農学部 NOMAKUCHI 応用生物科学科 生物資源制御学講座 SHIN T A R O 野間口 眞太郎 教授 「子の世話の進化などを研究する行動生態学」 「農業によって育まれてきた身近な生き物達の保全生態学」 「行動データの統計的解析法の開発」 [キーワード] 行動生態学,保育行動,カメムシ類,行動変異,生物統計学, 農地環境,保全生態学 動物行動の解析-なぜカメムシが子を育てるのか?研究紹介 ◆研究概要 当研究室では,伝統的日本農業が育んできた身近な生き 物が,生活史の各場面で繰り広げる様々な行動について 「生き物自身のどんな役に立っているのか?」と「どの ように進化してきたか?」という疑問を解決すべく,研 究と教育を行っています.それら生き物たちは,身近な 存在とはいえ,未だ多くの謎を持つため,その解明には 高い学問的価値があります.当研究室は,押し寄せる輸 入農産物による圧力の中で,唯一許される日本農業の付 加価値は, 「身近な生き物たちを生息させる環境を提供し ている」ことであると考えています.この認識を「常に」 ・ 「強く」持ち,学内外に対してアピールしています. ◆子育てをするカメムシとヨシノボリ 世界には5万種類以上のカメムシがいますが,その中で も日本には給餌などの熱心な子育てを行う5種のツチカ メムシがいます.その5種類とは,①ベニツチカメムシ, ②シロヘリツチカメムシ,③ミツボシツチカメムシ,④ フタボシツチカメムシ,⑤マダラツチカメムシ,であり, 当研究室は全種を飼育し,研究しています.これらの雌 親は卵や幼虫を保護したり,幼虫に餌として栄養卵を与 えたり,果実や種子を巣に運んで幼虫に食べさせます. 一方,魚類にも子育てをする種がいます.トウヨシノボ リは,比較的流れの緩やかな渓流や湖に生息するハゼ科 の魚で,その雄が子育てを行います.雄の成魚は水底の 石の下に巣を作り,雌に産卵させた後,卵塊を孵化まで 保育します.研究室では,佐賀平野に生息する淡水魚の 中で,トウヨシノボリなどの子育てをする種を飼育し, 魚の子育て行動を分析しています. ◆個性を持つ魚達 動物集団の中の個体が持つ生得的な行動変異にも注目 し,実験的な研究を進めています.最近,野生動物でも, 人間と同じように臆病さや大胆さなどの性格の違いがあ ることが分かってきました.淡水魚のモツゴやグッピーを 利用し,このような性格の違いと脳内ホルモンの関係,体 色の派手さとの関係を調べています.これらの基礎情報 は,野生動物の保全方法や,有用動物の飼育・養殖方法の 効率性に寄与するものと期待しています. ◆行動データの統計的解析法 メダカやカダヤシ,モンシロチョウなど様々な動物の行 動データを使って,状況に合わせた適切な解析を行うこと のできる統計解析法の開発も進めています. 写真:ベニツチカメムシ 写真:ベニツチカメムシの子育て 写真:トウヨシノボリ雄 掲載情報 2016 年 12 月現在 環境行政関係者へ 一言アピール これまで環境アセス事業ヘの評価,環境政策ヘのアドバイス,市民への環境 教育などに協力しています. 産学・地域連携機構より 皆さんの周りでも,身近であるが故に,失ってしまった大切な「モノやコト」がありませんか? 一見,ただ生息しているだけに見える小さな生き物たちにも,地域の環境に影響を与え,自ら も変化してきた歴史があります.本研究に興味がある方は,お問合せください. 佐賀大学研究室訪問記 2016 佐賀大学 産学・地域連携機構 (佐賀県佐賀市本庄町1番地) (お問い合せ先) 国立大学法人 佐賀大学 学術研究協力部 社会連携課 TEL:0952-28-8416 E-mail:[email protected]
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