6: 失業とインフレーション/デフレーション フィリップス曲線 p a(w g L ) (1 a)( x p*R g R ) 賃金の上昇率 > 労働生産性の上昇率 ⇒ インフレーションが発生する w > gL ⇒ p>0 フィリップス曲線(the Philips curve): 賃金上昇率 w と失業率 u の間の関係を表 す曲線である。 u↑ → w↓ w (%) 日本のフィリップス曲線(1966~2003) 35 u↓ → w↑ 失 業 率 u は 経 済 成 30 25 長率が高い好況期に 20 低くなるから,そうした 15 時 期 に 賃 金 上 昇 率 w 10 は高くなる。インフレー 5 ション p も好況期に高 0 くな る 傾 向 がある ( 逆 -5 は逆)。 -10 マクロ経済学(Ⅱ) 資料: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査報告」 等 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 u (%) 5.5 1 6: 失業とインフレーション/デフレーション フィリップス曲線 p a(w g L ) (1 a)( x p*R g R ) 賃金の上昇率 > 労働生産性の上昇率 ⇒ インフレーションが発生する w > gL ⇒ p>0 フィリップス曲線(the Philips curve): 賃金上昇率 w と失業率 u の間の関係を表 す曲線である。 u↑ → w↓ w (%) 日本のフィリップス曲線(1966~2003) 35 すでにインフレーションが発生している場合には,失 u↓ → w↑ 資料: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査報告」 等 失 業 率 u は 経 済 成 30業率とは独立に,過去のインフレーション(あるいは将 25 長率が高い好況期に 来のインフレーションに対する予想)も今期の賃金上 20 低くなるから,そうした 15 時 期 に 賃 金 上 昇 率 w 10昇率に影響を与えるであろう。この場合, p↑→ w↑ → は高くなる。インフレー 5p↑ のような「悪循環」が生まれる可能性がある。 ション p も好況期に高 0 (この点については,第7章で説明する。) くな る 傾 向 がある ( 逆 -5 は逆)。 -10 u (%) マクロ経済学(Ⅱ) 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 2 6: 失業とインフレーション/デフレーション フィリップス曲線 p a(w g L ) (1 a)( x p*R g R ) 賃金の上昇率 > 労働生産性の上昇率 ⇒ インフレーションが発生する w > gL ⇒ p>0 CPIとWPIとの間の格差について 賃金の上昇率 w が労働生産性の上昇率 gL を上回らなければ,インフレーショ ンは生じない。 電気機械産業における技術進歩と美容院のサービスを比べてみれば分かる ように,製造業の労働生産性 gL製造業 は非製造業の労働生産性 gL非製造業 よりも はるかに高い。しかし両産業の賃金上昇率 w はほとんど大きな格差がない。 高度成長期に: w ≒ gL製造業 → WPI はほとんどインフレーションが生じなかった w > gL非製造業 → CPI は持続的なインフレーションが生じた 消費者物価CPIのこうしたインフレーションは「生産性格差インフレーション」と 3 呼ばれる。 6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 p a(w g L ) (1 a)( x p*R g R ) インフレーションを決定する第2の要因は,原材料価格ePR*の変化である。 「購買力平価」: 「価格」の変化→「為替レート」の変化 という因果関係 現実の経済では短期的に: 「為替レート」の変化→「国内価格」という因果関係 具体例: 1985-86年,為替レート221円/ドルから160円/ドルへと28%円高したによって, WPIが10%ほど下落した。( 「為替レート」の変化→「国内価格」の変化) 1973年1月に2.6ドル/バーレルの原油価格は,74年1月に4倍の11.7ドル/バーレル まで急上昇した。さらに1978-80年,再び14ドル/バーレルから35ドル/バーレルまで急上昇 した。いずれの場合も,為替レートが大きく変動していないが,WPIが急上昇した。 (「原材料価格」の変化→「国内価格」の変化) スタグフレーション(stagflation) インフレーションが加速化の同時に生産水準(実質GDP)も低下することにつ いて,「不況」(スタグネーション)と「インフレーション」を合わせた「スタグフレーショ ン」と呼ぶ。 マクロ経済学(Ⅱ) 4 6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 総需要と総供給 物価Pの変化を考慮に入れて,貨幣市場の均衡を表わすLM式 M/P=L(i, Y) マネーサプライMと政府支出Gが一定の下で P↓ → M/P↑ → LM曲線は右下へシフトする P↑ → M/P↓ → LM曲線は左上へシフトする Y0 < Y1 i i LM i1 i1 i0 i0 L=L(Y1, i, W) L=L(Y0, i, W) マクロ経済学(Ⅱ) 0 M/P M/P L 0 Y0 Y1 Y 6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 総需要と総供給 物価Pの変化を考慮に入れて,貨幣市場の均衡を表わすLM式 M/P=L(i, Y) P P0 マネーサプライMと政府支出Gが一定の下で P↓ → M/P↑ → LM曲線は右下へシフトする P1 P↑ → M/P↓ → LM曲線は左上へシフトする IS/LMモデルにおいて P↓ → LM曲線は右下へシフトする → Y↑ AD 0 Y i LM 総需要曲線ADは右下がりとなる。 IS マクロ経済学(Ⅱ) 0 Y0 Y1 Y 6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 総需要と総供給 物価Pの変化を考慮に入れて,貨幣市場の均衡を表わすLM式 M/P=L(i, Y) P P0 マネーサプライMと政府支出Gが一定の下で P↓ → M/P↑ → LM曲線は右下へシフトする P1 P↑ → M/P↓ → LM曲線は左上へシフトする IS/LMモデルにおいて P↓ → LM曲線は右下へシフトする → Y↑ AD 0 Y i LM 総需要曲線ADは右下がりとなる。 「需要ショック」 M,Gあるいは投資の期待利潤率reが変化した 場合,IS曲線はシフトする。 G↑→IS曲線右へシフトする → 総需要曲線AD右へシフトする マクロ経済学(Ⅱ) AD' IS' IS 0 Y0 Y1 Y 6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 総需要と総供給 Df(R)/DR マクロ経済のサプライ・サイド 生産関数: Y=f(R) 産出量Yは投入する原材料Rの増加関数 企業利潤最大化の条件 Rの限界生産力価値=Rの価格 (DY/DR)・P=PR (Df(R)/DR)・P=PR Df(R)/DR=PR/P 0 R Y Y=f(R) マクロ経済学(Ⅱ) 0 R0 R1 R 6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 総需要と総供給 Df(R)/DR マクロ経済のサプライ・サイド 生産関数: Y=f(R) PR/P0 産出量Yは投入する原材料Rの増加関数 企業利潤最大化の条件 PR/P1 Rの限界生産力価値=Rの価格 (DY/DR)・P=PR 0 (Df(R)/DR)・P=PR Df(R)/DR=PR/P 原材料価格PRを外生としたとき P↑→ PR/P↓→R↑→Y↑ 国内製品価格Pが上昇すると,企業にとって 原材料が「実質的に割安」となるので,より多く のRを投入し,生産量Yは上昇する。 マクロ経済学(Ⅱ) R Y Y1 Y=f(R) Y0 0 R0 R1 R 6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 総需要と総供給 マクロ経済のサプライ・サイド 生産関数: Y=f(R) 産出量Yは投入する原材料Rの増加関数 企業利潤最大化の条件 Rの限界生産力価値=Rの価格 (DY/DR)・P=PR (Df(R)/DR)・P=PR Df(R)/DR=PR/P 原材料価格PRを外生としたとき P↑→ PR/P↓→R↑→Y↑ 国内製品価格Pが上昇すると,企業にとって 原材料が「実質的に割安」となるので,より多く のRを投入し,生産量Yは上昇する。 総供給曲線ASは右上がりである。 P AS P1 P0 0 Y0 Y1 Y 6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 総需要と総供給 総供給曲線ASは右上がりである。 総需要曲線ADは右下がりである。 需要・供給の両方を考慮したときのマクロ経済の均衡はAD,ASの交点で表さ れる。(Y*,P*) 「需要ショック」によって経済の変動が生じる ときに,総需要曲線ADはシフトする。 例えば,M,Gあるいはre が上昇すると,AD 曲線は右上へシフトする。 → Y↑,P↑ P AS これは「フィリップス曲線」に表れているように, 好況のときに, u↓,w↑P↑,不況のときにu↑, * P' w↓P↓。 AD' P* AD 0 Y* Y *' Y 6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 総需要と総供給 総供給曲線ASは右上がりである。 総需要曲線ADは右下がりである。 需要・供給の両方を考慮したときのマクロ経済の均衡はAD,ASの交点で表さ れる。(Y*,P*) 「供給ショック」によって経済の変動が生じる ときに,総供給曲線ASはシフトする。 AS' 例えば,PRが上昇すると,Pが変わらなくても P PR/Pは上昇する。AS曲線は左上へシフトする。 → Y↓,P↑ 「スタグフレーション」が発生する。 「スタグフレーション」は「需要ショック」ではな く,「サプライ・ショック」によって引き起こされる 現象である。 AS P*' P* AD 0 Y *' Y* Y 6: 失業とインフレーション/デフレーション 原材料価格の変化―「供給ショック」と「需要ショック」 まとめ p a(w g L ) (1 a)( x p*R g R ) 「緩やか」なインフレーションの原因のすべてを「過大なマネーサプライ」に帰す ることはできない。 インフレーションによりPが上昇したときに,Mが同率で増大しなければ「実質マ ネーサプライM/P」は減少する。AD曲線は左へシフトし,Yが下落する。 こうして経済活動水準が抑えられると,やがてフィリップス曲線を通して,実質賃 金w/Pの上昇を抑制される。 Mがインフレーションを「追認」しない限り,インフレー AS' ションは「不況」を通して自らを治癒する作用を持つ。 LM曲線左へシフト IS/LMモデル P Y↓ サプライショック 金 融 M/P↓ 政 M↑ 策 u↑ フィリップス曲線 gL, w↑↑ インフレーション PR,gR↑ PR*↑, e↑ AS AD AD' P↑↑ 0 Y
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