工学系研究科 田中高行 准教授 低コスト「マイクロ波・ミリ波」

工学系研究科
TANAKA
電気電子工学専攻
TAKAYUKI
田中 高行
准教授
「次世代ワイヤレス通信のための高周波基盤技術の研究」
(マイクロ波・ミリ波発振器の研究)
[キーワード]
マイクロ波・ミリ波,発振器,Push-Push 原理,共振波動場,
周波数資源,ワイヤレス通信,レーダ
低 コ ス ト 「 マ イ ク ロ 波 ・ ミ リ 波 」 発 振 器 の 開 発
研究紹介
◆研究概要
ワイヤレス通信・レーダ技術の発展に大きく関係する
高周波基盤技術に関する研究を行っています.現在のワ
イヤレス通信は 2GH 程度までの周波数信号を用いたも
のが一般的で,その周波数より高いマイクロ波・ミリ波
帯の周波数は衛星通信やレーダ等に用いられています.
近年では,ワイヤレス通信機器の普及により,使用可能
な周波数帯が不足してきており,マイクロ波・ミリ波の
周波数帯の利用は,衛星通信やレーダ等のみならず,ワ
イヤレス通信技術の更なる発展のためにも重要です.し
かし,使用する信号の周波数帯が上がると,その帯域で
使用される機器の開発が必要となります.高い周波数帯
で使用される機器では,特にデバイスの素子性能の限界
による性能劣化が問題となります.そのため,高性能の
機器の製造が必要となりコストが上がります.
◆発振器の研究
当研究室は,マイクロ波ミリ波帯の高周波機器におけ
る「発振器」に着目しました.発振器で発生した電気信号
を用いて通信を行い,レーダ等で電波を放射するため,
発振器の特性が機器全体の特性に影響します.そこで,
低コストで高品質(位相雑音※1)特性が良好)な発振器
の研究を行っています.
※1
位相雑音:発振器の発振信号の安定度を示すもので,
出力信号の時間変動の度合いを表す.
低コスト化を図るため,Push-Push 発振原理を用い
ています.この原理は基本的に二つの副発振器を同振幅
逆位相で発振させ,共有する共振器の共振波動場を用い
ることで,主に 2 次高調波を出力として取り出せま
す.四つの副発振器を同振幅,90 度毎にずらした位相
で発振させると,4次高調波を出力として取り出せま
す.二つの副発振器を用いた構成においても,4次高調
波を出力として取り出すことは可能です.この原理を用
いることで,低周波用の安価なデバイスの使用が可能とな
り,低コストで高い周波数の信号を得ることができます.
(例:X 帯(10GHz)用のデバイスで,K 帯(20GHz)の
出力)
◆多素子化とアレー化による高品質化
高品質化は,多素子化とアレー化により行います.各発振
器の周波数が同期範囲内である場合.共振器を介して複数
の発振器を接続すると,相互同期により位相雑音が低下し
ます.Push-Push 発振器は多素子発振器でもあるため,
低位相雑音化にも有効です.また,Push-Push 発振器を
アレー化した発振器アレー(レーダに必要なビームスキャ
ンを行う)も有効です.この場合,各々の Push-Push 発
振器の間で同期がおこり,同様に位相雑音が低下します.
◆今後の展開
課題として,Push-Push 発振器は高調波を出力としま
すが,高調波は次数が上がるほど出力レベルが低下しま
す.そのため,4 次や 8 次の高調波を出力とする場合,出
力電力を向上させる工夫が必要です.また,Push-Push
発振器アレーでは,同期の方法次第では位相雑音特性の改
善につながらない
こともわかってき
ました.これらの課
題を克服すること
で,社会ニーズに合
った,低コストのマ
イクロ波・ミリ波発
振器を実現するこ
とを目指します.
掲載情報 2017 年 1 月現在
産業界および学生
の皆さんへ
一言アピール
発振器(特に高周波用)の研究は非常に地味な分野で研究者の数も多くありません.また,非
線形理論がベースになるため他の技術と異なる独特の発想も必要です.しかしこれからの時代
に必要不可欠な分野です.ご興味がありましたら,気軽にご連絡ください.
産学・地域連携機構より
ワイヤレス機器は,その利用の種類・頻度共に増加を続け,使用可能な周波数帯の限界は,緊
迫した社会問題となることが予想されます.本研究は,その解決策のひとつになるかも知れま
せん.興味がある方は,ご相談ください.
佐賀大学
佐賀大学
研究室訪問記
産学・地域連携機構
(佐賀県佐賀市本庄町1番地)
(お問い合せ先) 国立大学法人 佐賀大学 学術研究協力部 社会連携課
TEL:0952-28-8416
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