20. NAFLDにおけるIrisinの分泌動態と病態関連

20 . NAFLDにおけるIrisinの分泌動態と病態関連因子と
の関連性、食事運動療介入による影響
筑波大学体育科学系 スポーツ医学 日本学術振興会 特別研究員
蘇 リナ、呉 世昶
医学医療系 医療科学
志田 隆史、正田 純一
【目的】Irisinは運動により骨格筋より分泌されるマイオカインであり、
個体のエネルギー消費量を増加させ、肥満や代謝病態の改善効果が報告
されている。一方、身体活動量の増加によるNAFLD の病態改善の背景
には、Irisin の抗肥満効果あるいは代謝改善効果が一端を担っている可能
性が推測されている。本研究では、NAFLD 患者および健常人を対象に
Irisin の血中濃度を測定し、NAFLD 病態関連因子と比較解析を行った。
また、減量介入が Irisinの分泌動態に与える影響について検討した。
【方法】本院外来を受診した NAFLD 肥満者 295 例( M/F 202/ 93 )およ
び健常者45 例( M/F 28 /17 )を対象とした。NAFLD 病態関連因子とし
て、体重、身体形態と体組成( InBody 720 , InBodyS 10 )の測定に加え、
早 朝 空 腹 時 採 血 を 行 い、Irisin( Phoenix社)
、血 液 生 化 学 お よ び 各 種
NAFLDのバイオマーカーを測定した。また、FibroScan 502( Echosens)
にて肝脂肪化( CAP)と弾性度( LS)を測定した。また、3ヵ月の食事改
善と運動実践による減量教室に参加したNAFLD 肥満男性(114例)につ
いて、介入前後の変動について比較検討した。
【結 果】血 中 Irisin 濃 度( ng/mL)は 健 常 者 304 ± 107( mean ± SD)
、
NAFLD 119 ± 77 であり、健常者に比して NAFLD患者では有意( P <
0.01)に低値であった。Irisin濃度とNAFLD 病態関連因子の関係では、
年齢、BMI、体脂肪量、ALT、γ-GT、HOMA-IR、遊離脂肪酸、TNFα、
レプチン、IL-6 、ヒアルロン酸、CAP、LS と負の相関を示し、一方、
除脂肪量、血小板、adiponectin、HDLCと正の相関を示した。さらに、
重回帰分析( Stepwise)では、年齢、体脂肪量、HDLC、IL- 6 、レプチ
ン、CAPが、血中 Irisin濃度と関連する病態因子であった。減量介入に
よる体脂肪量の減少と平行して Irisin 濃度は減少したが、Irisin 濃度を体
脂肪量で補正した値が介入後に増加した72名と低下した42名の2群に分
けて比較したところ、前者では体脂肪蓄積、アディポカイン不均衡、
NASHマーカーが有意に改善していた。
【結語】NAFLD患者は健常人に比して血中Irisin濃度は低値であった。
Irisinの分泌動態は、加齢、体脂肪蓄積、HDLC、アディポカイン不均衡、
肝脂肪化と密接に関連していた。減量介入によるIrisin分泌動態の変化
は、体組成変化と相まって、NAFLD の病態改善に寄与する可能性があ
ると考えられた。