6/9用PDF: OLS推定量の共分散行列

コンピュータ経済分析 I OLS 推定ベクトルの共分散行列の推定など
2014 年 6 月 8 日作成 角田 保
1 初めに 1: Eviews の推定
以下のように変数 y, x2, x3 があるとき
y
62
83
55
64
45
17
x2
40
52
34
18
11
10
x3
18
22
11
23
13
12
y を定数項と,x2 と x3 で回帰すると,Eviews では以下の表で得られます.
図1
表から推計式の係数だけ書くと,
yˆ = −0.52 + 0.77x2 + 2.0x3
のように得られます.今回は係数の横にある標準誤差 (Standard Error) を,Scilab によって求めましょう.
1
2 初めに 2: 理論的に
今回も標準的な仮定を満たす n サンプル k 変数 OLS モデル
yi = β1 x1i + β2 x2i + · · · + βk xki + εi
(i = 1, 2, · · · , n)
(1)
で,前回同様に行列形式で書いたものが以下です.
y = Xβ + ε
(2)
ˆは
そして,前回レジュメで β の OLS 推定量ベクトル β
βˆ = (X ′ X)−1 X ′ y
(3)
E[εi ] = 0, V [εi ] = σ 2 , Cov(εi , εj ) = 0
(4)
で得られることを説明しました.
今回は誤差項の標準的な仮定
(i, j = 1, 2, · · · , n で i ̸= j) を満たすとき,
βˆ の共分散行列 (k 次正方行列) が,
ˆ = E[(βˆ − E[β])(
ˆ βˆ − E[β])
ˆ ′ ] = σ 2 (X ′ X)−1
V [β]
(5)
となることを示しましょう.その後,この式を基にして標準誤差を求めます.
3 (4) 式の行列表現
(4) 式を,ε1 , · · · , εn を縦に並べた n 項列ベクトルの誤差項ベクトル ε で表現しよう.まず各 εi の期待値は E[εi ] = 0
だから,それを縦に並べて
E[ε] = 0
(6)
0 は n 項列ベクトルで,成分が全て 0 のゼロベクトルです.共分散行列 V [ε] は,仮定より
E[(ε − E[ε])(ε − E[ε])′ ]
なのですが,(6) 式より,
E[εε′ ]
となります.これの (i, j) 成分は εi εj なので,(4) 式より,

σ2
0

E[εε′ ] =  .
 ..
0
0
σ2
..
.
0
···
···
..
.
···

0
0

.. 
. 
σ2
と,対角成分は σ 2 で,非対角成分は 0 となります.これを n 次単位行列 I を用いて書くと,
V [ε] = σ 2 I
(7)
ε ∼ (0, σ 2 I)
(8)
そこで,(6) 式と (7) 式を合わせた表現で,
とあらわすのが一般的です.
2
4 ちょっと復習 1:行列の転置行列と逆行列
行列 A, B で,積 AB が定義されているとき
(AB)′ = B ′ A′
また A, B とも n 次正方行列で,ともに逆行列を持つ場合,
(AB)−1 = B −1 A−1 ,
[(A)−1 ]′ = [A′ ]−1
5 ちょっと復習 2:期待値ベクトルと共分散行列
縦に n 個の確率変数を並べた,確率変数列ベクトル x について,
x ∼ (µ, G)
(µ と G はそれぞれ期待値ベクトルと共分散行列) とします.k ≤ n として,k 次正方行列 A と,k 項列ベクトル b とい
う定数の行列と定数の列ベクトルを考えます.このとき,
x ∼ (µ, G) =⇒ Ax + b ∼ (Aµ + b, AGA′ )
(9)
となることは,ちょっと以前に示しました.
6 βˆ の期待値と共分散行列
(3) 式より,
βˆ = (X ′ X)−1 X ′ y
(2) 式より = (X ′ X)−1 X ′ (Xβ + ε)
= (X ′ X)−1 X ′ Xβ + (X ′ X)−1 X ′ ε
= β + (X ′ X)−1 X ′ ε
(9) 式の x に ε, A に (X ′ X)−1 X ′
b に β として考えると,(8) 式と合わせて
∼ (β, (X ′ X)−1 X ′ σ 2 I((X ′ X)−1 X ′ )′ )
上の共分散行列の部分を簡単にしたい.まずその一部 ((X ′ X)−1 X ′ )′ については,4 節より,
((X ′ X)−1 X ′ )′ = X[(X ′ X)−1 ]′ = X([X ′ X]′ )−1 = X(X ′ X ′′ )−1 = X(X ′ X)−1
ˆ の共分散行列は,
となります.よって,β
ˆ = (X ′ X)−1 X ′ σ 2 I((X ′ X)−1 X ′ )′
V [β]
= (X ′ X)−1 X ′ σ 2 IX(X ′ X)−1
σ 2 はスカラーだから前に出す.I は単位行列だから掛け算で消去される.
= σ 2 (X ′ X)−1 X ′ X(X ′ X)−1
= σ 2 (X ′ X)−1
以上より,
βˆ ∼ (β, σ 2 (X ′ X)−1 )
3
(10)
7 βˆ の共分散行列の推定と,各係数の標準誤差
(10) 式での σ 2 は未知なので,βˆ の共分散行列の推定には,σ 2 を X, y を使って推定する必要があります.そこで σ
ˆ2
2
を,誤差項の分散 σ の推定量として,それは残差 εˆ を用いて,
σ
ˆ2 =
εˆ′ εˆ
残差平方和
=
n−k
n−k
ˆ の共分散行列の推定量
で表します (なぜこの推定量にするかはいずれ説明します).これによって,β
ˆ =σ
Vˆ [β]
ˆ 2 (X ′ X)−1
(11)
が得られます.この第 i 対角成分 (つまり (i, i) 成分) が,βi の分散の推定値となります.ですから,標準誤差はその正の
平方根です.
ˆ の対角成分を縦に並べて,それぞれ正の平方根をとったもの
OLS の結果表にある,各係数に対する標準誤差は,この Vˆ [β]
です.
8 最初の Eviews のデータで Scilab で求めてみましょう.
以下実習です.
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