豪州準備銀行は政策金利を1.50%へ引き下げ

2016年8月3日
投資情報室
(審査確認番号H28-TB105)
オーストラリアレポート
オーストラリア経済とリート市場の動向について
豪州準備銀行は政策金利を1.50%へ引き下げ
 豪州準備銀行(RBA)は0.25%の利下げを決定。声明文では今後の政策方針は示されず、当面は様子見姿勢へ。
 RBAは「緩やかな景気拡大が続いている」との国内景気判断を維持。利下げによる内需下支え効果の広がりに期待。
 RBAの利下げ決定後も豪ドル相場は底堅く推移。世界的な金融緩和環境ではRBAの利下げによる影響は限定的に。
インドが追加利下げ
今年4回目
 米ドル高の一巡や欧州の経済問題から、消去法的に豪ドルが選好されやすい面も。今後は豪州の内需拡大に注目。
豪州準備銀行(RBA)は0.25%の利下げを決定
図1:豪州準備銀行(RBA)の政策金利とインフレ率
(%)
豪州準備銀行(RBA)は8月2日の金融政策理事会におい
5.0
て、大方の市場予想通り、0.25%の利下げを決定しました。
4.5
これにより、政策金利は史上最低の1.50%へ引き下げられ
ることになります(図1)。
4.0
RBAによる利下げ決定の背景として、2016年4-6月期の基
調インフレ率が前年比+1.5%とインフレ目標を下回る低水
準となったことや、正規雇用の回復に弱含みがみられる雇
用情勢などが考慮されたと考えられます。
豪州準備銀行の政策金利
(キャッシュ・レート)
3.5
3.0
2.5
2.0
RBAは今後の金融政策の方針を示さず
インフレ目標
レンジ(2~3%)
1.5
スティーブンス総裁の声明では、今後の追加利下げの可能
性などを含む金融政策の先行き方針(ガイダンス)が示さ
れなかったことから、当面、RBAは利下げの効果を見守る
様子見姿勢を採るものと推察されます。RBAは8月5日公表
の「四半期金融政策報告」の中で、今回の利下げ決定の前
提となった詳細な経済見通しを示す予定です。
利下げによる内需の下支え効果の拡大に期待
国内景気判断に関して、RBAは「設備投資の大幅下落に
もかかわらず、緩やかな景気拡大が続いている」との従来
通りの見方を示しました。一連の金融緩和の効果から、豪
州では自己所有目的の住宅ローンや企業向け貸出が拡大傾
向にあり、今回の利下げにより一段と内需の下支え効果が
基調インフレ率
(前年比)
1.50%
1.5%
1.0
09
10
11
12
13
14
15
16
(出所)豪州準備銀行(RBA)、豪州政府統計局(ABS)
(期間)基調インフレ率:2009年1-3月期∼2016年4-6月期
政策金利:2009年1月1日∼2016年8月2日
(注)基調インフレ率は消費者物価指数(CPI)のトリム平均値(平均値を算
出する際、データの最大値と最小値付近の値を計算から除外)と加重
中央値の平均により算出。
図2:豪州の貸出残高の伸び率(貸出先別)
(前年比、%)
12
住宅ローン(投資目的)
10
住宅ローン
(自己保有目的)
8
+7.7%
+6.6%
6
広がることが期待されます(図2)。
+5.0%
4
金融監督規制により住宅市場過熱の懸念が低下
一方、投資目的の住宅ローンは、金融監督規制や銀行によ
る融資基準引き上げなどによって伸び率が鈍化傾向に転じ
ています(2016年6月の投資目的住宅ローン残高は前年比
+5.0%)。RBAも声明文の中で、「利下げが住宅市場の過
熱を招くリスクは後退した」との評価を示しました。
(年)
企業向け貸出
2
0
個人向け貸出(除く住宅ローン)
‐0.8%
‐2
12
(出所)RBA
13
14
15
16
(年)
(期間)2012年1月∼2016年6月
●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメントの情報を基に、ニッセイアセットマネジメントが作
成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。実際の投資等に係る最終的な決定はご自身で判断してください。●当資
料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値等
はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的
な投資成果を示すものではありません。●投資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。●手数料や報酬等の種類ごとの金額
及びその合計額については、具体的な商品を勧誘するものではないので、表示することができません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動
等を保証するものではありません。
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金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第369号
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2016年の豪ドルは対米ドルで持ち直す傾向
図3:豪ドルの対米ドル、対円相場の推移
2016年の豪ドル相場は、RBAによる2回の利下げ決定に
もかかわらず、米ドルに対して緩やかに持ち直す傾向にあ
ります(図3)。8月2日のRBAによる利下げ決定後の豪ド
ル相場は、1豪ドル=0.75米ドル近辺で概ね反応は限定的
となりました(対円では1豪ドル=77円前後で推移)。
105
RBAの利下げを受けても豪ドル相場が底堅く推移している
背景として、次の3つの点が挙げられます。
100
対円レート(左軸)
1.00
95
0.95
90
0.90
85
0.85
豪ドル高
0.80
80
75
豪利下げによる豪ドル相場への影響は限定的に
(米ドル)
1.05
(円)
0.75
豪ドル安
70
0.70
対米ドルレート(右軸)
第一に、主要先進国の緩和的な金融環境が挙げられます。 65
0.65
14年1月
15年1月
16年1月
今回のRBAの利下げは概ね市場で織り込み済みであった上、
(出所)ブルームバーグ (期間)2014年1月1日∼2016年8月2日
欧州や日本などで金融緩和が拡大し、米国でも慎重な利上
図4:RBA政策金利と主要国2年国債利回り
げが検討されている中では、RBAの利下げによる豪ドル相
(%)
場への影響は限定されると考えられます。
3.0
豪州準備銀行の政策金利
RBAの利下げ後に豪2年国債利回りは1.43%へ低下したも
のの、マイナス金利が続く欧州や日本の2年国債との間に
は依然一定の金利差が維持されています(図4)。
RBAは豪ドル高への警戒姿勢を強めていない模様
第二に、RBAが足元の豪ドル相場の水準に対して警戒姿勢
を強めていない点が挙げられます。RBA理事会の声明文で
2.5
2.0
豪2年国債利回り
1.5
1.0
米政策金利
0.0
-0.23%
‐0.5
複雑にする可能性がある」との従来通りの内容に留まりま
‐1.0
14年1月
米ドル高一巡の中、豪ドルが選好されやすい面も
1.43%
0.68%
0.5
の豪ドル相場に関する言及は、「豪ドル高は経済の調整を
した。
米2年国債利回り
独2年国債利回り
15年1月
日2年国債利回り
-0.62%
16年1月
(出所)ブルームバーグ
(期間)2014年1月1日∼2016年8月1日(豪州のみ8月2日)
図5:図5:豪ドル相場と米ドル指数
(米ドル)
第三に、基軸通貨である米ドルの上昇一巡が挙げられます。 1.30
米ドルの主要通貨に対する総合的価値を示す米ドル指数は、 1.20
米ドル指数(右軸)
105
100
2015年以降、米ドル高圧力の後退を示唆しています(図
1.10
95
5)。一方、欧州では、英国の欧州連合(EU)離脱問題や
1.00
90
イタリアの不良債権問題などの懸念材料がユーロや英ポン
0.90
85
ドの抑制要因となっており、米ドル高が一巡する裏側で消
0.80
80
去法的に豪ドルなどの第三国通貨が選好されやすい面もあ
0.70
75
ると考えられます。
もっとも、今後、豪ドル相場が自律的な底堅さを維持する
には、内需拡大やインフレ環境改善などの国内要因による
下支えが必要と考えられます。今後はRBAの金融緩和によ
る実体経済への波及効果に注目が集まりそうです。
0.60
0.50
豪ドル相場(対米ドル、左軸)
70
65
03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年)
(出所)ブルームバーグ (期間)2003年1月1日∼2016年8月2日
(注)米ドル指数は主要通貨(ユーロ、円、英ポンド、加ドル、スウェーデ
ン・クローナ、スイス・フラン)に対する米ドルの総合的な価値を示
す指標。
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成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。実際の投資等に係る最終的な決定はご自身で判断してください。●当資
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