経路積分とEXAFS 理工学研究科 量子材料工学講座 新田清文 経路積分とは? 経路積分法は波動光学のホイヘンスの原理からの類推 からR.P.Feynmenが 1948 年に導入したものでラグラン ジュ関数Lを持つ粒子の描く経路に汎関数に比例する重 i exp( 率 Ldt ) を与えて定義される。 経路積分を用いることによりハミルトン関数を持たない 力学系にも量子力学を拡張することができる。物質波で は古典力学のハミルトンの原理が幾何光学のフェル マーの原理に対応するものであることが明示され、シュ レディンガーの波動方程式を摂動論によらず近似的に 解く方法を与える。 t 0 本研究では 経路積分法を用いて2原子からなるモデルに対し て原子の確率密度分布関数P(q)を求め、それを EXAFSの温度因子の計算に応用している。 2Œ´Ž q Œn Xü Œ´Ž q Š Ô ‹ —£R q ‹ z Ž û Œ´Ž q Ž U — Œ´Ž q 計算 1 P(q) Z 90 80 70 exp[ V (q)] 2 60 東京 名古屋 大阪 50 40 30 20 10 0 1 月 2 月 3 月 4 月 exp[ Ve (q )] exp[ 2 / 2 (q )] exp[ VL (q)] d 2(q ) 通常の経路積分法では2つの地点q1q2を結ぶ全ての経路を積分 するが、本研究では量子経路が古典経路の周りにガウス分布の 重みで広がっていると考え、計算を行った。 計算対象 本研究で計算を行ったのは微粒子やクラスター 表面、構造相転移を起こす物質や近年注目され ている充填スクッテルダイト系のモデルとして考 えられる2重井戸のポテンシャルを持つ系である。 2000 c=0 c=1 c=2 c=4 3 q 2 V (q) / ( q ) c ( q ) 3 1000 V(q)/K 2 0 -0.2 -0.1 0 q/Å 0.1 0.2 2 2 確率密度分布関数(c=1) 0.9 量子計算による 原子の確率密度 分布関数。 低温でも原子の 存在位置に幅が あるのが分かる。 1.5K 15K 45K 75K 120K 150K 300K 450K 750K 1200K 1500K 0.6 0.3 0 -0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3 確率密度分布関数(古典) 4 古典の場合粒 子は低温では 低い井戸の底 に凍り付いて いることが分 かる。 3.5 15K 45K 75K 120K 152K 450K 750K 1200K 1500K 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 -0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3 まとめ このように経路積分を用いた計算によりあるポテ ンシャルを持った原子の確率密度分布関数を求 めることができ、ここからEXAFS解析に必要なパ ラメーターを求めることができる。そして実験との 比較を行うことにより、実際の物質中の原子の持 つポテンシャルの情報を引き出すことができる。 詳しく知りたい方は掲示板まで連絡下さい。
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