第2章 イメージの機能的性質

市川伸一・伊東祐司(編)『認知心理学を知る<第3版>』おうふう
第2章
イメージの機能的性質
執筆者:市川伸一
授業者:寺尾 敦
atsushi [at] si.aoyama.ac.jp
Twitter: @aterao
この章で学習すること
• イメージ論争
– イメージは,頭の中でどのように表現されている
のか?(参考:マーの「表現とアルゴリズム」)
– 第8章の内容を参照
• イメージの性質
– メンタルアナログ
– 知覚とイメージの等価性
1.言語とイメージの2重コード説
• あなたの家には窓がいくつありますか?
– おそらく,多くの人は家のイメージを思い浮かべ
る.
• イメージは古くから心理学の研究対象だった.
– 例:意識心理学での imageless thought に関する
議論(イメージをともなわない思考は存在するの
か?).
• (視覚的)イメージの定義:物理的な対象が存
在しないにもかかわらず生じる疑似視覚的な
体験
• 心的イメージは主観的な体験
– イメージ(例:家のイメージ)を思い浮かべたという
ことが,他者からはわからない.
– 行動主義の時代には研究対象から外された.
– 認知心理学が生まれて,再び研究対象になった.
• 初期の認知心理学では,言語材料の記憶に
おけるイメージの働きが研究された.
– ペイビオらによる研究(Pavio, 1969, 1971)
• イメージが記憶を助けるというデータ:
– 「イメージを使って覚えなさい」という教示を与える
と,記憶成績がよくなる.
– 具体語(イメージを構成しやすい)は抽象語よりも
よく記憶される.
2重コード説
• なぜか? 2重コード説:2種類の表現形式
で記憶しているから.
– 言語コード(言語的)
– イメージコード(視覚的,聴覚的,触覚的)
• 2重コード説は,われわれの直観に一致して
いる.
• この立場での実験的研究が多く行われた.
– イメージの存在,機能の研究
• しかし,2重コード説は,認知心理学(認知科
学)の中から異議を唱えられた.
– Pylyshy (1973). What the mind’s eye tells the
mind’s brain: A critique of mental imagery.
イメージ論争
• 命題派の主張:人間の知識の一形態としてイ
メージという概念を考えることは不適切.命題
的表象(propositional representation)という
形式のみ考える.イメージは,命題的表象か
ら,必要に応じて構成できる.
• イメージ派の主張:2重コード説
– 論争初期には,命題派はイメージの存在を否定
していると誤解された.
– 第8章3節「イメージの命題的記述」参照
2.メンタルアナログとしてのイメージ
• イメージは実物のように操作できる
– メンタルアナログとしてのイメージ
• 心的回転
– 現象:回転角度と反応時間が比例する
– 説明:はじめに提示される文字を,まるで実物の
ように回転させて反応するため
– 実験の説明はテキスト参照
3.知覚とイメージの干渉
• イメージと知覚は類似両者は同じシステム
を共有?(答え:Yes)
• 選択的干渉:言語聴覚的イメージは実際の言
語聴覚的活動で,視覚的なイメージは実際の
視覚的活動で妨害される.(テキストにある
Brooks の実験参照)
4.知覚とイメージの等価性
• イメージと知覚は,どこまで同じなのか?
• 視覚的処理(図2-5)
– 網膜での情報処理
– 明るさの検出
– 特徴の識別
– より高次の特徴分析
– 対象についての知識
低次
高次
• イメージは高次レベルの処理を受ける