chap5pdf - 流体力学グループ

粘性流体力学講義プリント-5
第 5 章 流れの安定性
1. N-S 方程式の厳密解や近似解が現実に存在するためには, 外部撹乱
に対して安定であることが必要
• 不安定による流れ状態の遷移 (Re 小 → Re 大)
急激な遷移 (円管内の流れ), 段階的な遷移 ( 同軸円筒間の流れ)
• 遷移は数学的には解の分岐に対応
ホップ分岐 (定常から周期運動), ピッチフォーク分岐 (周期倍
加) など
• 乱流は時空間カオスに対応 (?)
2. 安定性
ˆ (x, t) に分けて, v
ˆ (x, t) が
速度場を定常流れ場 U (x)+ 非定常撹乱 v
安定, 中立安定 (非粘性), 不安定になるかどうかを調べる
• 定義 (完全安定性)
(i)kˆ
v (x, 0)k < δ であれば kˆ
v (x, t)k < ² となる δ(²) が常に存
在する (リャプノフの安定性)
(ii) どのような δ に対しても limt→∞ kˆ
v (x, t)k = 0
(特に, 適当な δ0 に対して, δ < δ0 なら limt→∞ kˆ
u(x, t)k = 0:
漸近安定)
• 線形, 非線形安定性
ˆ (x, t) → 0,
線形安定性: v
ˆ (x, t): 有限 →
非線形安定性: v
超臨界問題: d |A|/ d t = ²2 |A| − β|A|3 (β > 0),
亜臨界問題: d |A|/ d t = −²2 |A| + γ|A|3 (γ > 0).
3. 線形安定性
ˆ (x, t), p = P (x)+ pˆ(x, t)
• 連続の式, N-S 方程式に u = U (x)+ v
ˆ に関して線形化
を用いて v
(i) 主流: ∇ · U = 0, (U · ∇)U = −ρ−1 ∇P + ν∆U ,
ˆ /∂t + (U · ∇)ˆ
(ii) 撹乱: ∇ · v = 0, ∂ v
v + (ˆ
v · ∇)U = −ρ−1 ∇ˆ
p+
ν∆ˆ
v.
ˆ = exp(σt)˜
• v
v (x), pˆ = exp(σt)˜
p(x) とおいて,
固有値 Re(σ) < 0: 安定, Re(σ) = 0: 中立安定, Re(σ) > 0: 不
安定
4. 平行流の安定性
ˆ =v
˜ (y) exp(i αx + σt) , v
˜ (y) = (˜
• U = (U (y), 0), v
u(y), v˜(y))
とおいて, u
˜, p˜ を消去して v˜ の式を考える
• オア-ゾンマーフェルト方程式 (無次元,2 次元):
(U − c)(˜
v 00 − α2 v˜) − U 00 v˜ = (i αRe)−1 [˜
v IV − 2α2 v˜00 + α4 v˜],
ここで, 位相速度 c = i σ/α = cr + i ci で ci = 0 で中立安定
• 境界条件 (例: v˜ = v˜0 = 0 at y = y1 , y2 ) と U の具体的な形 (例
U = 1 − y 2 ) を与えて ci = 0 となる中立安定曲線を (α, Re) 平
面で調べることができる
• スクワイアの定理: 2 次元平行流において, 2 次元撹乱に対する
臨界レイノルズ数は常に 3 次元撹乱に対する臨界レイノルズ数
よりも小さい
→ 2 次元撹乱を考えれば十分
5. 非粘性安定性に関する定理
• レイリー方程式 (オア-ゾンマーフェルト方程式で Re→ ∞):
(U − c)(˜
v 00 − α2 v˜) − U 00 v˜ = 0.
• レイリーの定理 (1): 非粘性の極限 (Re→ ∞) で不安定な主流
の速度分布 U (y) は, 変曲点 U 00 = 0 を持たなければならない
→ 非粘性の極限では, 変曲点のない速度分布を持つ主流に対し
ては中立安定 (ci = 0) しかない
• トールミンの定理: 非粘性の極限では, 対称または境界層型の
速度分布を持つ主流に対して, もし変曲点をもてば撹乱は必ず
増大する
• レイリーの定理 (2): 非粘性の極限では主流が不安定である場
合, 撹乱の位相速度 cr は Umin < cr < Umax の範囲になければ
ならない