8 フーリエ変換

大阪大学基礎工学部 2014 年度後期 数学 C 講義ノート
8 フーリエ変換
8.1 フーリエ変換の定義
周期 2L (L > 0) の関数 f = f (x) のフーリエ級数が f に収束しているとする.
∞
∑
f (x) =
cn einπx/L ,
n=−∞
1
2L
cn =
ここで,ξn =
∫
L
f (y)e−inπy/L dy.
−L
nπ
(n + 1)π nπ ( π )
,△ξn =
−
=
とおくと,
L
L
L
L
(
)
∫ L
∞
∑
1
−iξy
f (x) =
△ξn
f (y)e
dy eiξn x
2π
−L
n=−∞
と書ける.ここで形式的に L → ∞ とすると,
f (x) =
∞
∑
(
△ξn
n=−∞
1
2π
∫
)
L
f (y)e
−iξy
∫
dy e
iξn x
−L
→
∞
(
−∞
1
2π
∫
∞
f (y)e
−iξy
)
dy eiξx dξ.
−∞
従って,一般に周期関数でない関数 f (x) に対して,フーリエ級数展開の類似として,
1
f (x) = √
2π
∫
∞
−∞
(
1
√
2π
∫
∞
)
f (y)e−iξy dy eiξx dξ
(8.1)
−∞
が成立することが期待される.そこで,
1
fˆ(ξ) = F [f ] (ξ) = √
2π
∫
∞
f (y)e−iξy dy
−∞
と書き,f のフーリエ変換という.f (x) が R 上絶対可積分,すなわち
積分は意味を持ち,fˆ(ξ) が定義される.
∫∞
−∞
|f (y)|dy < ∞ のときには上式の
8.2 フーリエ変換の例
例 8.1. 関数
{
1
f (x) =
0
(−b < x < b)
(それ以外)
のフーリエ変換は,
[
]b
1
1 −iξx
e−iξx dx = √
e
2π −iξ
−b
−b
√
)
sin
bξ
1
1 ( −ibξ
2
.
=√
e
− eibξ =
π ξ
2π −iξ
1
fˆ(ξ) = √
2π
∫
b
1
例 8.2. f (x) = e−ax (a > 0) のフーリエ変換を求める.そのために次の補題を示そう.
2
補題 8.3.
∫
∞
I=
e−x dx =
2
√
π.
−∞
証明.
(∫
I2 =
∫
∞
e−x dx
2
−∞
∞ ∫ ∞
=
) (∫
∞
e−y dy
2
)
−∞
e
−(x2 +y 2 )
−∞ −∞
∫ 2π ∫ ∞
dxdy
e−r rdrdθ
0
0
]∞
[
1 −r2
= π.
= 2π − e
2
0
2
=
∫ ∞
[
]
2
2
1
e−ax −iξx dx
F e−ax (ξ) = √
2π −∞
∫ ∞ (√
)2 (
)2
1
√
√
−
ax+ 2iξ
+ 2iξ
a
a
=√
e
dx
2π −∞
∫ ∞ (√
)2
ξ2
1
√
−
ax+ 2iξ
a
e
= √ e− 4a
dx
2π
−∞
∫ ∞
ξ2
2
1
e− 4a
=√
e−x dx
2πa
−∞
1 − ξ2
= √ e 4a .
2a
ここで,3行目から4行目への変形には以下の事実を用いた:複素平面上で下図の積分路において関数 e−az
2
を積分したときの値は 0 となる(コーシーの積分定理).また R → ∞ としたとき,C2 , C4 上の積分値は 0 に
収束する.従って C3 上の積分値と C1 上の積分値は R → ∞ のとき一致する.すなわち,
∫
∞
e
iξ
−a(x+ 2a
)
∫
2
∞
dx =
−∞
e−y dy.
2
−∞
(下図は ξ > 0 のときの図であるが,ξ < 0 のときも同様である.)
C
iξ
2a C3
C2
−R
C4
0
C1
2
R
8.3 逆フーリエ変換
R 上の関数 g = g(ξ) に対して,
∫
1
F −1 [g](x) = √
2π
∞
g(ξ)eiξx dξ
−∞
を g の逆フーリエ変換という.
定理 8.4. 関数 f = f (x) は R 上で有界かつ連続,絶対可積分であるとし,さらに fˆ(ξ) も R 上絶対可積分と
する.このとき,
[
]
F −1 [F[f ]] (x) = F F −1 [f ] (x) = f (x)
が成立する.
注意 8.5. この定理は,定理の仮定を満たす f に対しては
1
f (x) = √
2π
∫
(
∞
−∞
1
√
2π
∫
∞
)
f (y)e−iξy dy eiξx dξ,
−∞
すなわち最初に成立することを期待した式 (8.1) が正しいことを意味している.
この定理を示すため,次の補題を準備する.
補題 8.6. 関数 f, g は R 上絶対可積分とする.このとき,
∫
∞
−∞
∫
F[f ](ξ)g(ξ)eixξ dξ =
∞
f (x + y)F[g](y)dy.
−∞
証明.
∫
∞
−∞
)
∫ ∞
1
√
f (y)e−iyξ dy g(ξ)eixξ dξ
2π −∞
−∞
)
∫ ∞(
1
√ f (y)e−i(x−y)ξ dy g(ξ)dξ
=
2π
−∞
)
∫ ∞(
1
√ f (x + y)e−iy dy g(ξ)dξ
=
2π
−∞
(
)
∫ ∞
∫ ∞
1
f (x + y) √
g(ξ)e−iyξ dξ dy
=
2π −∞
−∞
∫ ∞
=
f (x + y)F[g](y)dy.
∫
F[f ](ξ)g(ξ)eixξ dξ =
∞
(
−∞
ここで,3行目から4行目の式変形ではフビニの定理(積分順序の交換を正当化する定理)を用いた.
さて,定理 8.4 を証明しよう.
2
gε (ξ) = e−ε|ξ| (ε > 0) とおくと,例 8.2 より,
x2
1
F[g](ξ) = √ e− 4ε .
2ε
3
補題 8.6 より,
1
√
2π
∫
∞
−∞
F[f ](ξ)gε (ξ)e
ixξ
∫ ∞
1
√
f (x + y)F[gε ](y)dy
2π −∞
∫ ∞
y2
1
1
√
f (x + y) √ e− 4ε dy
2π −∞
2ε
∫ ∞
√
2 √
1
1
√
f (x + 2 εz) √ e−z 2 εdz
2π −∞
2ε
∫ ∞
√
2
1
√
f (x + 2 εz)e−z dz.
π −∞
dξ =
=
=
=
ここで右辺は ε → 0 のとき
1
f (x) · √
π
∫
∞
e−z dz = f (x)
2
−∞
に収束する(補題 8.2).一方左辺は ε → 0 のとき,gε (ξ) = e−ε|ξ| → 1 より
2
1
√
2π
∫
∞
−∞
F[f ](ξ)eixξ dξ = F −1 [F[f ]] (x)
に収束する(厳密にはルベーグの収束定理などを用いるが,詳細は省略する).以上より
F −1 [F[f ]] (x) = f (x)
[
]
を得る.F F −1 [f ] (x) = f (x) についても同様である.
4