経営情報学概論

経営組織論
経済学博士・工学博士
広島大学大学院工学研究院
特任教授 伊藤孝夫
第7章 近代組織論
組織の分類
• 機械的組織(Mechanistic
Organizations)
• 有機的組織(Organic Organizations)
機械的組織VS有機的組織
機械的組織
全体から個別部門へ
上司の責任
階層的構造
情報の中央集中
縦の上下関係
指示や決定が作業と行動を支配する
忠誠心と服従
局部的知識、経験、技能
急激な環境変化のない世界
有機的組織
個別部門から全体へ
責任の共有
水平的ネットワーク構造
コミュニケーション重視
統制、権限より相談
指示や決定より情報と助言
忠誠心より、企業成長への責任感
専門的技術と知識
不確実性の高い世界
組織と個人
• 組織とは「意識的に調整された人間の諸
活動ないし諸力のシステム」
• 個人(組織の一部)
• 物的要因:肉体を所有する
• 生物的要因:生き物として、内外の変化に即応
しつつ、内的均衡を維持する調整能力
• 社会的要因:他の個人との関連を持ち、作用し
ている。社会的存在で、独自性も持つ
個人とシステム
• システム:各部分がそこに含まれる他
のすべての部分と一定の重要な方法
で関連を持つがゆえに全体として取り
扱われるべきもの
• 個人:過去の経験と現在置かれてい
る環境 + 物的、生物的、社会的要因
個人の矛盾
• 個人の自由意思 vs 人間の決
定能力(選択力)
• 人間は主体的意思決定者
⇒すべて人間の意思決定に起因
する(組織本質の解明)
意思決定のプロセス
• 情報活動(intelligence activities)
• 立案活動(design activities)
• 選択活動(choice activities)
選択の前提
• 価値前提と事実前提
• 価値前提:主観的、倫理的性格を持つもの、
科学的に正しいかを経験的に実証し得ない
• 事実前提:観察された事実であり、真実か虚
偽かを経験的に検証できる
→意思決定の正しさは、価値前提が存在する
ためその合理性を科学的に判定する限界を持
つ。
価値前提と事実前提
• 価値前提と事実前提 → 目的と手段
• 目的に対する手段の合理性を科学的
に判定することは可能⇒合理的選択と
は合目的的な選択
• 管理とは、ある特定の目的を達成する
ために、適切かつ効果的な手段の選択
の確保
意思決定
伝統的管理論
情報
の獲
得と
処理
必要なすべての
情報が完全に確
保されているとい
う仮定
⇒最適な意思決
定を行いうる状態
意思決定学派
意思決定に必要な情
報を探求する必要が
ある
⇒探求活動は終結か
継続は意思決定者の
主体的判断→意思決
定者の心的満足状況
意思決定
情報
活動
立案
活動
選択
活動
伝統的管理論
すべての代替案
を列挙する
その結果を確定
し、比較する
その中から最も
合理的なものを
選択する
抽象化された全
知全能の経済人
意思決定学派
情報知識の不完全性
と探究の不完全性
結果に関する価値の
予測の困難性
代替可能な行動のす
べてを想起し、検討す
ることの不可能性
現実の人間:管理人
組織における個人
• 伝統的組織論における経済人(
Economic man):人間は物的・経済的欲
求を満たすために、常に論理的ものこと
を考え、最も合理的行動する存在
• ⇒利潤極大化や費用最小化の目的を達
成するために、合理的な意思決定を行う
• ⇒その前提条件:1)完全な知識と情報も
入手2)確実な予想結果3)最適な選択
組織における個人
• 人間関係論における社会人(Social man):人
間は本来的に孤立した存在でなく、集団の一
員としての社会的存在⇒いずれかの集団に
所属することによって、帰属心を満たし、それ
により心理的な安定を願う。
• 近代組織論における管理人(Administrative
man):個人の主観的な意味での合理性しか
追求し得ない存在
限定合理性(Bounded Rationality)
• 合理性:各選択に続く諸結果についての
完全な知識と予想を必要⇒実際には諸結
果の知識は、常に断片的なもの
• 合理性:あらゆる可能な代替的行動の中
から最適のものを選択することを要求⇒
現実の行動では、これらの可能な行動の
うち、わずか2,3のものしか考慮されな
い
協働システム
• バーナードの言う個人とは、自由の
意思を持ちながら、その能力に限界
が存在する。各個人がそれぞれの能
力の限界を克服し、各自の目的を達
成するために、協働(cooperation)関
係を持つグループを形成する。
• 組織とは「意識的に調整された人間
の諸活動ないし諸力のシステム」
組織の本質
• 組織は「実体によってではなくむしろ諸関係
によって主に特質づけられるところの触知し
えないもの」
• 組織は「人力の場」(その場合の人間は組織
の外のものであるとされる)⇒組織が人々の
集団であるとの解釈は、あくまで便宜的なも
のにすぎない。
• 組織の「構成員(メンバー)members」⇒組織
に対する「貢献者contributors」
組織成立の3要素
• ①協働に対する積極的意思
willingness to cooperate
• ②組織の共通目的common
purpose
• ③伝達communication
組織均衡論
組織
製品・サービス
時間と努力
貨幣 賃金・報酬
顧客
組織の存続がそのシステムの
均衡の維持に依存する。
従業
員
組織決定の合理性
• 組織がその集団の構成員に対して、
ほかの構成員が特定の条件のもとで
とる行動についての安定した予想を
持たせることを可能にする
• 組織が各構成員の行動を結び付ける
ような刺激を与え、目的に向かってこ
れを統合する
組織スラック(Organizational slack)
• 多くの意思決定の基準は満足基準であるた
め、組織が探求に当たって見逃したこれら
の代替案が発見されないままに、意思決定
が行われていることがある。
• 組織のスラック:見逃された有利な代替案に
よってもたらされる利益≠選択した決定案に
よってもたらされる利益
ありがとうございました!