有限増分定理とその周辺 鈴木 範男 2014 年 7 月 4 日 f = 0 ⇒ f = 定数 1 これは次の定理の特別な場合である。(m = M = 0 の場合にあたる。) 有限増分定理 2 f (x) が a, b を含むある開区間で微分可能として m ≤ f (x) ≤ M (a ≤ x ≤ b) とすると、 m(b − a) ≤ f (b) − f (a) ≤ M (b − a) (1) が成り立つ。 2.1 積分を使う素直な証明 f (x) が積分可能ならば積分の単調性から b m(b − a) = b mdx ≤ a b f (x)dx ≤ a M dx = M (b − a) a 更に f (x) の連続性を仮定すれば微積分学の基本定理により b f (x)dx = f (b) − f (a) a なので (1) を得る。 この証明は大変よろしいが「f = 0 ⇒ f = 定数」を微積分学の基本定理の証 明に使うときは循環論法になってしまうので、積分を使わない証明もつけておき たい。 1 2.2 平均値の定理を使う証明 平均値の定理によれば f (b) − f (a) = f (c) かつ a < c < b b−a なる実数 c が存在するが m ≤ f (c) ≤ M なので (1) が出るが、平均値の定理と de l’Hˆopital の定理は教育上よくないと思うので、違う証明を考えたいところ。 2.3 背理法による証明 f (b) − f (a) > M (b − a) と仮定する。このとき、 を選び f (b) − f (a) > α > M なる α b−a F (x) = f (x) − f (a) − α(x − a) とおくと F (x) = f (x) − α ≤ M − α < 0 F (a) = 0 また α の取り方から F (b) = f (b) − f (a) − α(b − a) > 0 となる。そこで F (x) > 0 なる x の下限 c = inf{x ∈ [a, b]|F (x) > 0} を取ると、下限の定義により a ≤ x < c で F (x) ≤ 0 であるので c = a なら F (x) の 連続性により F (c) ≤ 0 であり、c = a のときは F (c) = F (a) = 0 であるからいず れにせよ F (c) ≤ 0 である。このとき微分係数の定義により lim x→c F (x) − F (c) − F (c) x−c =0 であるので任意の正の数 ε に体して F (x) − F (c) − F (c) < ε x−c F (x) − F (c) ⇔ F (c) − ε < < F (c) + ε x−c c<x<d⇒ となる d が取れる。F (c) < 0 であるから F (c) + ε < 0 となるように取れば(例え 1 ば ε = (−F (c)) とすればよろしい) 2 c < x < d ⇒ F (x) − F (c) < 0 ⇒ F (x) < F (c) ≤ 0 ⇒ F (x) < 0 となるような d が取れる。これは c の取り方に矛盾する。 2
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