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市町村の水害対応の判断・意思決定を
支援する地理空間情報の相互運用性を
有する情報システムの構築と評価
災害情報 No.9 2011(p72~p81)
田口 仁・臼田 裕一郎・長坂 俊成
発表者 石崎 淳
はじめに
・日本の防災体制は国から国民まで責務を果たすことが規定
されていて、特に災害対応の最前線は市町村である。
・水害対応については、災害発生前から判断・意思決定に役
立つ情報を取得した上で、適切な対応が求められる。
水害対応に役立つ様々な情報を取得し、それらの情報が統合
的に利用できる機能を有することで、効果的な判断・意思決
定の支援を行える情報システムを構築することが重要である。
研究目的
そこで、本研究では、市町村における水害対応を対象に、水害対応とし
て多種多様な情報を取得して、情報を統合的に利用でき、判断・意思決
定を支援する機能を有する情報システムの提案をする。提案した機能を
有する情報システムのプロトタイプを構築し、実証実験として机上の水
害対応訓練を通じ、機能の有効性を評価する。
水害における判断・意思決定はリアルタイムな情報だけでなく、静的な
情報も含めて多種多様な情報を扱うことが重要である。しかし平時より
作成されている静的な情報の利用はあまりされていない。また、必ずし
も防災を目的としていない情報を利用できることも重要である。水害対
応に資する様々な情報を取得して統合し、より効果的な判断・意思決定
の支援が行えることを提案する。
研究方法
水害対応の判断・意思決定を支援する情報システムの機能として、地理空間情報
の相互運用性を有することを提案する。
・「情報の取得」:相互運用方式
リアルタイムなデータと静的なデータの両方に対応したデータの取得が可能で、情
報のやりとりを所定のインタフェースに従うことで、異なる情報をシステム間でも
データの交換が行える環境および方式のことである。
・「情報の統合」:WebGISの利用
コンピュータを用いて複数の分析・解析を行うことや、情報を視覚的に表示させる
ことが可能な情報システムのことである。携帯電話からも利用できる環境であるこ
とも重要である。
・「判断・意思決定」:マッピング機能
重ね合わせが行われた地図を下敷きに、判断・意思決定として情報を入力するマッ
ピング機能。多種多様な情報を地理空間情報の相互運用方式により取得し、WebGIS
を用いることで情報を重ね合わせて統合し、それらの情報を下敷きに判断・意思決
定の支援としてマッピングが行える機能。
情報システムの構築
対象自治体は新潟県見附
市とした。
(1)情報の取得
・判断・意思決定に利用
する静的な情報
・防災を目的としない静
的な情報
・防災を目的としないリ
アルタイムの情報
本研究では防災科学技術研究所(2009)が開発したオー
プンソースの相互運用型ウェブマッピングシステム
「eコミマップ」を用いる。
(2)情報の統合
(3)判断・意思
決定
机上防災訓練シナリオ
形態
机上防災訓練の形態としては、判断・意思決定者(市長と防災担当者)と進
行役(状況を付与する者)、情報提供者(消防、県、気象台)に分かれ行っ
た。
設定状況
見附市周辺が平成16年7月新潟・福島豪雨と同等の降雨となり、刈谷田川
が増水する事態を想定した。
時系列
フェーズ1:体制準備(3ミリ/h 今後大雨の恐れ)
フェーズ2:内水氾濫対応(20~30ミリ/h)
フェーズ3:土砂災害対応(小康状態、今後強まる恐れ)
フェーズ4:土砂災害・越水・破堤対応(30~70ミリ/h)
有効性(1)
・情報の取得
必要な情報を取得し現状の把
握と先の見通し立てた
上で判断・意思決定を行った
ことが確認できた。
・情報の統合(図1)
災害対応システムに写真を投稿
し、災害対応システムに地図上に
プロットされた。判断に必要な情
報を重ね合わせて表示し、統合さ
れた情報をもとに判断・意思決定
を行うことができた。
図1:情報システムのプロトタイプ
有効性(2)
・判断・意思決定(図2)
より具体的な判断・意思決定行
うことを支援できると判断でき、
本研究で提案したマッピングの
機能の有効が示された。
図2:移動ルートを示した様子
今後の課題
・情報を配信する提供側の対応が必要
・上位機関の情報システムとの情報の連携、既存の災害情
報共有プラットフォームの仕組みとの連携
・情報の品質のばらつき等の問題
・システムの操作性、入力者の確保
・提案した機能が無い場合との比較が必要