第8回1限

熱力学 I (金川) 講義資料 [18] 可逆過程のエントロピー変化 (2014/6/24)
1. 講義のまとめ:
板書においては, 理想気体のエントロピー “変化”
を, 2 種類の状態量で表す表式群を導いた. 導出の要点
と注意すべき点は, 以下のとおりにまとめられる:
1) 可逆変化に対するエントロピーの定義式 dS ≡ d′ Q/T
において, 系への入熱量 d′ Q に対して, 準静的過程
に対する熱力学第 1 法則 d′ Q = dU + pdV を適用
して, 非状態量である熱量を状態量だけで表現する.
ここに, S はエントロピー, T は絶対温度, U は内
部エネルギー, p は圧力, V は容積である.
ii) 絶対温度 T と圧力 p による表現:
T2
p2
∆s = cP ln
− R ln
T1
p1
iii) 圧力 p と比容積 v による表現:
p2
v2
∆s = cV ln
+ cP ln
p1
v1
(1)
(2)
(3)
下添え字 1 および 2 はそれぞれ状態 1 と状態 2 を
意味する. cP と cV はそれぞれ定圧比熱と定容比
2) 理想気体ならば, 既に学んだように, dU = mcV dT
と書ける1 [m は系の質量, cV は定容 (定積) 比熱].
これを使う.
i) 絶対温度 T と比容積 v による表現:
T2
v2
∆s = cV ln
+ R ln
T1
v1
さらに, 状態方程式として, Boyle–
Charles の法則 pV = mRT も成立する (R は気体
定数 [J/(kg·K)]). 2 これを使って, 状態量 (p, V, T )
を書き換える. すなわち, (p, V ), (V, T ), (T, p) とい
う, 3 通りの組み合わせで表現可能である.
熱であって, 理想気体ならば, 既に学んだ Mayer の
関係式 cP − cV = R が成立する.
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3. 練習問題:
1) 単位質量あたりの比エントロピー (specific entropy)
ではなく, エントロピー S (= ms) に対して, 式 (1)–
(3) に対応する関係式群を導け.
2) 式 (1)(2) を, 比容積 v ではなく, 容積 V を使って
3) 微小エントロピー dS を, 2 つの状態量の組み合わ
表現しなおせ.
3
せ で表現した後に, 定積分を行う. すると, エント
∫ 2 ′
dQ
ロピー変化を, ∆S =
なる定積分より求め
T
1
ることができる. あくまで, 2 点間の変化量であっ
て, ある状態における値を表すものではない.
4
4) 比熱は, 一般には温度の関数だが, 理想気体の場合
は定数として扱うことが多い. 5
5) エントロピーは状態量であり, エントロピー変化は
経路に依存しない (始点と終点のみに依存). Claud′ Q
sius 積分
の被積分関数は, 可逆過程ならば
T
微小エントロピー dS に等しいが, だからといって,
Clausius 積分はエントロピーではありえない.
6
2. 結果:
系が状態 1 から状態 2 まで準静的に変化するとき,
(微小な) 比エントロピー ds を定積分する. 簡単のた
め, 理想気体を仮定して, (有限の) エントロピー変化
∆s (= s2 − s1 ) の 3 とおりの表現を導いた:
1 定容熱容量 C を用いれば, 質量 m を使わずとも, dU = C dT
v
V
と書ける. 比熱 (比熱容量) と熱容量の差異に注意せよ.
2 状態方程式は, pv = RT や p = RρT に書き換えられる (確か
めよ). ここに, v = V /m は比容積, ρ = v −1 は密度であって, V の
代わりに v か ρ を使ってもよい. 状態量の選び方は, (p, v, T ) の組
み合わせでも, (p, ρ, T ) でもよい. もちろん (V, v, ρ) は誤りである.
3 熱力学的状態量 (状態変数) は 2 つが独立である. Boyle–Charles
の法則を眺めれば理解できるだろう. 詳細は熱力学 II で学ぶ.
4 多くの学生が勘違いしやすい点である. 十分な注意を払う.
5 本資料では, 理想気体の比熱は定数であるとみなす.
6 Clausius 積分は周回 (一周) 積分である. サイクルならば, 可逆
か不可逆によらず, エントロピー変化はゼロとなる (確かめよ).
3) 可逆断熱変化 (reversible adiabatic change/process)
ならば, ∆s = 0 を得る. これを示せ.
4) 定圧変化ならば, 式 (2)(3) より, ∆s = cP ln(T2 /T1 ) =
cP ln(v2 /v1 ) を得る. これを示せ.
5) 定容変化ならば, 式 (1)(3) より, ∆s = cV ln(T2 /T1 ) =
cV ln(p2 /p1 ) を得る. これを示せ.
6) 等温 (isothermal) 変化ならば, 式 (1)(2) より, ∆s =
R ln(v2 /v1 ) = R ln(p1 /p2 ) を得る. これを示せ.
4. 期末試験に向けて: 中間試験が悪かった者も決して
あきらめないこと. 不明点は必ず教員に質問すること.
1) 数式だけが並べられた答案, 論理的でない答案は不
可である. 考え方の筋道を日本語で適切に補う. 記
号の定義を必ず述べる. 解読可能な答案を試験時間
内に作成できるように, 十分に準備して試験に臨む.
2) 全ての式を導けるようにしておく. 丸暗記ではなく,
導き方を理解し, 仮定や適用範囲を整理する.
3) 本資料からも明らかなように, 全ての出発点が熱力
学第 1 法則にある. したがって, 中間試験の範囲を
も復習する (基礎を重視).
4) 講義で扱った概念と用語を, 日本語と数式の両面か
ら, 簡潔に説明できるようにしておく.
7 理想気体に対して, 定圧熱容量 C と定容熱容量 C
P
V の差をと
る. すると, CP − CV = mR が成立する (必ず確かめよ).