6: 失業とインフレーション/デフレーション 失業率 労働力(labor force):「働いている人・働きたいと思っている人」を指す。 失業(unemployment):就業する意思と能力がある人が生産活動に従事してい ないことを指す。 日本の就業状態の区分 (2008年6月 単位:万人) ──────調査でのとらえ方──── ───────結果表の表し方──── ┌── 主に仕事 5424──┐ ├通学のかたわらに仕事 120┼ 従業者 ┐ 調査期間 ├家事などのかたわらに仕事┘ 6346│ 802 中に少し ┤ ├就業者┐ 6451├労働力人口┐ でも仕事 │ 105 │ 6716│ 15歳以 をしたか │ ┌仕事を休んでいた 休業者 ┘ │ │ ├仕事を探していた 完全失業者 265┘ ├ 上人口 11049 │ │ │ └仕事をし ┼ 通 学 689 ┐ │ 4330 なかった├ 家 事 1683 ┼ ・・・・・・・・・非労働力人口 ┘ └その他(高齢者など)┘ 1958 就業状態不詳 3 マクロ経済学(Ⅱ) 総務省統計局「労働力調査」:http://www.stat.go.jp/data/roudou/index.htm 1 6: 失業とインフレーション/デフレーション 失業率 労働力(labor force):「働いている人・働きたいと思っている人」を指す。 失業(unemployment):就業する意思と能力がある人が生産活動に従事してい ないことを指す。 失業率(unemployment rate):就職しておらず求職活動をしている人数の労働 力人口に対する比率である。 失業者数 失業者数 失業率 100% 100% 労働力人口 就業者数 失業者数 (2008年6月の)失業率 = 完全失業者 265万人 / 労働人口 6716万人 = 3.9% マクロ経済学(Ⅱ) 2 6: 失業とインフレーション/デフレーション 失業率 失業率(unemployment rate):就職しておらず求職活動をしている人数の労働 力人口に対する比率である。 10 8 6 4 2 日本 マクロ経済学(Ⅱ) 2003 2001 1999 1997 1995 1993 1991 1989 1987 1985 1983 1981 1979 1977 1975 1973 1971 1969 0 2007 12 失業統計は それぞれの国で 少しずつ異なっ た方法により集 められ,厳密に いえば「失業率」 の定義は国ごと に異なる。 それでも日本 は 1975 ~ 95 年 の間に低い水準 にあった。これ は日本的な終身 (年) 雇用の慣行など によるものと考 えられる。 アメリカ 2005 失 業 率 の 国 際 比 較 % 14 イギリス ドイツ フランス データ:LABORSTA http://laborsta.ilo.org/default.html など 3 6: 失業とインフレーション/デフレーション 失業率 失業(unemployment):就業する意思と能力がある人が生産活動に従事してい ないことを指す。 日本の失業率が低くなるもう一つの理由 失業率(unemployment rate):就職しておらず求職活動をしている人数の労働 力人口に対する比率である。 失業率 失業者数 労働力人口 就業者数 就業者数 1 労働力人口 労働力人口 労働力人口 失業した人が失業プールに留まらず,就職の希望を持ちながらも職探しをして もどうせ「適当な仕事がありそうもない」とあきらめた人たちが,非労働力人口化 され,その結果,就職者数が減少したとき,労働人口も減少するので,統計され た失業率の上昇は抑えられることになった。 就職の希望を持ちながらも職探しをあきらめ,非労働人口化している人口が経済成長 率とは逆相関をしている。 マクロ経済学(Ⅱ) 4 6: 失業とインフレーション/デフレーション 「摩擦的失業」・「自然失業」と「完全雇用」 労働市場における「均衡」をどのように定義するにせよ,「均衡」におけて失業 率がゼロになると考える経済学者はいない。 その理由は,労働市場は地域,職種,労働者の年齢・性別・教育水準など 様々な要因によって分断され,情報が著しく不完全だからである。分断された労 働市場においては,超過供給と超過需要が恒常的に共存している。 ベバリッジ曲線 u: 「失業率」,超過供給を表す指標 v: 「欠員率」,超過需要を表す指標 vが低いときに,uは高くなり,逆にv が高いとにはuが低くなるという傾向 を持ちながらも,一般的にu,vが共存 している。 労働市場の分断,そして個々の市 場の異質,さらに情報の不完全にな るほど,ベバリッジ曲線は右上方向 マクロ経済学(Ⅱ) に移る。 u 0 u-v曲線(ベバリッジ曲線) v 5 6: 失業とインフレーション/デフレーション 「摩擦的失業」・「自然失業」と「完全雇用」 地域,職種,労働者の年齢・性別・教育水準などのミスマッチによって生じる失 業を摩擦的失業(frictional unemployment)という。 「摩擦的失業」は,労働市場 がマクロ的な意味で均衡しているときにも,即ち完全雇用状態においても存在す る失業である。 摩擦的失業の計測 ベバリッジ曲線上で,失業率uと欠員率vが等しくなるようなuを「摩擦的失業 u 率」と定義する。 u-v曲線(ベバリッジ曲線) ベバリッジ曲線が東北方向にシフト する場合に, uとvが共に上昇し,摩 擦的失業が増大する。 u* マクロ経済学(Ⅱ) 0 v 6 6: 失業とインフレーション/デフレーション 「摩擦的失業」・「自然失業」と「完全雇用」 地域,職種,労働者の年齢・性別・教育水準などのミスマッチによって生じる失 業を摩擦的失業(frictional unemployment)という。 「摩擦的失業」は,労働市場 がマクロ的な意味で均衡しているときにも,即ち完全雇用状態においても存在す る失業である。 摩擦的失業の計測 ベバリッジ曲線上で,失業率uと欠員率vが等しくなるようなuを「摩擦的失業 u 率」と定義する。 u-v曲線(ベバリッジ曲線) ベバリッジ曲線が東北方向にシフト する場合に, uとvが共に上昇し,摩 擦的失業が増大する。 1つのベバリッジ曲線上で, u > v u* ⇒ 需要不足による失業 1990年代後半の日本の失業率上 昇の主因は,ミスマッチというより需 要不足にあったと見られる(教科書 0 p.166の図6-5参照)。 マクロ経済学(Ⅱ) v 7 6: 失業とインフレーション/デフレーション 「摩擦的失業」・「自然失業」と「完全雇用」 フリードマンの考え方 労働者にとって「職探しは一種の「投資」である。失業者はそれがどれだけ不 本意な職であるにせよ,ともかくいま職に就けば得られるであろう「収入」(非金 銭的な要素も含む広い意味での「収入」)犠牲にして,将来よりよい「収入」を得る ころを目指し職探しを行っている。こうした就職活動は,労働の部門間再分配が 不完全な情報の下で行われる以上,必要不可欠な「投資」である。「収入」の限 界生産に等しい限り,この「投資」は労働者本人によって望ましいだけではなく, 限界生産の高い部門(あるいは職)に労働が移動するという意味で,社会的にも 望ましい「投資」になる。 フリードマン氏は世界各国の経済政策に多大な影響を与え た米国の代表的な経済学者である。財政ではなく,金融政策を 経済政策の中で最も重視する「マネタリズム」を提唱した。金融 理論などへの功績で,1976年にノーベル経済学賞を受賞した。 著書は『選択の自由』,『資本主義と自由』などがある。 マクロ経済学(Ⅱ) Milton Friedman 1912~2006 8 6: 失業とインフレーション/デフレーション 「摩擦的失業」・「自然失業」と「完全雇用」 フリードマンの考え方 労働者にとって「職探しは一種の「投資」である。失業者はそれがどれだけ不 本意な職であるにせよ,ともかくいま職に就けば得られるであろう「収入」(非金 銭的な要素も含む広い意味での「収入」)犠牲にして,将来よりよい「収入」を得る ころを目指し職探しを行っている。こうした就職活動は,労働の部門間再分配が 不完全な情報の下で行われる以上,必要不可欠な「投資」である。「収入」の限 界生産に等しい限り,この「投資」は労働者本人によって望ましいだけではなく, 限界生産の高い部門(あるいは職)に労働が移動するという意味で,社会的にも 望ましい「投資」になる。 労働者が「合理的」に就職活動を行う結果生じる失業を「自然失業(natural unemployment)」,その場合の失業率を自然失業率と名づけられる。 失業率が「自然失業率」より低くなることは,労働という生産要素の効率的配 分という観点からみて望ましくない。「自然失業率」は,資源の最適配分を実現す る失業率なのである。 マクロ経済学(Ⅱ) 9 6: 失業とインフレーション/デフレーション 「摩擦的失業」・「自然失業」と「完全雇用」 「自然失業率」の水準の依存要因: 自然失業率の 労働市場の分断 分断された労働市場間の移動コスト 情報の完全性 労働の移動を必要とならしめる「ミクロ的」な技術・需要の変化の頻繁度 ジョブ・サーチ・コスト 例えば: 失業保険の給付条件の緩和 → ジョブ・サーチ・コスト低下 → 求職期間長 期化する → 失業率上昇 若年ないし女性労働者の移動コストが低い → 転職率が高い → 労働人 口に占める若年・女性労働者の比率が高くなると「自然失業率」は上昇する。 「自然失業率」を低くする政策: 失業保険制度の改革,労働者の転職を容易にする(職業訓練),労働市 場に関する情報システムの整備など。 マクロ経済学(Ⅱ) 10 6: 失業とインフレーション/デフレーション 「摩擦的失業」・「自然失業」と「完全雇用」 失業率の変動について 失業率は,景気がよく経済成長率が高いときに低くなり,「摩擦的失業率」 ないし「自然失業率」に近づくが,不況により成長率が低いときに,「自然失業 率」をはるかに上回る水準に達する。(以下簡単化のために,「摩擦的失業率」・ 「自然失業率」をゼロと仮定して説明する。) IS/LMモデル i IS/LMモデル Y 労働供給 (労働力人口) Y=f(L) L LM 求職をあきらめる Y Y* Ls 失業率 u IS 生産関数 Y Y=f(L) u=(Ls-L)/Ls マクロ経済学(Ⅱ) 失業は財・サービスに対する「需 要不足」を原因とするものである。 L* L 11 6: 失業とインフレーション/デフレーション セーフティー・ネットとしての失業保険制度 失業は,失業した人が経済的損失を被り,家族を含めて高いストレスを感じる ことになる。失業者のそうした困難を緩和するために,多くの国で失業保険制度 が整備されている。 失業保険制度は,人々が安心して経済活動を行うことができるようにするため の一種の社会的セーフティー・ネット(安全網)である。 日本の制度: 雇用保険法(詳細は厚生労働省のホームページを参照) 一定の条件の下で,離 職前賃金の60~80%が 90~360日間支給される。 雇用保険法のほかに, ミスマッチを解消するため の「労働移動支援助成 金」などの助成金制度も ある。(詳細はここを参照) マクロ経済学(Ⅱ) 12 出典: 「平成20版 労働白書」厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/index.html 6: 失業とインフレーション/デフレーション セーフティー・ネットとしての失業保険制度 失業保険制度は国によって異なる。 先進主要国の制度については,厚生労働省の「海外情勢報告」などの比較 報告がある。 マクロ経済学(Ⅱ) 出典: 「2005~2006年 海外情勢報告」厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/index.html13
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