RBAは新総裁就任後の初会合で政策金利を据え置き

2016年10月5日
投資情報室
(審査確認番号H28-TB163)
オーストラリアレポート
オーストラリア経済とリート市場の動向について
RBAは新総裁就任後の初会合で政策金利を据え置き
 豪州準備銀行(RBA)は、フィリップ・ロウ総裁就任後の初会合において、政策金利を1.50%で据え置く決定を下す。
 RBAは実質政策金利をゼロ%近辺に維持する緩和的金融政策を継続。当面は政策の様子見姿勢が続く見込み。
 豪ドル相場は対米ドル、対円ともに安定的に推移。鉄鉱石や石炭など資源価格の回復が豪ドルを下支えする一因に。
インドが追加利下げ 今年4回目
 中国では鉄鋼・石炭産業での過剰生産能力の解消が進む。資源価格の上昇は豪州の貿易採算の改善に寄与。
豪州準備銀行は政策金利の据え置きを決定
図1:豪州準備銀行(RBA)の政策金利とインフレ率
豪州準備銀行(RBA)は10月4日、フィリップ・ロウ総裁
就任後初となる金融政策理事会において、政策金利を
1.50%で据え置く決定を下しました。
8.0
注目されたロウ総裁の声明文では、「5月と8月の金融緩
和を受けて、政策姿勢の維持が持続的な経済成長とインフ
レ目標の達成と整合的である」と述べられ、前回の理事会
でのスティーブンス前総裁の声明が概ね踏襲されました。
これは新総裁就任後も、RBAの金融政策の継続性が保たれ
ていることを示唆していると考えられます。
5.0
新総裁就任後も、RBAは緩和的金融政策を維持
0.0
2013年以降、RBAは政策金利から基調インフレ率を差し
引いた実質政策金利をゼロ%近辺に維持する緩和的な金融
政策を継続してきました。今回の政策決定を受けて、直近
4-6月期の基調インフレ率(前年比+1.5%)に基づく実質
政策金利は0.00%が維持されています(図1)。
また、今回の理事会声明文でも、先行きの金融政策に関す
る方針(ガイダンス)は示されませんでした。当面のRBA
豪州準備銀行の政策金利
7.0
基調インフレ率
(前年比)
6.0
インフレ目標
レンジ(2~3%)
4.0
3.0
2.0
1.50%
1.0
0.00%
実質政策金利
(政策金利-基調インフレ率)
-1.0
-2.0
06
07
08
09
一方、RBAの景気判断に関しては、「豪州経済は緩やか
11
12
13
14
15
16
(年)
図2:豪州の雇用者数増減と消費者信頼感指数
60
(千人)
消費者信頼感指数(右軸)
50
雇用環境は強弱分かれるも、消費者心理は改善
10
(出所)豪州準備銀行(RBA)、豪州政府統計局(ABS)
(期間)基調インフレ率:2006年1-3月期∼2016年4-6月期
政策金利:2006年1月1日∼2016年10月4日
(注)基調インフレ率は消費者物価指数(CPI)のトリム平均値(平均値を算
出する際、データの最大値と最小値付近の値を計算から除外)と加重
中央値の平均により算出。
の金融政策はインフレや景気動向を注視しながらの様子見
姿勢が続くものと考えられます。
(%)
(中立=100)
130
120
40
110
30
100
なペースでの拡大が続いている」との見方が示されました。 20
90
底堅いパートタイム雇用の伸びに対して、正規雇用が停滞
10
80
しているなど、足元の雇用環境は強弱が分かれる状況にあ
0
70
るものの、消費者心理は緩やかな改善基調が続いています
-10
60
(図2)。当面の経済指標では、10月20日公表予定の雇用
統 計 ( 9 月) や 、 10 月26 日 公 表 予定 の 消費 者物 価 指数
雇用者数前月比増減
(3ヵ月移動平均、左軸)
-20
-30
07
08
09
10
11
12
13
50
40
14
15
16
(年)
(CPI、7-9月期)などに注目が集まりそうです。
(出所)ABS、ウエストパック銀行/メルボルン・インスティテュート
(期間)2007年1月∼2016年9月(雇用者数は8月時点)
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豪ドル相場は対米ドル、対円とも安定的に推移
足元の豪ドル相場は、対米ドル、対円ともに概ね小康状態
が続いています。豪ドルの対米ドル相場は1豪ドル=0.75
∼0.76米ドル前後、対円相場は1豪ドル=76∼78円前後で
安定的に推移しています(図3)。
今回のRBA理事会の声明での豪ドル相場に関する言及は、
「豪ドル高は経済の調整を複雑にする可能性がある」との
ソフトな内容に留まり、豪ドル高に対するRBAの警戒が引
き続き限定的であることが示されました。
図3:豪ドル相場(対米ドル、対円)
1.05
100
対円レート(左軸)
95
足元の豪ドル相場の底堅さの背景として、世界的な低金利
環境の中で相対的に金利水準が高い豪州への注目が高まり
やすいことに加えて、豪州の主要輸出資源である鉄鉱石や
石炭の価格回復が進んでいることも一因に挙げられます
0.95
85
0.90
80
0.85
豪ドル高
0.80
75
0.75
豪ドル安
65
0.70
対米ドルレート(右軸)
0.65
60
14年1月
15年1月
(出所)ブルームバーグ
16年1月
(期間)2014年1月1日∼2016年10月4日
図4:中国における鉄鉱石・石炭価格の推移
(図4)。中国政府が主導役となった鉄鋼・石炭産業での 225
(人民元/トン)
900
(米ドル/トン)
中国の石炭価格
(一般炭、右軸)
過剰生産能力の解消が進んでいることから、足元の中国の 200
鉄鉱石・石炭市場では供給過剰問題への懸念が後退しつつ 175
ある模様です。
1.00
90
70
中国の鉄鉱石・石炭価格が上昇傾向に転じる
(米ドル)
1.10
(円)
105
800
700
150
600
125
500
今回のRBA理事会の声明文でも、「資源価格の上昇が豪州 100
400
の交易条件の改善を支えている」との言及がなされていま
75
300
す。交易条件は輸出物価を輸入物価で割って求められ、貿
50
易採算の改善/悪化を示す指標です。豪州では、2011年を
25
資源価格上昇は豪州の交易条件の改善に寄与
ピークにした資源価格の下落に伴って交易条件(貿易採
算)の悪化が続いてきましたが、2016年には交易条件の悪
化に歯止めがかかりつつあります(図5)。
また、交易条件は豪ドル相場との連動性も高く、足元での
交易条件の改善は豪ドル相場を下支えする要因にもなって
いると言えます。
中国の鉄鉱石価格(左軸)
09
10
11
(出所)ブルームバーグ
12
13
14
15
200
16
(期間)2009年1月1日∼2016年10月3日
図5:豪州の交易条件と豪ドル相場の推移
(2013-14年=100)
130
120
110
豪州の交易条件(左軸)
100
もっとも、鉄鉱石や石炭の価格回復の持続性に関しては、
中国政府による政策の効果も含めて、なお慎重な評価が必
要とみられます。今後、資源価格の回復という外部環境要
因が一巡する過程では、改めて豪州国内での景気動向や金
融政策の方向性が豪ドル相場の基調を決める要因として注
目されそうです。
80
50
1.2
1.0
0.9
貿易採算悪化
0.8
70
60
(米ドル)
1.3
1.1
貿易採算改善
90
国内景気や金融政策も豪ドル相場の注目材料に
100
(年)
0.7
豪ドルの対米ドル相場(右軸)
0.6
0.5
40
0.4
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年)
(出所)ABS、CEIC
(期間)豪ドル:2000年1月∼2016年9月
交易条件:2000年1-3月期∼2016年4-6月期
(注)交易条件=輸出物価÷輸入物価
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な投資成果を示すものではありません。●投資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。●手数料や報酬等の種類ごとの金額
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