大阪大学基礎工学部 2014 年度後期 数学 C 講義ノート 10 フーリエ変換の応用:熱方程式の初期値問題 次の熱方程式の初期値問題を考える. 2 ∂u (x, t) − ∂ u (x, t) = 0, t > 0, x ∈ R, ∂t ∂x2 u(x, 0) = f (x), x∈R (P) 第一式は熱方程式とよばれ,無限に長い針金における熱伝導を記述する一つのモデルである.u = u(x, t) は 時刻 t,位置 x における温度を表す未知関数である.f = f (x) は時刻 0,位置 x における温度を表す関数で, 初期データとよばれる. 与えられた f (x) に対して,(P) を満たす u を求めることを,初期値問題 (P) を解くといい,u を (P) の解 という. ここでは,フーリエ変換を用いて (P) を解いてみよう.(P) の第一式を x 変数についてフーリエ変換す ると, [ ] ∫ ∞ ∂u 1 ∂u F (·, t) (ξ) = √ (x, t)e−ixξ dx ∂t 2π −∞ ∂t [ ] ∫ ∞ ∂ 1 −ixξ √ = u(x, t)e dx ∂t 2π −∞ ∂u ˆ = (ξ, t) ∂t および [ ] ∂2u F (·, t) (ξ) = −ξ 2 u ˆ(ξ, t) ∂x2 より,u ˆ(ξ, t) が満たす方程式は t に関する常微分方程式 ˆ ∂u (ξ, t) + ξ 2 u ˆ(ξ, t) = 0, t > 0, ξ ∈ R, ∂t u ˆ(ξ, 0) = fˆ(ξ), ξ∈R となる.この方程式を解くと, 2 u ˆ(ξ, t) = fˆ(ξ)e−ξ t を得る.従ってもとの u は ] [ 2 u(t, x) = F −1 [ˆ u(·, t)] (x) = F −1 fˆ(ξ)e−ξ t (x) となる. [ さて,F fˆ(ξ)e−ξ 2 t ] (x) を計算しよう.F[f ∗ g](ξ) = f ∗ g(x) = √ 2π fˆgˆ の両辺を逆フーリエ変換すると [ ] √ g (ξ) (x). 2πF −1 fˆ(ξ)ˆ ここで g = F −1 [e−ξ t ] とおくと, 2 [ 2 ] √ ] [ 2 f ∗ F −1 e−ξ t = 2πF −1 fˆ(ξ)e−ξ t . 1 ここで例 8.2 より, [ 2 ] [ ] x2 1 1 x2 F −1 e−ξ t (x) = F e−ξ2 t (x) = √ e− 4t = √ e− 4t . 2t 2t 従って, ) ] 1 − x2 4t √ u(x, t) = ∗ f (x) e 4πt ) ∫ ∞( 1 − (x−y)2 4t √ = e f (y)dy 4πt −∞ [( を得る.上の表示に現れる関数 1 − x2 G(x, t) = √ e 4t 4πt を熱核(ガウシアン)という. 2
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