北垣 浩志 - 佐賀大学 産学地域連携機構

農学部
KITAGAKI
生物環境科学科
資源循環生産学講座
HIROSHI
北垣 浩志
教授
「麴や酵母などを使う発酵食品の機能性を明らかにし,高める研
究」
[キーワード]
和
和食,発酵食品,麴,酵母,セラミド,腸内細菌
食
・
麴
の
力
を
健
康
に
!
研究紹介
◆研究概要
日本人の平均寿命が世界トップレベルであることに表
されるように,日本の食事,和食にはさまざまな健康効
果があると期待されています.しかしながら,和食のど
の要素が健康に良いのかについてはまだ充分な知見がな
く,これから多くの研究が必要です.
和食の特徴は,味噌,醤油,日本酒,甘酒,お酢,黒
酢,酒粕,焼酎粕など,発酵食品を多く含むことです.
これらの発酵食品には麴(こうじ,糀)が必ず含まれて
います.麴とは米に非病原性のカビ(Aspergillus)を
生やしたものです.麴の役割はこれまで米や大豆に含ま
れるでんぷんの糖化作用と考えられてきましたが,近年
高い健康機能性があることが続々と発見されています.
麴は日本独自の素晴らしい素材です.当研究室では,麴
の健康機能性を解明することは,和食の健康機能性を明
らかにすることであると考えています.
◆麴グリコシルセラミドの腸内細菌改善効果
麴に独自構造のグリコシルセラミドがあることを発見
しました.グリコシルセラミドには,肌に塗ることで保
湿改善効果があることが知られています.さらに食べて
も肌の保湿改善効果や,「大腸がん」,「頭・首の扁平上
皮癌」,「大腸炎」に対する抑制効果があることが報告さ
れています.そこで我々は麴グリコシルセラミドにおけ
る独自の健康効果について研究を始めました.その結
果,麴グリコシルセラミドには腸内細菌の改善効果があ
り,特に近年善玉菌として注目を集めている Blautia
coccoides を有意に増やすことを統計的に明らかにし
ました.
この研究結果から,和食の健康効果は,麴グリコシル
セラミドの腸内細菌改善によりもたらされていると考え
られます.
◆メタボ改善効果
さらに,麴グリコシルセラミドの腸内分解物であるスフ
ィンゴイド塩基が腸管で吸収されること,およびこのスフ
ィンゴイド塩基がメタボリックシンドローム改善効果の
ある肝臓の転写因子 PPARγを活性化する効果があるこ
とを見出しました.当研究室では,日本人が欧米人に比べ
相対的に生活習慣病が少ない理由のひとつとして,和食の
効果があると考え,さらに研究を進めています.
◆日本人の誇り「麴」
麴は日本人が約 800 年以上,世代を超えて受け継いで
きた独自の素材であり,その健康効果の解明は和食の健康
効果を明らかにすることでもあります.麴の普及によっ
て,生活習慣病を減らし,世界での和食の売り上げを増加
させることにつながると期待されます.さらに,麴と言う
食用カビを永年受け継いできた事実は,我々の祖先が 10
00 年を超えて永続的な文明を護持してきたことの裏付け
でもあり,日本人の誇りを再認識することでもあると考え
ています.
掲載情報 2016 年 12 月現在
機能性食品関係者へ
一言アピール
現在,乳酸菌の健康食品市場は 5000 億円を超えると言われています.今
後,研究が進むことで日本オリジナルの発酵素材である麴の健康食品市場
が成長すると考えています.
産学・地域連携機構より
我々日本人の生活で何気なく食する和食には,多くの発酵食品が使われています.その発酵に
寄与する麴には,これまで見過ごされていた多様な健康機能性が存在し,その科学的解明によ
って麴を用いた市場の活性化に期待が高まります.
佐賀大学研究室訪問記
2016
佐賀大学
産学・地域連携機構
(佐賀県佐賀市本庄町1番地)
(お問い合せ先) 国立大学法人 佐賀大学 学術研究協力部 社会連携課
TEL:0952-28-8416
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