生物化学V 2009年 13 統計力学の基本的な手続き(課題3含む) 平衡系の熱力学量を 扱います。 1:取り扱い方法( 基本マニュア ル )、2:基礎的な内 容 の順で行います。 予習:高校でやった 気体分子運動 論 を、手を動かして計 算しな おしておいてくださ い。(資料と し てウェブにも張って おきま す。高校の教科書等 が見つからな い 方はそれを見てくだ さい。) 131:統計力学の基本マニュアルの具体例 ここでは、 『 物質の微視的 モデルか ら物質の巨視的モデ ル(状態 方程式や熱容量の表 現)への接続 が 、統計力学の目的で ある。』 としておきま す。そう思 い切って し まえば、かつ て統計力学 に つまずいた人にも安 心の3ステッ プ 1: 分配関数を書く > 2: 熱力 学関数に直す > 3: 偏微分 する事で熱力学に接 続 で、初歩的だが強力 な統計力学の 取 り扱い方法を実習で きます 。 ex.) 物 質=格子気体 の場合の3段 階のステップ 1: 格子模型で W を求 める。 > 2: 熱力学関 数 S に直す。 > 3: V や U で偏微分する。 その結果、状態方程 式を得る。 これを実際にやって みましょう。 問題11 [理想気 体2] PV=nkT(nは 分子数 、kはボル ツ マン定数 、nが モル数 なら、 PV=nR Tで す 。) に た ど り 着 く に は 、 気 体 分 子 運 動 論 の 他 に ど 1 んな方法があ りますか? 考えてみ て ください。そ の方法と気 体 分子運動 論の 違いを 議論し てく ださ い。( 違い を 具体化 させて ゆく事自体、課題の 一部です 。)いや 、そもそも気体分子 運動論 でPV=n kTに たどり着いて いたので しょうか? 解答(問題11 ): [方法1:格子模型] 現象の本質 を掴みたい ときには 、 格子模型は便 利なので、 そ れでやってみましょ う。ここでは 、 ボルツ マンの原理: S = k ln W から S を求めることにします 。( ス テップ2)ここで W は、粒 子の配置の場合の数 です。これを 求 めるのがステップ1 です。 ステップ3では、S と他 の物理量 P や V などを接続し てゆく必 要があるわけですが 、そんな時に は 、 準静的過程の時 に成り立つ式 : dU(S,V)= TdS-PdV を思い出してもらえ ば良いです 。 ( と りあえず粒子数変化 は考え ないので、dn= 0 として、 μdn の 項は省いています 。)マニ ュ アル編の重要 公式、法則 表を探し て もらっても良 いのですが 、 物理量 X とその 偏微分を結びつ け るには、 dX の 表現があれば 良いので、自 分で導いて みれば、 よ り明確に理解 できるでし ょ う。そこで、 dS を左辺に移して式 を整理して、 dS = 1 P dU + dV T T と書き直します 。 (分から なければ、質問するか、戻って 復習す るかをして下さい 。) と こ ろ で 、 S は! U と V の 関 数 と 見 な す 事 が 出 来 る の で 、 S(U,V) の全 微 分は、( 通常 扱 う連 続 微分 可 能な 関 数な ら) かな らず、 dS = "S "S dU + dV "U "V 2 ! と書く事が出来ます 。 (こ ちらは、全 微分と偏微分の数学 の問題 です。分から なければ、 大学1年 か 2年の数学( 解析学)ま で 戻るか、質問する事 。) 係数を比較すると、 "S 1 = "U T "S P = "V T が得られます 。以上、ス !テップ3 の 前準備です 。(ここ までは 、 大学1、2年生の内 容です。新し い 事はありません 。) ! ステップ1から順 に始めます。 例 えば、右辺が P/ T であ る 2式目を使う事にし て、エントロ ピ ー S を体積 V の関数とし て 記 述 で き れ ば 良 い 事 に な り ま す 。 そ の 為 に 、 W(V) を 求 め る 必 要があります。[図:気体の 格子模型] の黒丸が理想気体分 子で、 その数が n 個であるとして 、マス目 の総数が N 個ならば(注意: この N は体積に比例する。)、比較 的簡単に W(V) は計算で きま す。 図:気体の格子模型 !"#$%&' !()*"+&, !-"*"+&. !)*/%01&.2, 理想気体分子 は互いに相 互作用し な いので、互い に重なって 配 置しても良い とします 。(『重なっ て はいけない』 として計算 し ても希薄な気 体なら同じ 結果にな り ます。スター リングの公 式 を使えば簡単 ですが、物 理的考察 で 『重なっても 良い』とし た 場合と同じ式になり ます。)この時 、n 分子の配置の場合の数は 、 W(N)=N n / n! 3 です。ここで 、同種分子 は位置が 入 れ替わっても 状態として 区 別できないので、n! で割っ てありま す。 (分からなけ れば、3粒 子の場合に3 !で割らな ければな ら ない事を、絵 を描いて確 か めて納得して下さい 。)こ こで、1 マスの大きさが v と すると dV=vdN と変数変換が出来ま す。従って、 dS 1 " dS % = $ ' dV v # dN & となり、ボルツマン の原理: S= k ln W ! を使 って、 n " % d$k ln N n! ' dS # & nk = = dN dN N ( ) となります。 よって、上 のエント ロ ピーの体積微 分の式を用 い て P/T=nk/vN=nk/V と 計算でき ました。これ は、理 想気体の ! 状態方程式 PV=nkT で す。よく考 えてみると、新しい 知識は ボルツマンの原理 S= k ln W だ けです。(高 校までの算数 は 前提にしています 。) 課題3:上記 の場合の数 は、理想 気 体分子が重な っても良い と 仮定して計算されて いた。 2 1 : も し 、 気 体 分 子 同 士 が 重 なっ て は い け な い 場 合 は 、 場 合の数はどのように 記述されるか ? 2 2 : そ の 場 合 の 数 を ス タ ー リ ング の 公 式 を 用 い て 適 切 に 近 似し、状態方程式が PV=n kT と な る事を示せ。 23:スターリン グの公式が適 用 できる条件を考察す る事で 、 なぜ結果が PV=nkT で一致する の かを考察せよ。 [問題12] 同じ格子模型ともう 一つの関係式 "S 1 = "U T 4 ! について考えよ。 解答(問題12 ): 今、格子模型を使って導 いた S は、U に完全に独立です。従っ て、 1/T=0 すな わち T=?、、、多分 無限 大と な りま す。 矛盾 では な いが、 今の理想気体 の模型が、 不完全な 模 型に過ぎない 為に起こる 問 題点です。熱力学関数 S ( U, V, n )に 問題があるのです。今、我々 は理想気体の S を求めるにあ たり、分子の配置のエント ロピー にしか興味を 持たなかっ た。つま り 、分子の運動 量に関する 情 報をいっさい 無視しまし た。状態 方 程式に関して はそれでか ま わなかったの です。しか し、エネ ル ギーに対する 分配も考え る 必要があります。 掟破りです が、いきな り結論か ら 見てみます。 エネルギー が 0から E までの間にあ る場合の数を 書き出せば、 3n /2 3n /2 Vn Vn (2"mU ) W (0,U) = = * $3 ' $3 ' n! h 3N n!#& n + 1) h 3N #& n + 1) %2 ( %2 ( (2"mU ) これは、複雑 なかたちを している 様 に見えますが 、配置に関 す る場合の数と ! 運動量に関 わる部分 が 完全に独立で ある事を示 し ています。従 って、状態 方程式の 情 報には運動量 に関わる部 分 は無 関係 と 言う 事に な りま す。 実 際 、 x>>1 で使 え るス ター リ ング式 "( x + 1) ~ x x e#x と 、( い わ ゆ る ス タ ー リ ン グ の 公 式 x!= x xe"x の 連 続 関 数 版 ) を 使 えば、 ! 3n /2 ! * 2/3 4 "mU # V & )5/3 W (0,U) = , 2 % ( e / + 3h n $ n ' . よって、 ! # 3 4 "m U V 5& S = kn% ln 2 + ln + ( $2 3h n n 2' 5 ! これを U で偏微分してみると 、 "S 3 = kn "U 2U よって、 ! 3 U = knT 2 これは、(定 積)熱容量が ! 3 CV = nk 2 である事を意味しています。なお、この本当の S を求める ! ば、例え ば 久保亮五の統 計力学の教 科 課題は、もし 関心があれ 書(共 立出 版) に書 いて あり ます。(註: Γ (x )は 、ガ ンマ 関数 といういわば、x!の変数が実数になった関数。この特殊関数 は、おそらく ご存じない 方が多い の でここでは、 完全なエン ト ロピーの表現を求め なかったので す 。) とりあえず は鷹揚に『 粒子の配 置 の場合の数を 勘定すれば 、 状態方程式について は議論できる 。』と言う事で 良し としまし ょう。だって 、配置をキ チンと考 慮 できれば、状 態方程式が 求 められ、状態 方程式が求 められれ ば 、相図が議論 できるので す からそれだけでもか なりのもので す 。 [解答と解説終わり 。] 132:ミクロカノニカル集団と カノニカル集団 (ここから分子数に n でなく N を使います。) 実は、ここ まで考えた のはミク ロ カノニカル集 団です。そ れ 以外にカノニ カル集団等 がありま す 。これら統計 集団を選ぶ と 言う事は、熱力学で、熱力学関 数とし て、U ( S, V, N )を 選ぶのか、 F ( T, V, N )を 選 ぶ の か 、 G ( T, P, N ) を 選 ぶ の か 、、、 と い っ た 事 と 同じ事です。 この3章では、カ ノニカル集団 に ついて考えます 。 『ミクロ カ ノニカル集団 だけでいい じゃない か ?』と言う方 もいるかも し 6 れません。で も熱力学の 時にも適 切 な熱力学関数 を選ぶのが 現 象を理解する 上で大事だ ったと思 い ます。それと 同じです。 た だし、もう少 し別の理由 もありま す 。それは例え ば、前の章 で 出てきたΓ( ガンマ)関 数の様な 小 難しい関数を 扱わずにす む 方法を与える ためでもあ ります。 特 殊関数の直感 的理解は難 し いですから。 ここまで、 等重率の原 理など、 正 統派の統計力 学ならきち ん と学ぶべき基 礎をすっ飛 ばしてい ま すが、実は、 理想気体な ど の実例を見ればすご く当たり前に 見 える仮定です。 基礎をおろ そかにして も、統計 力 学をソコソコ に利用でき る のですが、以 下では、や や正統派 よ りの説明をし て、おろそ か にした部分をいくら かでも埋めて お きましょう。 [ミクロカノニカル 集団] 理想気体で物事を 考えた時に 、S = k ln W としました 。まず、 エントロピー S は 、 S ( U , V )です。 エントロピーは示量 的だっ た事を学んだはずで す。 ( これも基 礎化学熱力学)だか ら、エン トロピーは粒 子数に比例 します。 つ まり、粒子数 を指定しな け れば、エントロピー は決まらない の で、 S ( U , V, N )と書くべ き でしょう。 さてミクロカノニ カル集団とは 、 U , V, N を 指定する事で 決 まる統計集団です。ある ( U , V, N )が 指定された時に、図の様 に 起こりうるす べての状況 を考え、 そ れらがすべて 等しい確率 で 実現されてい ると言う仮 定をおき ま す。これが等 重率の原理 で す。 図:等重率の 原理。これら の配置の出現 7 確率は皆等しいとす る。 模式図を書き にくいので 、図では 、 2章の課題と 同じく配置 し か考えていま せんが、運 動量につ い てもあり得る すべての場 合 を考え、等重率の原 理をおきます 。ただし、 『内 部エネルギー = (運動エネルギーと 位置エネルギ ー の総量)は 、U である場 合 のみを考える 。』という縛りが あり ます。(実際は、δU の幅の 中に押さえ込む様な 数学的操作を 考 えますが。) その結果、 分配関数= 確率分布 の 規格化定数は 、古典論的 な 粒子の場合、 "0 (U,N,V ) = 1 h 3(N ) $ N ! ( H =U ) d# となります。これは、H=U の条件下 で積分するので簡単 にはい きません。た だし先ほど の理想気 体 の様な場合は 、相互作用 を ! 考える必要がないの で、 『 場合の数』になって簡単な計算 ですむ わけです。量子論的 な場合の方が 分 かりやすいかも知れ ません 。 マニュアル編も見て 下さい。 [カノニカル集団] それに対して、カ ノニカル集団 は 、 T , V, N を指定する事 で 決まる統計集 団です。つ まりやは り 基礎化学熱力 学で学んだ ヘ ルムホルツの自由エ ネルギー F ( T , V, N )に対応していま す。(ヘ ルムホルツの自由エ ネルギーは、 A ( T , V, N )と書 かれる事もあ ります。)確 率分布関数と してボル ツマン分布をとりま す。古典 論的な場合の分配関 数は、 ZN = 1 3N N !h %e " #H N d$ となります。ここで HN は N 粒子系 のハミルトニアン( 勿論、 古典力学のハ ミルトニア ン)です 。 やはり量子系 もマニュア ル ! を参照してみ て下さい。 ハミルト ニ アン∼全エネ ルギーは、 粒 子間相互作用を u ( x 1 , x 2 , x N )として 、( x 1 , x 2 , x N は、それぞれ の粒子の位置ベクト ルです。 ) N pi 2 +u(x1,x 2 ...x N ) 2m i i=1 H N (p1,p2 ...pN ,x1,x 2 ...x N ) = " 8 ! です。ですから、分 配関数の積分 の 部分は、 * 1 $ '...x ) 1 2 N )/ d0 % i=1 (. + 3 3 3 * 1 N p2= 1 1 2 2 2 1 exp," # i /dp1dp2 ...dpN + kT i=1 2mi . "3 "3 "3 N pi 2 1 exp," kT &# 2m +V (x ,x ! * 1 111 exp,+" kT u(x ,x ...x 1 2 V N )/ dx1dx 2 ...dx N . です。一見して分か るのは、配置 x の積分と運動量 p の 積分は 独立して行え ると言う事 です。こ れ が最大のご利 益です。そ れ だけではありません 。運動量 p の部 分の積分には、ガウス関数 の公式 # $ exp[ax ]dx = 2 "# % "a を適用して簡 単に実行で きます。 そ して運動量の 形は、液体 だ ろうが気体だ ろうが変わ らないの で 、公式として 求められる 事 ! になります。その一 方で困難はす べ て、 x の積分つまり配置 積 分に押し付けられま す。 課題31[理想気体 2] 理想気体のミ クロカノニ カル集団 に ついて分配関 数を求め、 さ らに状態方程式を求 めよ。 解答31 ま ず 、理 想 気体 は 相互 作 用し ま せん 。 従 って 、 u ( x 1 , x 2 , x N ) =0 です。従って、粒 子配置の積分 に関する部分は、 """ dx1dx 2 ...dx N = V N V と、簡単に実 行できてし まいます 。 一方、運動量 に関する積 分 は、ガウス関数の公 式を使って 、( すべて粒子の質量は m とし ! て。) + 3N % 1 N p 2( i 2 " " " exp # dp dp ...dp = 2 kTm ( ) ' * $ ,, , 1 2 N & kT i=1 2m ) #+ #+ #+ + + ! 9 と、やはり非常に 簡単に求める 事が 出来ます。これら を使って、 理想気体のカノニカ ル分配関数 ZN = 3N 1 N 2 V 2 " kTm ( ) 3N N !h が、求められ ます。意外 に簡単で し た。これを巨 視的な物理 量 と関係づけま す。マニュ アルの方 を 見てもらえば 分かる様に 、 ! Z N は、ヘルムホルツの自 由エネル ギー F ( T, V, N )と F ( T, V, N )= kT ln Z N ( T, V, N ) で結ぶ事が出 来ます。一 方、基礎 化 学熱力学とそ の後の物理 化 学でやった様に、 dF = "SdT " PdV (+µdN ) で、ありまた数学的 に、 ! # "F & # "F & dF = % (dT + % (dV $ "T ' $ "V ' # # "F & & % +% ( dN ( $ $ "N ' ' なので、 ! # "F & % ( = )P $ "V ' が得られます。こ の F に分配関 数 から求めた F ( T, V, N )を代 入 し て V で 偏 微 分 す れ! ば 、 た ち ど こ ろ に 理 想 気 体 の 状 態 方程 式 PV = N k T が得 られます 。F の T 微分 の方もやってみると 良いの ですが、今回 は比較的容 易に理想 気 体を完全に特 徴づける巨 視 的物理量の関 係式をすべ て得る事 が 出来ました。 これが、カ ノ ニカル集団を考える ご利益の実例 で す。 [ミクロカノニカル 集団からカノニ カル集団へ] 折角なので 、利用方法 だけでな く 、便利で使い やすいカノ ニ カル集団をミクロカ ノニカル集団 か ら導きだしてみよう 。 (ここ だけちょっと数学的 に難しいかも 知 れません。)基礎化学熱力 学 で考え た様 に、孤 立系 (U, V, N )一 定の前 体系 を考え て、 その 10 一部が着目す る系だと考 えます。 図 に示した様に 周囲の系が 十 分大 きい とす ると 、周 囲の 系を 、あ る温 度の 熱 浴 であ るか の ごとく見なす 事が出来て 、着目系 は 等温定積系と 考えられる 事 になります。まとめ れば、 全系=ミ クロカノニカ ル 集団として扱える。 着目系 =カノニカル 集 団として扱える。 となります。 (78/09:;23425$%'()* !"#!$%&'( )&* (+,-./01234251$%6'()6* 図:孤立系( ミクロカノ ニカル) の 中にエネルギ ーをやり取 り できる壁で出来た着 目系(カノニ カ ル)がある。 少し前に述べ た様に『等 重率の原 理 』からミクロ カノニカル 分 布 Ω で扱えば 良い。ミク ロカノニ カ ルでは内部エ ネルギーが 固 定されている 一方で、カ ノニカル で は温度が指定 されていて 、 エネルギーの ずれは許さ れていま す 。そこでその ずれを見積 も ります。 十 分巨 大な 熱 浴 部 分の エネ ルギ ーを E B とし て、 熱 浴 ( E B ) + カ ノ ニ カ ル 系 ( E l )で エ ネ ル ギ ー 一 定 の ミ ク ロ カ ノ ニ カ ル の 系 (エネルギー E ) を作っている とし ます。従って、 E B + E l = E = 一定 11 です。 ここで、系が状 態 l に見 いだされ る確率は、等重率の 原理か ら P l Ω (E-E l )= e x p[ln Ω (E-E l ) ] これ E の周りでテ ーラー展開し て(キュムラント展開と 言うべ きか) ln Ω (E-E l ) = ln Ω (E) - E l d ln Ω/dE + ・・・ とできます。 この2項目 まで考慮 す ると、マニュ アル編を参 照 すれば、 "= #ln$ #E なので、温度 と関係づけ る事がで き ます。これを 展開式第2 項 に入れて、更にそれ を P exp[ ln Ω (E-E l ) ]式に代入 して整理す ! れば、 Pl " exp(#$E l ) という、カノ ニカル分布 (ボルツ マ ン分布)が出 てきます。 も ちろんこれの総和を 取れば、分 配関 数 Z N になりますし、古典的 ! には E l の部分が、古 典のハミルト ニ アンに置き換わるだ けです 。 いろいろや った様です が、本当 に 新しく憶えな いといけな い ことと言えば、ボル ツマンの原理 く らいです。 少 し統 計力 学の 王 道 に 寄り 道し まし たが 、こ の王 道の 部分 が分からない と先には進 めない、 と いう講義では ありません 。 とりあえず、ここは 鷹揚に考える 事 にして、 1:相互作用 を考えずに すむ現象 で あれば、配置 の数だけを 数 えれば、対数 を取ってエ ントロピ ー にするだけで も議論をず い ぶん楽しめる事、 また、そのアンサン ブルの 2:スナップ ショットの 一枚、一 枚 はほとんど意 味を成して い 12 ないけれども 、たくさん 重ね合わ せ ることで、熱 力学で扱っ て いる対象に対する分 子論的描像の 出 発点である事、 この2点を理解して いただければ 、 まずは結構です。 いわゆる相互 作用を考え なくても 良 い系ならば、 これはかな り 有効な考え方です。 [では、統計力学ミ ニマムはなんで あったか?] 勿 論 、『 等 重 率 の 過 程 + ボ ル ツ マ ン の 原 理 あ た り か ら 、 ミ ク ロ・カノニカル集団を作 って、後は カノニカル集団、グラン ド・ カノニカル集団に広 げる。そし て、マ ニュアルの表を使い 回す。』 といった所で す。ただし 、実用上 は カノニカル・ アンサンブ ル が楽なのでそこを出 発点にする事 に しておいて、 1. モデルを立てる。 (例:格子模型) 2. 数 学 的 に 扱 い 易 い カ ノ ニ カ ル 分 布 を 当 て は め る 。 ( 相 互 作用を書き出すだけ 。) P " exp(#$H) 3.カノニカル分布 の規格化の式 = 分配関数を求めて、 自由エネルギー!に直す。 分配関数 1 ZN = ! N !h 13 3N %e " #H N d$ ヘルムホルツの 自由エネルギ ー F( T,V,N) = −kT ln ZN( T,V,N) 4.あとは、熱力学 。 (熱 力学の講義 は別にあったと思う ので省 略。) +1.相互作用がな い場合は、ボ ル ツマンの原理で エントロピー を計算するの も 得策。 S = k ln W +2.ガウス関数の 積分を覚えて お く。 # $ exp[ax ]dx = 2 "# % "a +3.スターリング の公式を覚え て おく。 x!= x x e"x ! 以上の事を、 式を含めて 記憶し、 理 解しておくと 良いと思い ま ! す。 ただ、1.に 関しては、 他人のモ デ ル化から学ん だり、例題 を 解いては自分で考え る、、、、という、いわゆる演習が学習 上不可 欠でしょう。 ●他の所で集中講義 等をした時に 指 摘された事。 1: 格子模型(格 子気体 )の分子の配 置 の図ですが、例えば 、 『一 番 目の図を90 度回転した ものも同 じ 配置と考えな いのか?』 と いう質問を受 けました。 答えは『 考 えません 。』です。 しかし 、 面白い質問だ と思いまし た。なぜ な ら、こういう 疑問を考え て みると、いつ もは暗黙のう ちに仮定 している『空 間』の 性質が、 あらわになる からです。 端的に言 え ば『二つの粒 子が接して い るのは、左側 の壁であっ て、右側 の 壁ではない。 しかし、我 々 はどの二つが 押している か?と言 う 事を区別する 事はしてい な い。それが空間に張 り付いた壁の 立 場だ。』と言 う事だと思い ま す。 14 ●[ここまで予習し た人には考えて おいて欲しい事] 理想気体の(定積) 熱容量が 3 CV = Nk 2 である、とさ らりと述べ てしまい ま したが、これ って第3法 則 に抵触してい ないですか!?熱力学 第 3法則を復習 して、この 熱 容量と第3法 則の関係を 考えてお い て下さい。ま た、現実の 系 を捉えるにあたり、どうすれば良 い のかも考えておいて 下さい 。 15
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