25. NAFLD、C型慢性肝炎における内臓脂肪量測定の意義

25 . NAFLD、C型慢性肝炎における内臓脂肪量測定の意義
三重大学 消化器内科学
岩佐 元雄、諸岡 留美、杉本 龍亮、
宮地 洋英、田中 秀明、藤田 尚己、
竹井 謙之
三重大学 保健管理センター
小林 由直
三重大学附属病院 栄養指導管理室
岩田加壽子
【目的】内臓脂肪は慢性肝疾患の病態に種々の影響を及ぼす。非アルコー
ル性脂肪性肝疾患( NAFLD)は肝臓の脂肪沈着と内臓肥満の程度が相関し
ており、C型慢性肝炎( CHC)では内臓肥満を基盤とするインスリン抵抗性
や肝脂肪化が病態の進展に影響を及ぼす。そこで、NAFLD、CHCを対象
に内臓脂肪断面積を測定し、臨床所見、血液検査値との関連を検討した。
一部の症例では栄養療法を行い、さらに糖尿病発症に及ぼすVFAの関与
にも検討を加えた。
【方 法】対 象 はNAFLD72例(男41例、女31例、平 均53歳)
、CHC97例
(男28例、女69例、平均62歳)
。方法は、体組成分析装置InBody720を用
いて内臓脂肪レベル( VFA)を測定した。NAFLD37例、CHC45例には栄
養指導を行い、後の値と比較した。糖尿病の合併がないNAFLD49例、
CHC87例では糖尿病発症をイベントとして累積糖尿病発症率を解析した。
【結果】1)本法によるVFAとCTを用いたVFAの間には、r=0.783、P<
0.001と正相関が認められた(慢性肝疾患33例)
。2)NAFLDにおいては、
2
75%がVFA100cm 以 上 の 内 臓 肥 満 で、VFAとHbA1c( r=0.253、P<
0.05)との間に正の相関がみられた。栄養療法によりALT、VFAは有意に
低下、VFAの変化率とALTの変化率は正相関を示した。CHCでは52%が
内臓肥満で、VFA高値例のHbA1cは高値を示した。CHCにおいても、わ
ずかなVFAの減少によりALTは低下した。3)糖尿病の合併がないCHCと
NAFLDの背景の比較では、CHC群が有意に高齢で、VFAはCHC98cm2 、
NAFLD119cm2 とNAFLDの内臓肥満が顕著であった。平均観察期間23.5
カ月の間に、CHC4例(4%)
、NAFLD5例(10.2%)で新たな糖尿病の発
症がみられた。CHCを対象に糖尿病発症に対するROC解析を行い、カッ
トオフ値100cm2 を得た。100cm2 以上の内臓肥満群から高率(4例vs.0例、
P<0.05)に糖尿病が発症した。NAFLDにおいては内臓脂肪量と糖尿病発
症との関連は認められなかった。
【結語】内臓脂肪量とALT、HbA1cとの間には密接な関係があり、内臓
脂肪の減少と並行してALTが低下し、内臓肥満を伴うCHCから新規の糖
尿病発症が多かった。NAFLD、CHCにおいては内臓脂肪量を指標とした
栄養療法が有用である。