第11号[平成27年3月発行] - 岡山県立岡山大安寺中等教育学校

岡山大安寺中等教育学校
相談室便 り
(保護者の方もお読みください)
★☆★ 第11号 ★☆★
2015年3月発行
●生徒のみなさんへ…相談室からのメッセージです。
学校の第3棟の相談室の前に、いつのころからか小さいブラックボードが立っているの
に気付いてくれている人も多いと思います。昨年末、冬休みに入る前(12月中旬)に設
置しました。そのときには「誇り【Pride】…自分に恥ずかしくない自分でいよう」と書い
ていありました。それぞれの場所で冬休みを過ごすみなさんに、どこにいても大安寺の生
徒であるという自覚と誇りを持って生活して欲しいという願いを込めたものでした。
次に、1月には「やりぬく心【Carry through】…自分の目標に向かって努力を続けよう」
と書きました。新しい年を迎えて、「今年こそは」と新たな決意をしたり、新しいことに
挑戦したりする人がたくさんいるだろうと想像して、その年頭の決意を大切に、寒さに負
けず勉強も部活動もしっかりやりぬいて欲しいという願いを込めました。一年の締めくく
りの三学期の始めにみなさんに送ったエールでした。次第に暖かくなってきていますが、
みなさんはこの冬、寒さに負けずがんばれましたか?振り返ってみてください。
2 月 は 「 誠 実 さ 【 Honesty】 … 言 葉 や行 動 にま ご ころ を 込め る 」で し た。 誰 かに 相 談を
する場合に、みなさんはどのような人に相談相手になって欲しいと思いますか?きっと「信
頼できる人・しっかり聴いてくれる人・秘密を守ってくれる人…」などという意見が出る
でしょう。それはつまりは「誠実」な人ということになるのではないでしょうか。相談室
にいる私は常に信頼できる誠実な相談相手になろうと努力しています。この心がけは、相
談の場合にはもちろん大事なことですが、日常生活の中で人と人とがかかわっていくとき
に、最も基本的な心構えでもあると考えています。大安寺で学ぶみなさんには、常にこの
「誠実さ」を備えた人であって欲しいと思います。お互いが誠実に向き合い相手を尊重し
て意見を交換したり、支え合ったりすることが自然に誰からでもできるような集団に、み
なさんが成長できれば、学校はいつも笑顔と思いやりに溢れた楽しい場所になるでしょう。
そうして、そのような環境の中でますます学習にも集中でき、仲間と磨き競って成長して
いくことができるに違いありません。
そしていま、3月は「感謝【Gratitude】…自分をささえてくれる大切な人々に・自分を
とりまく自然・環境に」です。平成26年度ももう終わりです。年々月日の過ぎるのが早
くなるのは私が歳を取ったからでしょうが、みなさんも、振り返ってみればあっという間
の一年だったと思っているのではないかと思います。この一年のできごとを改めて振り返
り、様々な場面で関わり合ったすべての人や物に感謝をしてほしいと思います。いまの自
分は、いままで関わり合ってきたすべての人や、経験したすべての出来事の上に成り立っ
ていて、どの一つが欠けても、いまの自分にはたどり着けませんでした。中には経験した
くないような辛い出来事もあったかも知れませんが、その辛さを経験したからこそいまの
あなたがそこにいるのです。何も無駄ではありません。素直な心で、いまの自分につなが
るすべてのものに感謝の思いを持ってください。そして、新しい平成27年度にむけて、
感謝を形にするために自分にできることは何だろうと考えながら、充実した春休みを過ご
し て欲 しい と願っ てい ます 。
(岡 山大 安寺 中等教育学 校教育相談 室 086-255-5030)
日々精進,時々息抜き
教諭
小網
亜紀
私は平成 15 年に大安寺高等学校に赴任し,途中,大学院で勉強をするために休職
をしましたが,この大安寺で 10 年間過ごしました。先日は,表彰もしていただき,
保護者の方々にもたくさんのお祝いの言葉を頂きました。表彰していただいたことよ
りも,周りの方に温かい言葉をかけて頂いたことを何よりも嬉しく思っています。こ
れからも日々精進して参りたいと思います。今回はこの『相談室だより』で,今私が
教育相談に関して勉強していることについて紹介します。
今私が勉強しているのは,「解決志向ブリーフセラピー」という心理療法です。今
度私が研修を受ける,KIDS カウンセリング・システム研究会のホームページには「解
決志向ブリーフセラピー」について,次のように説明されています。
ブリーフセラピーとは、故ミルトン・エリクソン医学博士の治療実践に啓発を
うけて作られた一連の心理療法モデルのことで、わが国では「短期療法」と訳
されています。
その名のとおり、どうクライエントと関わることが毎回の面接を効果的にし、
結果として面接期間を短縮できるかにこだわって開発されたモデルです。
解決志向モデルは、従来の問題志向とは異なり、問題や病理、原因にこだわる
のではなく、クライエントのもっているリソース・解決像に焦点を当てる方法
です。そのため、真にクライエントを支え、クライエントの能力を引き出す、
安全で効果性の高いモデルとなっています。
私がこの心理療法に注目したのは,問題の原因を探ることにこだわるのではなく,
悩みを抱えている人自身が「こうなりたい」と考えている解決像に向けて支援するこ
とを重視しているということです。問題の原因は過去に起こったことです。過去に戻
って原因となる出来事を修正することはできないので,原因を探っただけでは問題解
決にはつながりにくいです。それよりも,悩みを抱えている人が将来どうなりたいか,
その理想像に向けて今自分ができることをきちんと認識していくことで,自分の持っ
ている能力を活かして前向きに頑張っていけるような支援をする方がはるかに有効で
あると思っています。
この心理療法については,3月21日・22日に東京で開催される研修会に参加す
ることにしています。20日,終業式が終わるやいなや東京に旅立ちます。そして,
勉強とともに,少しリフレッシュしてきたいと思います。今,国立新西洋美術館で開
催されている,
「ルーヴル美術館展」に行き,ちょっと贅沢して高いホテルに2連泊。
朝食が美味しいと評判のホテルです。楽しみです(笑)。また,この研修内容は次の
『相談室だより』でご報告します。
(こあみあき
教育相談係
4年国語科)
支え合う心(Peer Support Mind)を育てる
大安寺中等教育学校の「心の教育」について
教育相談室
大西
由美
私は昨年この学校に赴任してきましたが、大安寺には、生徒の自主性を育むとともに、
人間力・精神力を鍛えるたくさんの仕掛けが、日常の教育活動の中にも教育課程の中にも
多様に組み込まれていると思います。創立以来5年間、一期生を先頭に新しい学校を創っ
ていく中で、生徒指導・進路指導の二本柱を見えないところでしっかりと支える「心の教
育」についても、先生方が様々に工夫され、労を惜しまず取り組んでこられたのだなぁと
感じています。そして自分自身も経験を重ねながら後に続きたいと考えています。
先日私は「リーダー研修会」に参加しました。研修プログラムの一つである「ヒューマ
ン・コミュニケーション」を担当させていただき、参加した26名の生徒のみなさんと有
意義な時間を過ごすことができました。
●生徒主導の運営が見事
リーダー研修会では、集合・点呼・研修や講演の司会進行など、すべてを生徒主体で行
っていました。生徒会長の久志君をはじめとする一期生がグループリーダーを務め、下級
生を引っ張って溌剌と動いていました。下級生たちも周囲に目を配りそれぞれが自分のな
すべき事を考えて、主体的に活動にかかわろうとしており、見ていて頼もしく嬉しくなり
ました。指示を待って動くのではなく、いまどうするべきか、次に備えて何が必要か、う
まくいかなければ何がいけなかったのか…そういったことを、誰かに強制されてするので
はありませんから、自然と生徒自身が考えるようになります。先生方が辛抱強く見守りな
がら生徒主体で研修を動かすことはすばらしい人間教育だと感じました。
●ロールプレイを通じて「聴き方」の基本を学ぶ
私が担当した「ヒューマン・コミュニケーション」は前半は講義形式で、後半は体験的
な内容で構成しました。講義の中でも生徒のみなさんに演示をしてもらったりして楽しく
進めることができました。「聴く構え FELOR の法則」については以前にも紹介したことが
ありますが、今回は小学生にもわかる「あいうえおの約束」も学んでもらいました。コミ
ュニケーションの基本は「聴く」ことであることをしっかり確認し、リーダーの資質とし
て「人の話をしっかり聴けること」が必要であることに気付くことができていました。
「あいうえお」のお約束
あ…あいての目を見て
い…いっしょうけんめい
う…うなづきながら
え…えがおで
お…おしまいまでききましょう
コミュニケーションは「対話」です。
当事者の思いを互いに受けとめあうこと
です。そのためには、相手にわかりやす
く素直な言葉で自分の思いを伝えようとすることももちろん大切ですが、対話を円滑に進
め る た め に 一 番 大切 な のは 「 聴き 方 」で あ り、「 聴く 姿 勢」「 聴 く構 え 」で す 。悩 み の相
談に乗るといった特定の場面に限ったことではなく、親子の対話、同僚との対話、仲間と
の対話などあらゆる場面のコミュニケーションにおいて「聴き方」が鍵を握っているとい
うことをもういちど強調しておきたいと思います。
(写真は代表の生徒が「コミュニケーション不全」の例をシナリオにしたがって演じているところ)
●「仁」(思いやり)でつなぐプログラム
リーダー研修会には多様なプログラムが盛り込まれています。左に紹介したことの他に
「ひとのためにできること」と題した講演・生徒が大安寺の未来や中高生をとりまく社会
の現状などについて熱く議論し合い、これからの望ましい取り組みやあり方について考え
る班討議・翌朝の朝礼の「閑谷」をお題にした短歌スタンツ・そして国宝の閑谷学校講堂
での講堂学習などです。私は生徒のみなさんとともにこのすべての内容を体験しました。
そして、リーダーを育てるプログラムの全体が「大安仁」の「仁」の心で一貫しているこ
とを実感しました。
講演で伝えられたメッセージは「信頼・情熱・信念 欲を語らず夢を語ろう」、そして
「義を見てせざるは勇なきなり」でした。それを受けて、班討議では「中等完成年度の準
備について」「目標と課題、問題点と解決策を考える」「実行計画を立てる」「スマホにつ
いて」「マナーについて」を各班のテーマとして、全員が積極的に話し、そして積極的に
「聴く」姿が見られました。短歌スタンツでは班で力を合わせて考えた「閑谷」の歌が披
露され、和やかな雰囲気に包まれました。また講堂学習では黙想で心を鎮めて自分に向き
合う中で「之に先んじ之を労す」「徳は孤ならず、必ず隣あり」などの論語の章句を講堂
で朗唱しながら、ひとのために何かをなす
には、率先して考えて動き労を惜しまず働
くこと、心を込めて取り組んでいれば必ず
力を添えてくれる仲間が集まってくるとい
うこと、そして、評価を期待するのではな
く思いやりから行動を起こすことの大切さ
を話していただきました。
●生徒の立てた実行計画
研 修 で 学 ん だ こ と 考 え た こ と を も と に、
大安寺の「仁」の使者としてできるサポー
ト活動を考えました。みんなが学校を好き
になり、みんなが行きたくなる学校にする
(講堂学習の様子 講堂の床はピカピカ)
ために彼らが考えた取り組みの一部を紹介
します。
☆積極的にあいさつを自分から明るく元気に相手を見てする。
☆学年に関係なく困っている生徒がいたら声をかけて手助けする。
☆黒板を毎時間きれいにして気持ちよく授業を受けられるようにする。
☆人の意見を聴くときは、相手に正面から向き合って積極的に聴く。
☆生徒のため学校のために(ひとのために)なることをいつも考えて行動したい。
☆困っている人がいたときに一緒に考えたり相談に乗ったりする人を増やしたい。
☆自転車通学のマナーをまずは自分が意識する。
☆周りをよくみて忙しい人のサポートをする。
☆CTや総学の時間に「思いやり」について話し合う機会を増やす。
☆班討議や意見交換をクラスでも行い「大安寺」のあるべき姿を6学年で考える。
☆異学年や地域の方々と交流できる取り組みを考える。
たくさんの生徒がこのようなことを心がけて生活したら、学校は間違いなくあたたかく受
容的な風土に変化していくと思います。取り組むことで愛校心を育てたいと書いている生
徒もいました。頼もしい限りです。頑張って活動を実践して欲しいと願っています。
●おわりに
大安寺の「心の教育」の精髄が「大安仁」という言葉に集約されています。教育相談室
も来年再来年の「心の教育」がよりよくなって行くように、先生方と力を合わせて中等教
育学校ならではのシステムづくりに力を注ぎ、支え合う心(Peer Support Mind)を育てる取
り組みを、笑顔で一所懸命進めていこうと思います。(おおにしゆみ 教育相談室長 5年国語科)