラタガムシなどの希少な種を確認することができましたが、以前記録され
ていたハッチョウトンボは今回確認できませんでした。
地点状況と確認種(ホソクロマメゲンゴロウとその交尾器、オオマルケシゲンゴロウ)
○出津川上流部湿地(長崎市新牧野町)
:7 月 12 日
確認種は、貝類 3 種、甲殻類 1 種、昆虫類 20 種、魚類 3 種、その他 5 種の計 32 種でした。
ヒラマキガイモドキ、キイトトンボ、コオイムシおよびムツボシツヤコツブゲンゴロウなど希
少な生物が見つかっています。
○江川干潮域~下流部・用水路(長崎市高浜町)
:7 月 20 日
干潮域上限にある魚道付き落差工の上下流、周囲の水田脇の用水路等で調査を実施しました。
河川は、水生動物に配慮した工法が行われているためか、以前確認していたヌマエビ類やテナ
ガエビ類といった甲殻類、魚類が今回も概ね確認することができました。
江川感潮域
江川下流部
ドジョウ(江川下流部)
モノアラガイ属(江川下流部)
ミナミテナガエビ
地点状況と確認種
○野島(蚊焼町)
:9 月 26 日
無人島調査の一環として野島の調査を実施しました。主に潮間帯に生息する動物や打上貝の
調査を行っています。確認種は 126 種で、打上貝がその多くを占めています。打上貝は、ニシ
キウズガイ科やタカラガイ科など岩礁性の貝類が目立っており、それに砂~砂礫底に生息する
種が少数みられ、この島周辺海域の潮下帯の底質状況を表わしているものと思われます。潮間
帯には一部タイドプールが存在しており、ムラサキウニ、コノハミドリガイ、クモハゼなどが
散見できました。
○黒島(蚊焼町)
:9 月 26 日
野島同様に潮間帯に生息する種や打上貝の調査を中心に行いました。野島と異なり砂質海岸
がほとんどなく、打上貝自体が少ない状況でした。打上貝は岩礁性の貝類が確認種の多くを占
めています。潮間帯岩礁にはアマオブネ、イボニシ、ヨメガカサなどの貝類が多く、その付近
の石の下にはムラサキクルマナマコが多産していました。
野島(全景)
クマノコガイ
イボイワオウギガニ
コノハミドリガイ
ホソウバウオ
クモガタウミウシ
黒島(全景)
ミヤコウミウシ
マツバガイ
オオヘビガイ
地点状況と確認種
○八郎川支流現川川山下橋(長崎市平間町)
:8 月 2 日
本地点は、本河川の下流部に位置しており、以前1m程の落差工があり、遡上する水生動物
にとっての障壁となっていましたが、近年対策が講じられ、魚道が設置された場所です。今回、
この落差工の下流側と上流側の主に魚類・十脚甲殻類について調査を実施しました。確認種は、
下流側で魚類 5 種、十脚甲殻類 4 種、上流側で魚類 5 種、十脚甲殻類 5 種でした。本結果から
概ねこれらの生物の遡上が確認されました。
現川川(堰上方向)
現川川(堰下方向)
ヌマチチブ
オイカワ
地点状況と確認種
○黒崎川下流(下黒埼町)
:10 月 17 日
数年前に実施された河床浚渫工事後、初めて浚渫場所の調査を実施しました。確認種は、貝
類2種、十脚甲殻類3種、魚類7種及び両生類1種の計 13 種でした。ニホンウナギ、ヒメヌ
マエビおよびミナミテナガエビを確認できた反面、ボウズハゼは確認できませんでした。以前
の状態に戻るまではもう少し年数が必要と思われます。
○時津川源流部(横尾五丁目)
:10 月 29 日
タモ網を用いた調査を実施しました。水量も少なく、貝類 1 種、十脚甲殻類 1 種、魚類 1 種
の計 3 種のみを確認できました。その他、大型水生昆虫類 3 種を確認しました。
○浦上川上流(畦別当町)
:11 月 3 日
長崎バイパスに並行して流下する浦上川上流部の調査を実施しました。確認種は、貝類2種、
十脚甲殻類2種、魚類2種の計6種でした。大型の水生昆虫類は、トンボ類の幼虫を中心に 13
種を確認することができました。タカハヤ、ミヤマカワトンボ(幼虫)、アサヒナカワトンボ(幼
虫)、コオニヤンマ(幼虫)、オジロサナエ(幼虫)、オニヤンマ(幼虫)、コシボソヤンマ(幼虫)、
コヤマトンボ(幼虫)、シマアメンボなどです。
○潮見町海岸:12 月 5 日
打上貝を中心に調査を実施しましたが、海岸の石が比較的大きく、打上時に破砕されること
や堆積した石の間隙に入り込んでしまうことなどから、確認種は岩礁・転石域にみられるもの
を中心に 15 種と少ない状況でした。また、飛沫帯の転石から長崎市初記録となるイソチビゴ
ミムシ(環境省 NT)が確認されました。県内では男女群島、佐世保市俵ヶ浦半島、西海市崎戸島
で記録されているものの、九州本土他県では記録がほとんどない種のようです。
○岳路海水浴場(蚊焼町)
:12 月 13 日
海浜性の甲虫類の調査を実施しました。既知のニセマグソコガネを 20 個体以上確認するこ
とができました。本種は後翅が退化しており、飛ぶことが出来ないため、周囲の砂浜等へ移動
ができないこと、長崎市ではこの場所でしか生息が確認されていないことから、この場所が攪
乱されると本市からいなくなる恐れがあり、今後保全策を検討すべきと考えます。
潮見町海岸
潮見町海岸
岳路海水浴場
ニセマグソコガネ
イソチビゴミムシ
地点状況と確認種
○遠見岳西側海岸(伊王島二丁目)
:1 月 23 日
打上貝を中心に調査を実施しました。確認種は、前地点同様、岩礁・転石域にみられるもの
を中心に 36 種であまり多くない状況でした。本地点は、貝などの化石がよく見つかる場所と
して知られています。