中等度以上の運動がNAFLDの管理に重要(※PDF)

中等度~強い運動が非アルコール性脂肪性肝疾患の管理に重要であ
る:後ろ向き研究 HEPATOLOGY 2015;61:1205-1215.
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非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を合併した肥満者において、運動(身体
活動、PA)量を増やすことが治療上有益であると、最近報告された。しかし、NAFLD
の病状を改善して、その状態を適切に維持管理するのに推奨される最適な運動の
強さと量、生活習慣はまだよく判っていない。
この後ろ向き研究の主な目的は、運動(=中等度~強い運動、MVPA#1)が、
NAFLD を改善させる効果を調べて、最適な身体活動の量(=時間)がどのくらいな
のかを明らかにすることである。
肥満の中年男性 169 名を 12 週間の減量プログラムに登録し、食事制限に加えて、
有酸素運動からなる生活習慣の改善を行った。
これらの被験者を、運動の量に応じて、次にの 3 群に分けた。
40 名; MVPA <150 分/週
42 名; MVPA 150〜250 分/週
87 名; MVPA ≥ 250 分/週
MVPA≥250 分/週の被験者は、MVPA<250 分/週に比較して、脂肪肝が有意に改
善した(-31.8%対-23.2%)。この脂肪肝の改善は、体重の減少とは無関係であった。
MVPA≥250 分/週群は、MVPA<150 分/週群と比較して、腹部内臓脂肪組織の量
(-40.6%対-12.9%)、血清フェリチン値(-13.6%対+1.5%)、及び過酸化脂質の値
(-15.1%対-2.8%)が有意に低下し、血清アディポネクチン値は有意に増加した
(+17.1%対+5.6%)。これらの変化に関連して、末梢血単核細胞における sterol
regulatory element-binding protein-1c (SREBP1c)およびカルニチンパルミトイル
トランスフェラーゼ-1 (CPT-1)の遺伝子発現レベルも、有意に改善した(SREBP1c
減少、CPT-1 増加)。
結論:ライフスタイル管理の一環として MVPA≥250 分/週の運動は、肥満男性の
NAFLD の病状を改善させる。炎症および酸化ストレスを低減し、脂肪酸の代謝を
改善させることが、この効果を生むようだ。
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-解説-
食事制限と運動プログラム
被験者には 1,680kcal/日に摂取量を制限する食事プログラムを与えた。1 日 3 食、
1 食あたりの摂取量は、卵及び/または乳製品から 80kcal、野菜や果物から 80kcal、
肉、魚、及び/又は大豆製品から 160kcal、炭水化物や油から 240kcal であった。
毎週の講義中、被験者は主に食品を計量してカロリーを計算する方法を学び、
1,680kcal/日を維持するように食事のメニューを計画した。各講義の後、栄養士が
被験者の食事日記をチェックし(これに毎日の食事のカロリーを記録した)、食餌行
動の対面カウンセリングを行った。
被験者はまた、3 日間/週、90 分/日の有酸素運動プログラムを施行した。このプロ
グラムは、40〜60 分の歩行および/または軽いジョギング、15〜25 分のウォームア
#1;中等度~強い運動を指す(MVPA; moderate to vigorous intensity physical activity)
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ップとクールダウンのセッションで構成されていた。11(軽度)から 13(かなりハード)
までの範囲の Borg スケールを目標とするように、いくつかの指示を被験者に与えた
が、被験者は自分の健康状態に応じて適した運動の強度や量を自由に決めた。こ
のセッションに参加することで、被験者は自分の体調に応じて、運動の強度や量、
頻度を上げる方法を学んだ。この教育に基づいて、被験者は自宅で有酸素運動を
日々、行うように助言された。
過酸化脂質の指標
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肥満、中年男性において MVPA の量を
変えてライフスタイルに介入したときの、
肝疾患の病状の改善効果。
(A) 「MVPA≥250 分/週+食事制限」は、
アディポカインのレベルの不均衡と、
肝臓における炎症および酸化スト
レスを改善し、肝臓の脂質レベルを
調整することにより、治療効果を高
めた。
(B) MVPA の量を増加させると、腹部
肥満の軽減から肝障害の改善につ
ながった。
(C) 「MVPA≥150 分/ 週+食事制限」は、
肥満および脂質プロファイルの異
常を止めることができ、従って、潜
在的に肥満関連の肝障害を改善す
る可能性がある。
内臓脂肪組織↓
改善効果
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改善効果
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ウエスト↓
改善効果
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↓炎症
↓肝障害
強い運動
↓脂肪肝
↓線維化
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今回の研究において運動により NASH の肝障害が軽減したのは、運動によって体重が減少したた
まではなく、運動が Nrf2 の作用を亢進させたことによると考えられた。
※nuclear factor E2-related factor 2 (Nrf2);核因子 E2 関連因子 2 の略号で、酸化ストレスを関知
し、抗酸化応答の発動を調節する機能を持つ、主役の因子である。運動、特に MVPA≥250 min/週の
強い運動による酸化ストレスが Nrf2 の活性化を誘導する。
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ストレス耐性における運動と KAT 発現の役割
パネル A は、運動をしないときのストレスの影響を示す。ストレスはキヌレニン回路を介して、単球におけるイン
ドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)や肝臓におけるトリプトファン 2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO)を誘導し、血
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中のキヌレニンをある程度、時には過剰に増加させる。キヌレニンは脳に入ると神経を活性化する代謝物に変換
され、細胞ストレスを悪化させ、グルタミン酸の神経伝達を変える。これらの要因は、神経の栄養や行動に影響す
る。
パネル B は、運動がストレスに与える影響を示す。運動は転写コアクチベーターPGC-1α1 の発現の増加を促進
し、PPARα および PPARδ を通じて、骨格筋におけるキヌレニンアミノトランスフェラーゼ(KATS)の発現を増加さ
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せる。KATS はキヌレニンをキヌレン酸に代謝する。キヌレン酸は血液-脳関門を通過できないため、脳のキヌレニ
ンへの曝露が低減し、ストレスからの回復が促進される。
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