25 . Andrologyから見たNASH/NAFLDの病態 京都府立医科大学大学院 医学研究科 消化器内科学 角田 圭雄、竹谷 祐栄、瀬古 裕也、 原 祐、石破 博、岡嶋 亮、 山口 寛二、森口 理久、光吉 博則、 安居幸一郎、南 祐仁、伊藤 義人 市立奈良病院 消化器肝臓病センター 田中 斉祐、森 康二郎、金政 和之 【目的】近年、加齢男性性腺機能低下症( Late onset hypogonadism syndrome: LOH 症候群)と肥満、糖尿病、メタボリック症候群との関連 が注目されている。NAFLD/NASHは甲状腺機能低下症、成人発症型成 長ホルモン分泌不全症などの内分泌疾患との関連が示唆されるが、LOH 症候群とNAFLD/NASHとの関連は不明であり、両者の関連について検 討した。 【方法】NAFLDと診断した男性 66例(年齢56. 4±13. 4歳)を対象に、 一般肝機能、糖脂質検査に加えて、free testosterone( FT)値を測定した。 LOH症候群の診断に用いられる FT<8. 5pg/ml をlow FT と定義した。 年齢をマッチさせた肝機能正常の健診受診者82例を対照群とした。 NAFLD症例のうち 44例には肝生検を施行し、肝組織所見とFT 値との 関連を検討した。 【成 績】NAFLD は 対 照 群 に 比 し て BMI、AST、ALT、ALP、γGT、 TG、FPGが高値であった。FT(中央値)は 7 . 0 pg/ml と対照群 9 . 1pg/ml に比して低値で、low FT の頻度は対照群42%に比して68%と高率であっ た。肝組織所見との関連では肝脂肪化とは相関せず、炎症、肝細胞の風 船様変性の程度、肝線維化とは有意の正の相関を示し、多変量解析では FTにもっとも寄与する因子は炎症であった。肝生検の結果は NAFL: NASH: 19 / 25 で、FT は NAFL 8 . 9 pg/ml に 比 し て NASH で は 6 . 0 pg/ml と有意に低値を示した。NASHとNAFLの鑑別においてROC解析を施行 すると、ROC曲線下面積はFT: 0.832、hyaluronic acid: 0.733、DHEA-S: 0.730、cholinesterase: 0.659、γGT: 0.565の順でFTがもっとも良好で、 7.2pg/mlが至適カットオフ値であった(感度81%、特異度74%) 。多変量 解析では年齢、BMI、HOMA-IRで補正してもFTはNASHに寄与する独 立因子であった( OR: 0.523 [0.320-0.877], p=0.014) 。 【考案】FT はインスリン抵抗性改善作用、抗炎症作用、抗酸化作用な どが知られており、FTの低下は男性における NAFLD/NASH 発症に寄 与する可能 性が示唆された。現在男性ホルモン補充療法の有用について も検討中である。 【結論】男性NASH では LOH症候群の頻度が高く、NASH 発症に男性 ホルモン低下が関与する可能性が示唆された。FT 値の測定は男性NASH 症例の拾い上げにも有用である。
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