教育学部 K A I K Y O K O 甲斐 今日子 教授 「衣服と健康 - 衣服の快適性と安全性に関する研究 -」 [キーワード] 衣服と健康，快適性（着心地）と安全性，衣服設計，衣服管理， アレルギーとの関連，環境影響，消費者問題 衣 服 と 健 康 に 関 す る 様 々 な 課 題 解 決 に 向 け て ！ 研究紹介 ◆研究概要 佐賀大学に赴任して３０年，被服衛生学を専門分野として 人の健康に関する研究を進めています．これまでは対象を絞 って調査や実験を行い，着用者にとって快適で安全な衣服設 計を行ってきました． ◆主な研究成果 特に，ライフワークとも言うべき「おむつの研究」は着用 者である赤ちゃんにとっての着心地を最優先したアプロー チから研究を進めました．学会発表だけではなく，子育て情 報誌への研究成果の提供や自治体などが主催する子育て講 座の講師を務めることで，多くの子育て中の人たちの応援が できるよう心がけてきました． また，働く女性が安全でカッコよく妊娠期を過ごせるマタ ニティウエアの設計も印象的な仕事となりました．教育学部 （旧文化教育学部）の卒業生の多くは教師として学校現場で 頑張っています．働きながら妊娠期を過ごす卒業生の支援に なれば，という思いで始めた研究でした． アクリル不織布スポンジの性能評価を受託研究として行 い，旭化成ホームプロダクツ㈱から「洗剤不要の台所用スポ ンジ（ズビズバ®）」が商品化されました（右下写真）．スポ ンジ表面の不織布（表面に溝のあるループ状のアクリル繊維 からなる）が水と一緒に汚れを掻き落とす仕組みで，洗剤を 使わずに水だけで汚れを落とす優れ もののヒット商品です．この研究のき っかけは，当時佐賀医科大学皮膚科の 先生が，手荒れのひどい患者さんのた めに推奨する，洗剤を使用せず汚れを 落とせる「ハンドメイドのアクリルた わし」の洗浄性を確認したいという ズビズバ® 」 ことから始まりました．何千枚もの 水だけで「OK！アクリルスポンジ 汚染皿を洗いましたが，大変楽しい 研究でした．さらに，冷房環境と冷え性との関連について， 企業の保健師さんと共同で，女性を対象とした皮膚血流量の 測定などを実施しました． 現在は，この冷え性の研究から明らかになった課題， 「更年期 をいかにのりきるか更年期女性のための衣服設計」というテ ーマで研究を進めています．高齢者のための衣服研究は数多 くありますが，更年期を対象とした研究は見当たりません． 更年期をのりきるための「着心地のいい衣服」を提案したい と思います． ◆衣服の着心地について では， 「着心地のいい服」とはどのようなものでしょうか． 窮屈でない，動きやすい，季節に合っている，といったことが 思い浮かぶかと思います．このように一般的に考えられる着 心地を「物理的快適性」と呼びます．実は，衣服の着心地（快 適性）には下表のように，物理的要因だけでなく，社会的・心 理的要因が大きく関わっています． 表 衣服の快適性 物理的 気候適合性・形態適合性・動作性・ 衛生性など （快適性） 感覚的 視覚的・触覚的（見た目の印象・風合い・ 肌触りなど） （快適性） 社会的・心理的 自己表現・服装規範・慣習・時代の要請・ 審美性・流行・ブランドなど （快適性） この三つのバランスを考えた衣服でなければ，本当の意味で 「快適な衣服」とは言えません．健康や安全性をテーマにし た研究であっても，衣服の「格好よさ」は忘れないで進めなけ ればならないと考えています． ◆学校教育や社会教育の中で これらの研究成果を学校教育の「家庭科」の中で活かして いくことが教育学部の教員としての使命でもあります．学生 の授業，教員免許更新講習，附属学校園や地域の教育現場で の指導・助言を通して，また地域の生涯教育の講習を通して 発信していきたいと考えています． 掲載情報 2017 年 1 月現在 女性を応援する 企業の皆様へ 一言アピール 衣服と健康に関する様々な課題解決に向けて研究を進めています．三つの 快適性のバランスが崩れた時に衣料障害などの消費者問題が生じていま す．より良い衣生活のために，協力して研究を進めたいと思います． 産学・地域連携機構より 「着心地のいい服」を満たす必要要件に「格好のよさ」があることは，まさに目から鱗がおち る定義です．着用する人が物理的・感覚的快適性に加え， 「個性」や「社会性」に対する満足感 を得られる衣服の登場を期待しています．興味がある方は気軽にお問合せください． 佐賀大学 佐賀大学 研究室訪問記 産学・地域連携機構 （佐賀県佐賀市本庄町１番地） （お問い合せ先） 国立大学法人 佐賀大学 学術研究協力部 社会連携課 TEL：0952-28-8416 E-mail：[email protected]
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