1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 国民経済計算 国内総生産(GDP)Gross Domestic Product:ある一定期間に,分析の対 象とされる「ある国の経済において」「生産された」,すべての財・サービスの 付加価値の「総額」である。 「国内」とはその国の領土をいうが,その場合領土とは,その国に存在す る外国大使館,領事館,外国の軍事基地などを除いたものに,外国に所在 するその国の大使館,領事館および軍事基地などを加えたものをいう。 国民総所得(GNI)Gross National Income:ある一定期間に,分析の対 象とされる「ある国の国民」の所得を足し合わせた「総額」(=GNP)である。 「国民」とはその国の居住者を指す。したがって外国国籍であっても単な る一時的な業務出張ではなく永続的勤務に従事する目的でその国に長期(1 年以上)居住する個人や家族は「国民」の中に含められる。企業の場合も同 様で,その国で継続して事業を行っているものは居住者と定義する。 マクロ経済学(Ⅰ) わが国では長く国民総生産(GNP)Gross National Incomeが用いられ てきたが,現在では国際的に「生産」についてはGDPが用いられている。 1 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 国民経済計算 GDPとGNIの間の関係 GNI = GDP + 海外からの所得の受取 - 海外への所得の支払 = GDP + 海外からの「純」要素所得受け取り 要素所得:労働,資本などの生産要素を提供した見返りとして 得られる所得のことで,海外で稼いだ所得や海外での投資に対 する配当,金利受け取りなどのことをいう。 近年,世界がグローバル化し,海外に所有する資産が増えてく るにつれて,両者の相違は次第に無視しえないものになったとは いえ,それでも両者の乖離はまだ大きくない。 SNAの見方: http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/93snapamph/top.html SNA(国民経済計算): http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html マクロ経済学(Ⅰ) 2 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 国民経済計算 GDPの原則 ① GDPに含まれる財・サービスは,原則として市場で取引されたもの に限られる。ただし,例外として,農家の自家消費用の農産物や持家の 帰属家賃といった帰属計算にかかわるものと警察や教育などの公共 サービスが含まれる。 ② GDPに含まれる財・サービスは,原則としてその年に生み出された もののみを計上する。 ③ 重複計算を避けるために,GDP統計は原則として各生産段階にお ける付加価値額value added(付加価値 = 産出総額 - 中間投入総 額 ) を 計 上 す る 。 即 ち 特 定 期 間 に つ く り 出 さ れ た 最 終 生 産 物 final productの価値額の統計であり,それはすべての生産段階で生み出さ れた付加価値総額であり,共通の貨幣価値額に還元されて合計される。 マクロ経済学(Ⅰ) 3 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 国民経済計算 GDP計算の仮説例 パン280兆円 GDP=「付加価値」の総額 農 家 =60兆円+90兆円+30兆円=180兆円 製粉所 小麦 GDP=生産総額-中間投入総額 -純輸入額小麦粉 200兆円 80兆円 =560兆円 - 280兆円- 100兆円=180兆円 GDP=最終生産物総額-純輸入額 石油20兆円=280兆円- 100兆円=180兆円 石油30兆円 マクロ経済学(Ⅰ) パン屋 石油50兆円 生産主体 生産額 中間投入 石油輸入 付加価値 農 家 80兆円 0 兆円 20兆円 60兆円 製粉所 200兆円 80兆円 30兆円 90兆円 パン屋 280兆円 200兆円 50兆円 30兆円 合 計 560兆円 280兆円 100兆円 180兆円 4 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 国民経済計算 GDPは市場で取引されたすべての生産物から中間投入 物ないし中間消費を差し引いた「付加価値」を足し合わせた 総額である。それは 四半期ないし1年間に,一国経済が生 み出した総生産物(付加価値)である。 それら生産されたものは必ず「分配」され,また何らかの形 で「使われ」(つまり需要ないし支出され)なければならない。 GDP統計は,付加価値の「生産」のみならず,「分配」と 「支出」面についても経済のフローの動きを記述している。 マクロ経済学(Ⅰ) 5 国民経済計算 支出面 生産面 分配面 マクロ経済学(Ⅰ) 6 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 国民経済計算 分配面から見たGDP 生み出された「付加価値」とは,見方をかえれば生産に寄与し た生産要素が得る所得にほかならない。 生 産 要 素 労働 → 賃金(雇用者所得として計上) 資本 → 利潤(経営余剰として計上) 土地 → 地代(経営余剰として計上) 要 素 所 得 資本はその使用過程で減耗(depreciation)される。この減耗分は固 定資本減耗として計上される。 国内純生産(NDP)Net Domestic Product: NDP = GDP - 固定資本減耗 固定資本減耗:単に生産活動に基づく物理的な摩擦や損傷を意味するば かりではなく,技術革新による新型機械の出現や生産物に対する需要の移り 変わりによって現存の機械の価値が減少することをも意味している。 マクロ経済学(Ⅰ) 7 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 国民経済計算 分配面から見たGDP 狭義の国民所得(NI)National Income: 民間の各主体が生産への寄与の代償として受け取る所得の合計のことで,要 素費用で評価された純生産額である。分配国民所得とも呼ばれる。(キャピタル・ ゲインcapital gainsは資産価値の増加分であり,生産額と異なるものであるので 含んでいない。企業の利潤は含んでいる。) NI = GNI -固定資本減耗-( 間接税 - 補助金 ) = 雇用者所得+営業余剰 個人所得(PI)Personal Income: 家計が実際に受け取る所得総額のことである。 PI = NI -(法人直接税 + 法人純貯蓄 + 社会補償負担金 など - 移転所得) 個人可処分所得(PDI)Personal Disposable Income: 家計が究極的に自分の選択に応じて自由に処分できる所得であり,それが個 人消費に充てられると同時に,その残りは個人貯蓄を形成する。 PDI = PI - 個人直接税 8 マクロ経済学(Ⅰ) 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 国民経済計算 分配面から見たGDP 狭義の国民所得(NI)National Income: NI = GNI -固定資本減耗-( 間接税 - 補助金 ) = 雇用者所得+営業余剰 この式は,資本減耗分と間接税と別にした生産の果実(国民所得)が労 働と資本(および土地)という生産要素にどのように分配されるかを表して いる。 労働分配率 = 雇用者所得 / 国民所得(NI) 労働分配率の問題点: 個人企業の営業余剰に営業主の「労働所得」が混在している。また雇用 者所得に含まれる公務員の給料は市場で取引されないため,その価値を 帰属計算している場合が多い。こうした問題点を考慮にいれ,国民経済計 算を用いて,様々な労働分配率が計算されていることが多い。 マクロ経済学(Ⅰ) 9 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 国民経済計算 支出面から見たGDP 一定期間に生み出された財・サービスが何らかの形で需要される という需要の側面は,国民経済計算では「支出」として表される。 支出(需要)項目: (1) 家計の消費(consumption) (2) 民間の投資(investment) (3) 政府の支出(government expenditures) (4) 輸出と輸入(exports and imports) マクロ経済学(Ⅰ) 10 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 国民経済計算 支出面から見たGDP (1) 家計の消費(consumption):一定期間のうちに便益・サービスを享 受しつくして後に何も残らないような財・サービスの需要である。 (2) 民間の投資(investment):一定期間のうちに耐久性を持ち便益・ サービスを将来何期間にも渡って提供し続ける財に対する需要である。 国民経済計算の「投資」は土地を含まず,機械の購入や工場の建設あるいは 積み増しを意味している。投資は資本ストックの増加である。 期末の資本ストック = 期初の資本ストック + その期間の投資 民 間 の 投 資 に は , ( 1 ) 設 備 投 資 fixed investment ( 2 ) 住 宅 投 資 housing investment (3)在庫投資inventory investment がある。 国内総支出=民間消費+民間投資+政府支出+輸出-輸入 Y = C + I + G + X - M マクロ経済学(Ⅰ) 11 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 国民経済計算 支出面から見たGDP マクロ経済の動きの把握: ① GDPの成長率 GDPの成長率 = (今期のGDP - 前期のGDP) / 前期のGDP =( Yt - Yt-1 ) / Yt-1 GDPの成長率 = DYt / Yt-1 計算例: 前期のGDPは98であったが,今期は107に上昇した。 Yt-1 = 98 ,Yt = 107 ,DYt=Yt-Yt-1=107-98=9 GDPの成長率 = DYt / Yt-1 =9/98=0.0918 =9.18% マクロ経済学(Ⅰ) 12 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 国民経済計算 支出面から見たGDP マクロ経済の動きの把握: ② 各需要項目の寄与度 前期: Yt-1= Ct-1+ It-1+ Gt-1+ (Xt-1- Mt-1) 今期: Yt = Ct + It + Gt + ( Xt - Mt ) 両期の差: DYt =DCt +DIt +DGt+D(Xt - Mt ) DYt / Yt-1 = DCt /Yt-1+DIt/Yt-1+DGt/Yt-1+D(Xt-Mt)/Yt-1 GDP 成長率 投資の 政府支出 純輸出 = 消費の + + + 寄与度 寄与度 の寄与度 の寄与度 DCt /Yt-1=( DCt /Ct-1)(Ct-1/Yt-1) 消費C 消費CのGDPに の成長率 占めるシェア マクロ経済学(Ⅰ) 13 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 国民経済計算 支出面から見たGDP マクロ経済の動きの把握: ② 各需要項目の寄与度 DYt / Yt-1 = DCt /Yt-1+DIt/Yt-1+DGt/Yt-1+D(Xt-Mt)/Yt-1 GDP 成長率 投資の 政府支出 純輸出 = 消費の + + + 寄与度 寄与度 の寄与度 の寄与度 実質 年度 国内総生産 (GDP) 民間最終 消費支出 2004 527,825.80 296,889.50 98,095.90 118,722.20 14,083.10 2005 540,400.60 302,473.10 102,041.10 119,218.50 17,039.60 -371.7 民間投資 政府支出 財貨・サービス 純輸出 開差 35.2 540400.60-527825.80 302473.10-296889.50 2005年度のGDP成長率= =2.38% 2005年度の民間消費の寄与度= =1.06% 527825.80 527825.80 マクロ経済学(Ⅰ) 14 実質GDPの増加率に対する寄与度(暦年) ( 国 支内 出総 側生 産 暦 年 ) 国 内 需 要 民 間 需 要 消民 費間 支最 出終 民 民 民 公 消政 間 設間 増間 的 費府 住 備企 加在 需 支最 宅 業 庫 要 出終 資公 公 本的 増的 形固 加在 成定 庫 単位: % 財 貨 の・ 純サ 輸 輸ー 出 出ビ ス 輸 入 1995 1.96 2.54 1.90 1.08 -0.25 0.43 0.55 0.64 0.60 0.05 0.00 -0.63 0.37 1.00 1996 2.75 3.28 2.34 1.42 0.59 0.23 0.11 0.94 0.45 0.46 0.04 -0.60 0.52 1.11 1997 1.57 0.53 1.08 0.42 -0.65 1.17 0.07 -0.54 0.12 -0.64 -0.02 0.96 1.00 0.05 1998 -2.05 -2.43 -2.38 -0.49 -0.67 -0.98 -0.19 -0.06 0.28 -0.32 -0.01 0.35 -0.27 -0.62 1999 -0.14 -0.02 -1.10 0.57 0.01 -0.62 -1.02 1.08 0.66 0.42 -0.01 -0.13 0.19 0.31 2000 2.86 2.37 2.35 0.43 0.04 1.03 0.85 0.01 0.72 -0.78 0.07 0.45 1.27 0.83 2001 0.18 1.01 0.73 0.92 -0.21 0.19 -0.16 0.27 0.51 -0.20 -0.03 -0.82 -0.76 0.06 2002 0.26 -0.44 -0.55 0.63 -0.15 -0.76 -0.28 0.11 0.42 -0.32 0.00 0.68 0.77 0.09 2003 1.41 0.76 1.02 0.23 -0.04 0.60 0.24 -0.26 0.42 -0.68 0.00 0.63 1.01 0.37 2004 2.74 1.91 2.06 0.92 0.07 0.79 0.31 -0.15 0.33 -0.50 0.01 0.84 1.64 0.80 2005 1.90 1.61 1.61 0.88 -0.05 0.95 -0.14 0.01 0.30 -0.30 0.02 0.31 0.91 0.60 2006 2.16 1.34 1.67 0.51 0.03 1.10 0.06 -0.32 0.05 -0.35 -0.01 0.83 1.33 0.50 データ: 内閣府ホームページ http://www.esri.cao.go.jp/index.html マクロ経済学(Ⅰ) 15 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 国民経済計算 支出面から見たGDP 実質G D P 成長率に対する寄与度(暦年) % マクロ経済学(Ⅰ) 民間需要 公的需要 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 4 3 2 1 0 -1 -2 -3 財貨・サービスの純輸出 16 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 国民経済計算 三面等価の原則 GDPは生産面から見ても,分配面から見ても,支出面から見てもす べて等しい価値額を示す。これは生産されたものが分配され支出され るという経済のフロー循環の帰結である。 生産面では中間投入総額を差し引いた後の付加価値総額は,生産 要素に支払われる対価(要素所得)の総額に等しい。一方,生産された ものは必ず需要(支出)される。 生産面 GDP 付加価値総額 = 産出総額 - 中間投入総額 分配面 GDI 雇用者所得 営業余剰 固定資本減耗 間接税 (控除)補助金 支出面 GDE マクロ経済学(Ⅰ) 民間消費(C ) 民間投資(I ) 政府支出(G ) 純輸出(X-M )17 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 売残り扱いと「三面等価」 国民所得統計における総供給と総需要は「約束事」によって常に等 しくしただけであり,統計上の総供給と総需要が一致しているからといっ て,現実の経済が「均衡状態」すなわち生産された商品がすべて計画 通りに売れる状態にあるわけではないのである。 国民経済計算においては,消費財と投資財の区別があくまで便宜 的なものであり,消費財の売れ残りが生じた場合,それが追加的な在 庫品になり,たちまち投資財として扱われ,投資項目の中で在庫品増 加(在庫投資ともいい)として計上される。 その在庫品増加は一般の計画通りの投資のような「意図した」投資 と,計画外の「意図せざる」在庫品増加がある。GDP統計はこれらの問 題を一切問わず,事後的な事実として記録するだけである。 しかし,経済学における「均衡」の概念にとっては,「意図した」在庫 投資と「意図せざる」在庫投資の区別は重要である。 マクロ経済学(Ⅰ) 18 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 三面等価の原則 日本の国内総生産と総支出勘定(2001年名目値) 分配面からの集計 項 目 単位:10億円 支出面からの集計 項 目 単位:10億円 277,134.8 1.7 民間最終消費支出 286,240.0 営業余剰・混合所得 85,955.5 1.8 政府最終消費支出 88,097.7 1.3 固定資本減耗 99,094.4 1.9 国内総固定資本形成 1.4 生産・輸入品に課される税 42,911.7 1.10 在庫品増加 4,124.0 1.11 財貨・サービスの輸出 52,567.0 6,483.0 1.12(控除)財貨・サービスの輸入 49,392.8 1.1 雇用者報酬 1.2 1.5 (控除)補助金 1.6 統計上の不突合 国内総生産 項 507,455.4 目 (参考)海外からの所得 (控除)海外に対する所得 国民総所得 マクロ経済学(Ⅰ) 単位:10億円 13,783.4 5,462.7 515,776.1 国内総支出 130,035.8 -92.4 507,455.4 生産面からの集計 項 産出額 目 単位:10億円 (1) 931,064.5 中間投入(2) 430,092.1 国内総生産(3) = (1) - (2) 500,972.4 19 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 三面等価の原則 平成12年(2000年)産業連関表 (取引基本表・13部門表) 単位:100万円 01 ~ 13 33 中間需要 52 41 支 民 消 間 家 消 費 計 支 費 外 出 支 出 消一 費般 支政 出府 42 国 内 需 要 合 計 45 46 47 在 庫 純 増 国 需 内 要 最 計 終 0 SUM(01:13) 91221 3874706 0 193481 773717 81124 0 4404490 0 36351 0 0 0 6294855 2925514 439404568 19171185 280990212 85706217 130012066 276672 97266 94610 19171185 1275384 271552 275589148 4670721 438433 96523734 1497231 425732 93350047 713713 58683 40039262 -179481 -2193 -5191484 SUM(35:40) 1286817 519481892 33+52 4212331 958886460 709985 372112882 1192207 500310707 51 52 55 56 国 内 生 産 額 国 内 総 支 出 最終需要 出 面 国 資 内 本 総 形 固 成 定 1558469 家計外消費支出 分 配 面 雇用者所得 粗 37 付 営業余剰 38 加 資本減耗引当 価 39 間接税(除関税) 値 40 (控除)経常補助金 36 40 輸 出 計 SUM(35:40) 33+41 72018 36351 20574 最 終 需 要 計 需 要 合 計 41+45 42+45 最 輸 部 控 終 入 門 除 需 計 計 要 -2118607 46+51 47+51 46-35+51 ~ ~ 35 38 ) 農林水産業 中 間 13 投 分類不明 入 33 内生部門計 01 37 国内の最終需要 内 生 部 門 計 分 類 ~ 不 明 36 ( 農 林 水 産 業 35 粗付加価値部門計 55 国内生産額 56 国内純生産(要素費用)57-38-(39+40) 57 国内総生産 マクロ経済学(Ⅰ) 52-35 4440841 516156352 955560920 56925 4461415 57486717 573643069 1013047637 -249084 -192159 4212331 -192159 -54161177 519481892 958886460 500310707 農業の生産額 各部門の農林水産業への需要額 付加価値率=付加価値 / 生産額 例: 農林水産業の付加価値率 =8074834 / 14369689=56.2% 出所: http://www.stat.go.jp/data/io/2000/zuhyou/sec013.xls 20 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 名目GDP(nominal GDP)と実質GDP(real GDP) 名目GDP: 各時点での市場価格で評価されたGDPである。名目GDPの変 化は物価水準の変化をも含んでいる。 実質GDP: 参照年(基準年)の価格で評価したGDPであり,異なった年に 経済で生産されたものを比較する上ではより適した尺度である。 名目GDPと実質GDPとの関係: 名目GDP 実質GDP GDPデフレーター 実質GDP成長率=名目GDP成長率-GDPデフレーターの変化率 マクロ経済学(Ⅰ) 21 名目GDP(nominal GDP)と実質GDP(real GDP) 2 ( 参0 照0 年1 )年 2 0 0 2 年 2 0 0 3 年 付加価値 付加価値 生産年の価格 で評価 参照年の価格 で評価 100 5,000 5,000 80 80 6,400 6,400 60 70 4,200 4,200 15,600 (名目GDP) 15,600 (実質GDP) 市場 価格 最終財 産出量 衣料品 50 食料品 住宅サービス 合 計 衣料品 60 90 5,400 4,500 食料品 80 100 8,000 8,000 住宅サービス 80 80 6,400 4,800 19,800 (名目GDP) 17,300 (実質GDP) 合 計 衣料品 70 80 5,600 4,000 食料品 70 110 7,700 8,800 住宅サービス 90 90 8,100 5,400 21,400 (名目GDP) 18,200 (実質GDP) 合 マクロ経済学(Ⅰ) 計 * 但し中間投入はゼロとする。 GDPデフレーター =名目GDP/実質GDP 100.0 114.5 117.6 22 名目GDP(nominal GDP)と実質GDP(real GDP) 名目GDP 名目GDP 成長率 実質GDP 実質GDP 成長率 GDPデフレーター GDPデフレーター 変化率 2001年 15,600 ― 15,600 ― 100.0 ― 2002年 19,800 26.92% 17,300 10.90% 114.5 14.50% 2003年 21,400 8.0 8% 18,200 5.20% 117.6 2.71% 名目GDP成長率2002 名目GDP2002 名目GDP2001 19,800 15,600 100% 100% 26.92% 名目GDP2001 15,600 名目GDP成長率2003 名目GDP2003 名目GDP2002 21,400 19,800 100% 100% 8.08% 名目GDP2002 19.800 マクロ経済学(Ⅰ) 23 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 貯蓄・投資バランス GDPは生産面から見ても,分配面から見ても,支出面から見ても すべて等しい価値額を示す。 〔生産面から見たGDP〕 ≡〔支出面から見たGDP〕 Y≡C+I+G+(X-M) Y≡C+I+(GC +GI )+(X-M) 民間最終消費支出 民間投資支出 政府最終消費支出 公的資本形成 マクロ経済学(Ⅰ) 輸出 輸入 経済全体のマクロ的な貯蓄の定義 : S=Y-C-GC 経済全体の総投資= I+GI +X-M ISバランス: S=Y-C-GC = I+GI +X-M 24 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 貯蓄・投資バランス ISバランス: S=Y-C-GC = I+GI +X-M 民間投資支出 =企業の設備投資 +家計・企業の住宅投資 +在庫投資 公的資本形成 広汎な社会資本 social capitalへの投資 純 輸 出 (対外純資産の蓄積) X-M > 0のとき,対外資産(ストック)が増加 X-M < 0のとき,対外資産(ストック)が減少 マクロ経済学(Ⅰ) マクロ経済全体をとると,総貯蓄は総投資に等しい。つまり 個々の家計や企業,あるいはそれらを集計した家計部門や企業 部門については貯蓄を投資は必ずしも等しくなくても,そうした貯 蓄・投資の不均衡はマクロ的に打ち消し合っている。 25 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 貯蓄・投資バランス GDPは生産面から見ても,分配面から見ても,支出面から見ても すべて等しい価値額を示す。 〔生産面から見たGDP〕Y≡〔分配面から見たGDP〕 C+S+T 〔生産面から見たGDP〕Y≡〔支出面から見たGDP〕 C+I+G+(X-M) 0≡S-I+T-G-(X-M)≡S-I+T-(GC +GI )-(X-M) S-I≡(G -T)+ (X-M) S-I≡(G -T) + NX 民間貯 財政赤字 蓄超過 貿易・サービス 収支黒字 民間セクターにおける貯蓄超過は,政府部門の投資超過(財政赤 字)と海外部門の投資超過(貿易・サービス収支黒字)の和に等しい。 マクロ経済学(Ⅰ) 26 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 国民貸借対照表 フロー取引の結果として,あるいは資産価格の変動の結果として残る ストックを記述する勘定は国民貸借対照表である。日本経済全体の資 産目録である。金融資産・負債のバランス・シートだけでなく,住宅,ビ ル,機械設備,社会資本などの生産資産,土地,森林など有形資産の 価値が評価される。 兆円 国民総資産の推移 8000 7000 6000 5000 4000 3000 2000 1000 1969 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 0 マクロ経済学(Ⅰ) 〔資料〕 内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部 「国民経済計算年報」 年 27 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 国民貸借対照表 フローを表すGDP統計が,ストックを表す国民貸借対照表と 密接な関係がある。 今年末の総資産 =前年末の総資産+今年の総貯蓄+資産価格の変化分 GDP統計の投資に等しい 『国民貸借対照表』の「調整勘定」 マクロ経済学(Ⅰ) 28 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 GDP統計の限界 経済厚生economic welfareの尺度としては ,GDPよ りはNDP (Net Domestic Product)国内純生産が,名目値よりは実質値が, 総額よりは「1人当たり」の概念が,さらに「国内」よりは「国民」概念 が適当である。 しかし,こうした点を考慮に入れた1人当たり実質国民所得といえ ども経済厚生の尺度としてはまだ不十分である。 ① 非市場的な活動はGDPに反映されていない。 ② 環境資源(ストック)の「使用」ないし「償却」(フロー)に対して帰 属計算はされていない。 ③ 通勤のための交通サービスなどのような,経済厚生の観点か らすれば「中間投入」に近いものであるが,「最終消費」としてGDP に統計されている。 マクロ経済学(Ⅰ) 29
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