第2章.株式・株式市場 (4).株価の決定理論 ・ 株式: - 株式会社に対する所有権を細かく等分し、それを表示 した有価証券(株券) ・ 株主の権利: – ① - ② - ③(会社解散時の) - ○配当割引モデル: - 上記②の観点から株価の決定メカニズムを考える 1 • 株式からは、i年後にDi円の配当を受取る ことができる(と見込まれている)。 受取配当 1年後 2年後 3年後・・・ D1 D2 D3 ・・・ 2 • 株式:配当を受け取る権利(利益配当請求権) • 株価= 1年後 受 取 D1 配当 現 在 D1/(1+r) 価値 2 年後 3年後… D2 D3… D2/(1+r)2 D3/(1+r)3… 金利: r ・ 3 • 1年後に受け取る100円の現在価値? – 現在時点で x 円を持っており、1年間預けて金 利を稼げば、1年後に元利合計で100円を受取 ることができる。 – 1年後の100円と現在の x 円とは同等の価値 を持つ。 – 1年後の100円の現在価値は x 円 – 金利を5%とすると、 – 1年後の100円の現在価値は 95 円 • 株価 • : ①式 4 ・毎年一定の配当を受け取る株式のケース 従って、D1= D2 = D3= ‥‥=D 、①式より 株価P=D/(1+r)+ D/(1+r)2+ D/(1+r)3+‥‥ :②式 等比数列の無限和(無限等比級数): 公比 1/(1+r) 初項 D/(1+r) P=初項/(1-公比) if |公比|<1 株価P= D /(1 r ) 1 1 1 r = :③式 ・ 例えば、配当D=50円、金利5%(r=0.05)なら、 株価 5 ○株式投資のリスク • 将来の株式配当は、確定しておらず不確実 – D1 , D2 , D3 ,・・・は平均的に見込まれる大きさ (期待値) – 1年後の100円:不確実でリスクのある100円は 安全確実な100円より低く価値を評価する 6 • 不確実でリスクのある1年後の100円の現 在価値 – 100/(1+r+δ) – δ:リスクプレミアム – δの大きさを規定する要因: • その企業の株式配当の不確実性・リスク↑⇒ δ↑ • 投資家のリスク回避度↑⇒ δ↑ • 株式投資のリスクを考慮した上での株価 の決定 • 株価 • : ④式 7 ・毎年一定の配当を受け取る株式のケース 従って、D1= D2 = D3= ‥‥=D 、④式より 株価P=D/(1+r+δ)+ D/(1+r+δ)2+ D/(1+r+δ)3+‥‥ :⑤式 等比数列の無限和(無限等比級数): 公比 1/(1+r+δ) 初項 D/(1+r+δ) P=初項/(1-公比) if |公比|<1 株価P= D /(1 r ) = 1 1 1 r :⑥式 ・ 例えば、配当D=50円、金利5%(r=0.05)、リスクプレミアム 3%(δ=0.03)なら、株価 8 ○企業が成長し、1株当り配当も毎年増大(成長率g)する ケース D1= D, D2 = D(1+g), D3= D(1+g)2, ‥‥ では、株価Pを表す式⑥はどう変わるか? ・株価P=D/(1+r+δ)+ D(1+g)/(1+r+δ)2 +D (1+g)2/(1+r+δ)3+‥‥ :⑦式 等比数列の無限和(無限等比級数): 公比 (1+g)/(1+r+δ) 初項 D/(1+r+δ) D /(1 r ) = ・株価P= 1 g 1 1 r :⑧式 9 • 株価の決定要因: • 例えば、配当D=50円、金利5%(r=0.05)、リ スクプレミアム3%(δ=0.03)、企業成長率 4%(g=0.04)なら、 • 株価 10 ◎(4)式についての厳密な説明 ○株式投資の予想収益率E(R0) =[予想配当+予想キャピタルゲイン]/投資額 =1株当り[予想配当D1+予想キャピタルゲイン] ÷現在の株価P0 1年後の予想株価E(P1)-現在の株価P0 E(R0)={D1+E(P1)-P0}/P0 : ①式 将来の配当・株価は、確定しておらず不確実である。 D1,E(P1), E(R0)は平均的に見込まれる大きさ (期待値) 11 • 投資家の資産選択 – 預金・債券に投資 or 株式に投資 収益率は 金利rで確定 収益率は不確実で 平均値がE(R0) 投資家は一般にリスク回避的と考えられる: 予想収益率 i.e. リターンが同じなら、リスクの あるものより安全確実なものを好む。 すると E(R0)=r なら、投資家は安全確実な 預金・債券投資を好む 12 • 投資家が株式を保有(に投資)するためには、 • E(R0)>r となることが必要。 • E(R0)=r +δ (δ>0) の時、投資家は預金・債券投 資と株式投資とを同等(無差別)だと見なす。 • δはリスクプレミアム: – 投資家がリスクのある株式を保有するために、そ のリスクの埋め合わせとして必要とされる予想収 益率の(安全確実な金利に対する)上乗せ分 • δの大きさを規定する要因: – その企業の株式の不確実性・リスク↑⇒ δ↑ • より正確には、分散投資によっても削減できない、その企業株式 のリスク(分散不能リスク)↑⇒δ↑ cf. 前期第3章(2)資産運用・ 投資のリスク分散 – 投資家のリスク回避度↑⇒ δ↑ 13 ○投資家の資産選択と株式投資収益率 • 預金・債券に投資(収益率=金利r) or 株式に投資(収益率E(R0)) ⇒有利な方に投資 • E(R0)>r+δ なら、株式投資が有利 ⇒株式が買われる⇒株価P0上昇 ⇒①式より、株式投資の収益率E(R0)低下 • 逆に、E(R0)<r+δ なら、E(R0)上昇 • 結局、最終的には E(R0)=r+δ が成立。 ①式より E(R0)=(D1+E(P1)-P0)/P0=r+δ ∴ 現在の株価P0= (D1+E(P1))/(1+r+δ ): ②式 14 • では、 ②式の中の1年先の株価E(P1)はどう決定 されるのか? – 1年先にも現在時点と同様の資産選択(預金・ 債券or株式)が行われると考える。単純化して、 1年先の金利も現在と同じ r と仮定。 – ②式を導いた論法を1年ずらして、1年先の時 点での資産選択について適用する。 時間 現在 1年先 2年先 15 – 1年先から1年間株式に投資した場合の予想収 益率をE(R1)とすると、①式と同様に – E(R1)= (D2+E(P2)-E(P1))/ E(P1) で あり、 – これが資産選択行動の結果、金利プラス株式 投資のリスクプレミアム r+δ に等しくなる。 – E(R1)=(D2+E(P2)-E(P1))/E(P1) =r+δ より • よって、 E(P1) = (D2+E(P2))/(1+r+δ ):③式 16 • ③式を②式に代入 D1 D 2 E ( P 2) P0= 2 1 r δ (1 r δ) 上の式のE(P2)について同様の代入操作を行い、 さらにE(P3)、E(P4)・・・に同様のプロセスを繰り返 すと、結局 ・株価P0=D1/(1+r+δ)+ D2/(1+r +δ)2 + D3/(1+r +δ )3+‥‥ : ④式 17 (4)株式投資の指標 ・配当利回りYield = cf. ・総資産に占める純金融資産の 割合が高い企業 ・⑧式が成立しているなら 配当利回り=r+δ-g 日経金融07.7.20. 18 ・配当利回りと長期金利 (%) 12 10 8 長期金利 6 4 配当利回り 2 0 70 75 80 85 90 95 00 05 (年) 19 ・PER:Price Earnings Ratio 株価収益率 = 株式が年間企業利益の何倍まで 買われているのかを示す – 株価の割安・割高の指標 – 企業の成長性と関連 • ⑧式が成立しているとすると、 ⑧式の両辺を企業収益Eで割 ると • PER=D/E÷(r+δ-g) =配当性向/ (r+δ-g) 日経金融07.6.6. 20 ・ 日本株PER低下の解釈 ①日本株の割高が是正された ②日本の金利rは世界一低い ことを考えると、むしろ割安に なった。 ③日本企業の収益成長gは 期待できないと市場は判断 日経新聞05.6.03. 21 ・PBR:Price to Book Value Ratio 株価純資産倍率 = 総資産-負債 = PBRが1以下は、生きている 企業の価値が解散価値以下 :資本が有効に活用されて いない企業 or 割安に放置されている株 日経新聞07.6.15. 22 PER PBR トヨタ 配当利 回り 1.83% 14.40倍 2.00倍 本田 1.67 12.42 1.64 日産 2.83 11.80 1.53 松下 1.44 23.61 1.31 シャープ 1.32 21.57 1.85 2007年10月12日の株価で計算 23
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