工学系研究科 TAKAHASHI 物理科学専攻 TOMO 髙橋 智 准教授 「初期宇宙論」 「宇宙の暗黒成分」 [キーワード] インフレーション宇宙論,宇宙の構造の起源,暗黒物質 宇宙の始まりに迫る,インフレーション宇宙論. 研究紹介 ◆研究概要 「宇宙には始まりが存在し,かつて超高温・高密度 の熱い火の玉のような状態だったものが,現在まで膨 張して宇宙が進化してきた」というのがビッグバン宇 宙標準理論です.この理論は,いろいろな観測事実を うまく説明できる一方で,いくつかの問題点がありま した.この問題点を解決するために,熱い火の玉にな る前に,「インフレーション」と呼ばれる宇宙の急激 な加速膨張があったとする「インフレーション宇宙 論」が提唱されました.当研究室では,このインフレ ーション宇宙論について研究しています. イメージ図:宇宙の歴史 ◆宇宙に存在する“偏り” 宇宙の中の銀河の分布を観測すると,宇宙には「ほ ぼ一様」に銀河が存在していることがわかります.し かし,詳しく観測してみると,完璧に一様ではなく, 銀河の密度の濃い部分,薄い部分といった“偏り”が 存在しています.そして,銀河を構成している天体自 体も,もともとは,宇宙空間に何らかの理由で物質の “偏り”が生じ,そこに引力などの力が働き集まって できています. また,宇宙のあらゆる方向から「ほぼ一様」に飛来 している,宇宙マイクロ波背景放射(初期宇宙に存在 していた電磁波)も,方向によって 0.001%ほどの“偏 り”が存在しています. このような“偏り”が,宇宙誕生後に何らかの事象 によって作られなければ,宇宙の中にある星や銀河の ような宇宙の構造が作られず,宇宙の姿は全く違った ものになってしまいます. ◆インフレーション宇宙論 現在,“偏り”を作り出したと考えられている理論が 「インフレーション宇宙論」であり,これはビッグバン が起こる前に,ほんのわずかな時間で,宇宙が 1026 倍 にも引き延ばされる急激な膨張をした時期があったと されるものです. このインフレーションにより,初めにあった小さな 量子“揺らぎ”が引き伸ばされて,銀河などを構成して いく“偏り”のタネになったと考えられています. また,インフレーション時に宇宙は真空のエネルギ ーに満たされて,急激に膨張しました.さらにこの真空 が相転移することにより,莫大な熱エネルギーを生み 出し,ビッグバンの始まりである火の玉状態を形成し たと考えられています. このように,インフレーション宇宙論は,ビッグバン 理論では説明できない様々な現象を説明する理論で す. 掲載情報 2016 年 9 月現在 宇宙が気になる方へ 一言アピール 産学・地域連携機構より 佐賀大学研究室訪問記 2016 宇宙は多くの謎,そして驚きに満ちています.現代科学が解き明かす宇宙に ついて,少しでも皆さんと共有できたら嬉しく思います. インフレーション宇宙論は,衛星からの観測結果など宇宙の構造を調べることで検証してい くことができます.今後もさらに様々な精密宇宙観測データが得られると期待されており, 髙橋准教授は,こうした観測結果をもとにインフレーション宇宙論について検証し,宇宙の 始まりに迫る研究をしています. 佐賀大学 産学・地域連携機構 (佐賀県佐賀市本庄町1番地) (お問い合せ先) 国立大学法人 佐賀大学 学術研究協力部 社会連携課 TEL:0952-28-8416 E-mail:[email protected]
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