固体電子物性特論

固体電子物性特論
第5回
石橋隆幸
今日の内容
• 外因性半導体
– p形
– n形
• p-n接合
• 金属-半導体接合
真性半導体の電子分布
(不純物を添加していない)
電子
* 3 2

V 2me
12
ge  2  2    c 
2 

    f 
f ()  exp
 ボルツマン分布
 kB T 
正孔
* 3 2

V 2mh
12
gh  2  2  v  
2 

   f 
*
*
1 f ()  exp

m
,
m
は電子、正孔の有効質量
e
h
 kB T 
真性半導体の伝導帯の電子密度
* 3 2

    f 

V 2me
12
n  2  2     c  exp 
d

c
2 
 kB T 


 c   f 
n  N c exp

 k B T 
m * k T 
N c  2 e B2 
 2 
32


N c 伝導帯の電子に対する
実効状態密度
真性半導体の
価電子帯のホール密度
* 3 2

   f 
v
V 2mh
12
p  2  2   v   exp 
d

2 
 k B T 

v   f 
p  N v exp

 k B T 

m * k T 
N v  2 h B2 
 2 
32


N v 価電子帯のホールに対する
実行状態密度

真性半導体の伝導帯の電子密度
 c   f 
n  N c exp

 k B T 
v   f 
p  N v exp

 k B T 
m * k T 
N c  2 e B2 
 2 
m * k T 
N v  2 h B2 
 2 
32
32
N c 伝導帯の電子に対する
実効状態密度


N v 価電子帯のホールに対する
実行状態密度
半導体中の伝導体の電子と価電子帯の正孔の密度は
実効状態密度と温度およびフェルミ準位で決まる。
演習
V 2me * 
n  2  2 
2 

32
    

c
12
c
    f 
exp 
d
 kB T 
この積分を実行して、
 c   f 
n  N c exp

 k B T 

m * k T 
N c  2 e B2 
 2 
32
ヒント
  c
変数変換
kB T
x
を導きなさい。

 12
0
t exp t  dt 

2
真性キャリア密度
真性半導体ではn=pなので
 g 
12
p  n  ni  N c N v  exp

2k
T
 B 
また

np  ni
2
真性キャリア密度は
電子、正孔の有効質
量、温度、バンド
ギャップで決まる
半導体
禁制帯幅
電子の有効質量 正孔の有効質量
Si
1.11
0.32
0.64
Ge
0.67
0.22
0.29
GaAs
1.43
0.067
0.48
GaP
2.26
0.37
0.60
ni  N c N v 
12
 g 
exp

2k
T
 B 
アレニウスの式
 E 
k  Aexp

k
T
 B 

E 活性化エネルギー


化学反応など熱活性に
関する多くの現象に
見られる関係
真性フェルミ準位
 f  i 
c  v
2
kB T N v 

ln 
2 N c 
me  mh のとき N  N なので
v
c


フェルミ準位はバンドギャップの中央

外因性半導体
n型
ドナー
p型
アクセプタ
S.M.ジィー、半導体デバイス
Si結晶に
5つの価電子を持つPやAs
を添加した場合
5つの電子のうち4つは共有
結合に使われ、1つ余る。
この電子は伝導電子となる。
n形
3つの価電子を持つBなどを
添加した場合、共有結合に使
われる電子が一つ足りない。
これが正孔となる。
p形
バンドにおける不純物の準位
S.M.ジィー、半導体デバイス
S.M.ジィー、半導体デバイス
完全なイオン化(ドナーの場合)
伝導帯
EC
キャリア
ED
EF
+ + + + + + +
Ei
EV

価電子帯

浅いドナーは室温のエネルギー
でほとんどすべてイオン化され
る。したがって、
n  ND
NC 
EC  E F  kT ln 
N D 


ND
ED
ドナー濃度
ドナー準位
完全なイオン化(アクセプタ)
浅いアクセプタは室温のエネル
ギーでほとんどすべてイオン化
される。したがって、
伝導帯
EC
Ei
EV
EF
EA
- - - - - - -
価電子帯


正孔


p  NA
NV 
E F  EV  kT ln 
N A 
NA
EA
アクセプタ濃度
アクセプタ準位

ドナーとアクセプターが
同時に存在する場合
濃度の高い方が伝導のタイプを決める。
このとき、フェルミレベルは、電荷の中性を保つ位置にくる。
全負電荷 = 全正電荷
イオン化したアクセプタ
+電子
np  ni
2
イオン化したドナー
+正孔
n  NA  p  ND
に代入すると
1 
n n  N D  N A 

2 
2
ni
pn 
nn
N D  N A 
2

 4n i 

2
n型半導体における
キャリア密度の温度依存性
真性領域
価電子帯から伝導体へ励起
される電子が支配的になる
外因性領域(出払い領域)
ドープした不純物がすべて励
起されている領域
n=ND
凍結領域(不純物領域)
ドープした不純物によるキャリ
アの温度依存性が決まる領
域される
n=ND
ホール素子
z
x
y
Bz
面積A
x
VH
W
vx


電流
V
y

qv  B
ローレンツ力によって
電子の進む向きが
曲げられる。
その結果ホール電圧が
発生する。
I
VH  yW  RH BzW
A
1 ホール係数
RH  
qp

p-n接合
2つのタイプの半導体をつなげるとどうなる?
伝導帯
伝導帯
EC
+ + + + + + +
EF
EV
正孔
キャリア
- - - - - - -
価電子帯

p形
EA

価電子帯

n形
ED
EF
p-n接合の電荷分布(熱平衡状態)
キャリアの拡散
-
-
-
正孔
-
-
-
-
電界によるドリフト
-
-
-
-
-
電子
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
電界
-
-
-
-
+
+
+
+
p-n接合の電荷分布(熱平衡状態)
中性領域
キャリアの拡散
-
-
-
-
-
中性領域
-
-
-
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
空乏領域(空乏層)
正孔、電子ともに拡散による電流とドリフトによる電流
が釣り合っている。
この時キャリアの存在しない(ドナーイオン、アクセプタ
イオンはある)領域、すなわち空乏領域が形成される。
空間電荷分布
電界分布
電位分布
バンド構造
キャリアのドリフト
n型半導体を考える
半導体中の電子は、熱によるエネルギーにより
運動エネルギーを得ている。3次元の場合、3/2kT
1
3
2
mnv th  kT
2
2
m n 電子の有効質量
v th 電子の熱速度

の平均値
Si, GaAsで107m/s程度

キャリアのドリフト
電界がある場合、平均緩和時間の間に
電子が受け取る運動量は
q  mn v n
q 
v n   
mn 
ここで

q
n 
mn
平均緩和時間は電子
がなににも衝突しない
で進む平均距離すなわ
ち平均自由行程だけ進
むのに要する時間
は、移動度である。
従って電子は電界によってvnの速度を得る。
半導体に電界を加えると?
電界
n形
EC
Ei
EV
EF

V



EF

EC
Ei
EV
プラス側が
下になる


電子の受ける力はポテンシャルエネルギーの勾配に等しい

dEi
q  
dx
半導体に電界を加えると?
電界
n形
V
ドリフト電流
EF
EC
Ei
EV




電子の受ける力はポテンシャルエネル
ギーの勾配に等しい
dEi
q  
dx
この時流れる電流は
Jdrift  qnn
拡散電流
半導体中のキャリア密度に勾配があるときに流れる電流
拡散の式
dn
F  D
dx
Dは拡散係数
電流で考えると(n形の場合)

dn
Jn  qF  qD
dx
ここで1次元の場合の
拡散係数Dは
kT 
D   n
 q 
p-n接合に流れる電流
p-n接合には拡散電流とドリフト電流が流れるが
それらは向きが逆でつり合っている。しがたって、
J p  J drift  J diffusion
dn
 qn p  qD
dx
正孔密度の式

p  ni expE i  E F  kT を使うと
dEF
0
dx

を得る
フェルミレベルは
至る所で一定
p-n接合のバンド図
熱平衡状態
フェルミレベルが
同じになる
EC
EF
EV
正孔
価電子帯
p型
n型
p-n接合の電流ー電圧特性
順方向に電流が
流れやすい
逆方向には
ほとんど流れない
整流性
p-n接合のキャリア分布
金属ー半導体接合
p-n接合と同様の整流作用を示す場合、
示さない場合がある。
この特性は仕事関数によって説明される。
仕事関数 真空準位とフェルミ準位の差
 M   S (整流作用を示す)
大きさ  M   S
のエネルギー障壁ができる

M  S
 整流作用を示さない。
オーミック接触


演習
Asが1016/cm3ドープされたSi結晶がある。
室温(300K)におけるキャリア密度(多数キャリアと
少数キャリア)とフェルミ準位を求めよ。
ただし、 300KにおけるSiのniを1.45x1010cm-3とする。
ヒント 室温では不純物はすべてイオン化していると考えられる。
np  ni
実効キャリア濃度
2
NC 
EC  E F  kT ln 
N D 

NC  2.8 1019 cm3
ドナー濃度
N D  1016 cm3
23
k  1.3806610 J /K
19
1eV  1.6021810 J
演習回答
2
ni
4
3
p
 2.110 cm
ND
NC 
E C  E F  kT ln 
N D 
 0.206eV