マクロ経済学 II 第6章 久松佳彰 Part 2 マクロ経済学の展開 Part 2 マクロ経済学の展開 • • • • • • 第6章: インフレと失業の問題 第7章: 財政の問題 第8章: 経済成長や経済発展のメカニズム 第9章: IS-LM分析 第10章: 総需要と総供給 第11章: 開放マクロ経済学 • 応用分野です。 第6章 • インフレと失業 – インフレとはインフレーション(inflation)の略 – 国民の悩みの種だった • 日々の買い物の値段が上がり、 • 貯金も目減りする。 – 景気が悪くなると失業が問題になる • 失業率が高いと、経済は深刻な状況にある。 • インフレと失業のトレードオフの関係について 勉強する。 インフレか失業か(p.126) • フィリップス曲線の教えるところによれば、イ ンフレと失業の間にはトレードオフの関係が ある。 • しかし、第5章で説明したとおり、単純な関係 ではない。つまり、自然失業率というものが存 在する(フリードマンの説明、pp.116-117)。 • インフレと失業についてもう少し掘り下げて勉 強しよう。 多くの国を悩ませてきたインフレ • 戦後多くの国は、インフレーション(インフレ) の問題に悩まされてきた。 • インフレーションとは、物価が持続的に上昇し ていく現象です。 • インフレには多くの国民が困る。 – 特に、預貯金で生活する高齢者世帯は困る – インフレには反社会性がある。 • 現在はデフレが問題となっている。 物価は何で測るのか • 物価を数字で表す場合には、指数を使わなく てはいけない。 • 指数とは、いろいろな商品の価格の上昇の程 度を平均した数値である。 • 物価指標 – 消費者物価指数(Consumer Price Index: CPI)、 企業物価指数、GDPデフレーターなど。 物価は何で測るのか • 消費者物価指数(CPI) – 消費者が日常的に購入している商品の価格から 計算される指数 • 企業物価指数 – 生産者(企業)が購入する原材料の価格から計算 される指数 • GDPデフレーター – 第1章で説明済み(要復習!) 物価指数のくせ • 企業物価指数 – 算入される商品の限定 • GDPデフレーター – 海外からの輸入される商品が入っていない • 消費者物価指数 – 季節の野菜の価格などの変動に影響を受けやす くなる – そのため、変動が大きい商品を除く場合あり 消費者物価指数の数え方 • 消費者が購入する消費財の価格変化の加重 平均である • 二財(x財とy財)の場合はこう表される。 (Px*・Qx+Py*・Qy)/( Px・Qx+Py・Qy) ただし、Px*やPy*はそれぞれの財の比較年に おける価格、PxやPyはそれぞれの財の基準 年における価格、QxやQyはそれぞれの財の 基準年における消費量を表す。 消費者物価指数の数え方 • つまり、基準となる年のそ れぞれの消費財の消費 量に、基準年と比較年に おける財の価格をかけて、 それぞれを全ての財につ いて足し合わせた数値の 比率になっている。 pQ pQ * i i i i インフレの社会的コスト • インフレはさまざまな悪影響を社会に及ぼす • インフレがある程度予期された場合と、予想 がなかった場合とで影響も異なる。 – 予想ができた場合には、人々は事前に対応する はずである。しかし、相対価格に歪みがでる、メ ニュー・コスト、貨幣の利用価値の低下、税制の 歪み、などのコストが生じる。 インフレの社会的コスト • インフレを予想していなかった場合には、大き なコストを引き起こす – 高齢者などの預貯金生活者への負担 – しかし、借金を抱えている債務者にとっては、イン フレは利益を得ることになる。 • 調整インフレ論 – 民間や政府の債務を実質的に軽減する為にイン フレを起こす インフレ税 • インフレを起こしている税は、それだけ国民か ら税金を徴収しているのと同じ効果をもたらし ている。このことをインフレ税という。 • インフレが起こるとき、消費者は自分が持っ ている貨幣の購買力が低下する。これを政府 側から見れば、消費者から購買力を奪い取っ ていることになる。 インフレ税 • インフレ税の根源は、政府の持つ貨幣発行 権(シニョレッジ、seigniorage)である。 • ただし、インフレ率が高くなるほど、政府のイ ンフレ税も高くなるわけではない。 – インフレ率があまりに高くなると、人々は貨幣より も別の資産を持とうとするので、インフレ税の税 収が減少する場合もある。 – 図6-1を参照 インフレと金利 • 一般的には、インフレがあると金利も高くなり、 物価上昇が小さいときには金利も低めになる。 • このことを明確に理解するための概念 – 名目金利: 我々が用いている普通の金利 – 実質金利: 物価の変動を考慮した金利 実質金利=名目金利-物価上昇率 実質金利 • 実質金利とは、物価変動のもとでの実際の資 金調達のコストや運用の利益を測る手段 • 参考:デフレの場合 実質金利=名目金利+物価低下率 すなわち、名目金利がゼロに近くても、物 価低下率(デフレ率)の分だけ、実質金利は 高くなる。 フィッシャー効果 • 米国の有名な経済学者であるフィッシャー (Irving Fisher)にちなんでいる。 • 名目金利が物価と同じような動きをする。 名目金利=実質金利+物価上昇率 実質金利が一定であれば、物価上昇率と名目 金利は同じような動きをする。 社会問題化しつつある失業率 • 平成不況で失業問題は社会問題化している。 • 2004年3月で4.7%であり、2003年1月 の5.5%からは低下傾向にあるが、1980 年代半ばの2%台の失業率と比べると依然と して高い失業率といえる。 • 図6-2参照。 失業という大問題 • 失業は生身の人間の生活を直撃する。 • 家族の生活も打撃を受ける。 • 経済面だけでなく、会社を解雇されたり、新し い仕事が見つからないことは、人間としての 尊厳を傷つけられたような気持ちになる場合 もある。 若年失業も問題! • 玄田有史、『仕事のな かの曖昧な不安:揺れ る若年の現在』(中央公 論新社)は、若い人々 の失業について丹念に リサーチをした良い本 なので、是非に読んでく ださい! 先進国の共通した問題である雇用 • 失業問題は、多くの先進工業国に共通した問 題である。 • ヨーロッパ諸国の失業率も高い(図6-3) • 米国では、労働問題は失業問題という形では なく、賃金格差という形で表面化している。 • この違いには、各国の労働市場のありかた の違いが関係している。 完全失業率と有効求人倍率 • 潜在的に就業者たりうる人 – ①実際に働いている人(就業者) – ②働く意思はもっているが仕事が無く、失業して いる人 – ③働く意思がなく仕事に就いていない人 • 労働者=①+② • 完全失業率=②/(①+②) 日本の完全失業率①(線グラフ) 出所: 総務省「労働力調査」 日本の完全失業率②(線グラフ) 出所: 総務省「労働力調査」 有効求人倍率 • 職業紹介所に寄せられている求人者数を分 母、求職者数を分子にとった比率である。 • 図6-4参照。 • 2004年3月の有効求人倍率は0.77倍で ある。 出所: 厚生労働省「職業安定業務統計」 出所: 総務省「労働力調査」、厚生労働省「職業安定業務統計」 景気との関係 • 失業率と有効求人倍率は景気に対して似 通った動きをする。 • 景気上昇=失業率減少=有効求人倍率上 昇 • 景気下降=失業率上昇=有効求人倍率下 降 • しかし、有効求人倍率は先行指標、失業率は 遅行指標である。 自然失業率 • 失業率はけっしてゼロになることはない。 • ある程度、構造的な失業が存在する。 図6-5 労働市場のイメージ 離職 就業者 失業者 就職 離職 求職 就職 働くことを あきらめる 非労働者 自然失業率 • 構造的な失業を失業率で表したもの • 現実の失業率は、自然失業率に等しくなるわ けではない – 景気が良いとき、自然失業率>現実の失業率 – 景気が悪いとき、自然失業率<現実の失業率 • 図6-2参照 – トレンド線で描かれた自然失業率 – 傾向的に上昇傾向があるようだ 自然失業率 • 失業率の動向から、自然失業率の動きとそ れ以外の動きに分けることは重要 • 自然失業率を下げるには、構造的な政策が 必要になってきます • それ以外の動きは、景気対策によって対応す ることができる 自然失業率の決定(p.143-4) • 離職率(労働者のうちどれだけの人が離職す るかを表す比率)を低くすること、あるいは再 就職率(失業者に就職率をかけたもの)を高く することによって、失業率を下げることができ る 産業構造の調整と摩擦的失業 • 自然失業率の背景にあるような失業を、摩擦 的失業と呼ぶことがある • 摩擦的失業が高くなるのは、産業構造の変 化が激しいときである • このような調整過程の失業は社会的には大 きな問題を生じる • 地域の産業振興の役割は、摩擦的失業が大 量に発生しないためもある 失業保険 • 万一職を失った場合に、ある一定期間だけ、 就業時の所得の一定割合を支払ってくれる のが失業保険 • しかし、失業保険は働くインセンティブに影響 を与える – 失業保険が手厚くなると離職率が高くなり、再就 職率が低くなるので失業率が高くなる – 失業保険が失業を増やす場合がある 賃金の下方硬直性 • 失業者が多くいても賃金が十分に下がれば、 企業の雇用意欲も高まるはずである。そうで あれば、失業率は低下するはず。 • そうならないのは、賃金が十分に下がらない からという理由もある。 労働供給 賃金 失業 下方 硬直性 労働需要 労働量 効率性賃金仮説 • 失業があっても高賃金が存在することの一つ の説明 • 高賃金が労働の効率性をもたらしているとい うケース • サンクトペテルブルクのホテルのウェイターの 賃金! 効率性賃金仮説 • 賃金の高さが労働者の働き具合に影響する 場合(発展途上国) • 賃金を高くするほど、離職者が減るので企業 は賃金を高めに設定する場合 • 質の高い労働者を確保する為に、ある程度 賃金を高くする必要がある場合 • 高い賃金を出すことによって、労働者の仕事 に対するインセンティブを高められる場合 補論1 • GDPデフレーターと計算方法を比較しながら よく確認しておいてね。 • たぶん、試験に出します! • 問題(p.155)の3も勉強しておくように。 補論2 • 興味のある人は読んでね。
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