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オーストラリア市場レポート
2015年5月14日
足元の豪州株下落の背景と今後の見通し
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5月に入り豪州株の軟調続く。一部企業の低調な決算や、世界的な金利上昇懸念、予算案を巡る不透明感が背景。

世界的な市場の動揺をもたらした足元の欧米金利の急上昇が一巡すれば、豪州金融市場も安定を取り戻す見通し。

豪州景気は個人部門中心に底堅さみられる。景気回復の進展により、今後は内需セクターの企業収益回復に期待。

豪州株式市場には依然として出遅れ感残る。当面は2015-16年度の予算案が豪州経済の先行きを占う試金石に。
足元の豪州株下落の背景
図1:豪州株と豪州の政策金利・10年国債利回り
2015年5月に入り豪州株の軟調が続いています。主要
株価指数のS&P/ASX200指数は、5月11日には1月末
以来の低水準である5,625ポイントへ下落しました。足元
での豪州株下落の背景として次の点が指摘できます。
 一部銀行・小売企業の低調な1-3月期決算。
(%)
4.50
(ポイント)
6,500
豪10年国債利回り
(左軸)
豪州株(右軸)
4.00
6,000
3.50
5,500
3.00
5,000
2.50
4,500
 欧米長期金利の急上昇や豪州準備銀行(RBA)の利
下げ打ち止め観測の高まりから、豪州でも金利上昇懸
念が株式市場の抑制要因となっていること(図1)。
 5月12日公表予定の豪2015-16年度政府予算案を
巡って、投資家の様子見姿勢が続いていたこと。
豪州準備銀行(RBA)
政策金利(左軸)
2.00
4,000
当面は国内外の長期金利の動向に注目集まる
当面は外部環境の面で、世界的な金融市場の動揺をも
たらした欧米長期金利の動向に注目が集まりそうです。
もっとも、米連邦準備制度理事会(FRB)も4月の政策会
合で米景気の判断を下方修正し、早期利上げに慎重な
3,500
1.50
2012年1月
2013年1月
いても、RBAは当面の様子見姿勢を継続するとみられ、豪
州の金融環境も安定を取り戻すと見込まれます。
豪州景気には個人部門中心に底堅さみられる
図2:豪州の貸出残高の推移
(前年比、%)
12
8
景気には個人消費や雇用などの面で底堅さがみられます。
2
豪州景気の動向を示す貸出統計でも、投資目的の住宅
0
ローンが前年比で二桁台の高い伸びを示していることに加
-2
え、居住用住宅ローンや企業向けローンなど実需の裏付
-4
けのある融資も安定的な拡大傾向にあります(図2)。
-6
進展することが期待されます。
+10.4%
+5.8%
+5.3%
6
4
今後は、RBAによるこれまでの金融緩和策によって、個
住宅ローン
(投資目的)
住宅ローン
(居住目的)
10
一方、国内のファンダメンタルズの面では、足元の豪州
人消費や設備投資が喚起され、内需主導の景気回復が
2015年1月
(出所)ブルームバーグ (期間)2012年1月1日~2015年5月11日
(注)豪州株はS&P/ASX200指数。
姿勢を示しており、欧米長期金利も早晩上昇が一巡する
可能性が高いとみられます。また、豪州の金融政策につ
2014年1月
+0.9%
個人向けローン
企業向けローン
-8
-10
09
10
11
12
13
14
15
(年)
(出所)豪州準備銀行(RBA) (期間)2009年1月~2015年3月
当資料は市場環境に関する情報の提供を目的としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメントの情報を基に、ニッセイアセットマネジメントが
作成したご参考資料であり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。 当資料は信頼できると考えられる情報に基づいて作成し
ておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益
を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
<審査確認番号H27-TB16>
当資料のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
オーストラリア市場レポート
2015年5月14日
豪州の内需関連セクターの収益は安定を維持
図3:豪州企業の営業利益の推移
豪州の企業収益の動向に目を転じると、近年の資源価
格の下落を受けて鉱業セクターの収益が減少傾向にある
(10億豪ドル)
35
一方、サービス業や建設業、公益などの内需関連セク
30
ターの企業収益は安定基調を維持しています(図3)。今
サービス業
25
後は、豪州の景気回復進展による内需関連セクターの企
鉱業
20
業収益への押し上げが期待されます。
15
依然として出遅れ感が残る豪州株式市場
製造業
10
また、株価の水準では、豪州株には依然として出遅れ感
5
が残されていると思われます。S&P/ASX200指数の株価
建設業
公益
0
純資産倍率(PBR)は5月11日時点で2.06倍と、依然とし
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
て2001年以降の長期平均(2.14倍)を下回る水準にあり
(年)
(出所)豪州政府統計局 (期間)2000年1-3月~2014年10-12月
ます(図4)。また、米欧の株式市場が既にリーマンショック
図4:豪州株の株価純資産倍率(PBR)
前の高値水準を上回っているのに対して、豪州株は最高
3.5
値更新には至っておらず、主要先進国市場と比較して豪
州株には上昇余地があると考えられます。
豪州株(右軸)
PBR長期平均
(2001年以降)
3.0
今後の課題は財政政策への信認回復
(ポイント)
7,000
(倍)
6,000
2.5
5,000
2.0
4,000
豪州経済および株式市場にとっての当面の課題は、政
府の財政政策への信認回復にあると考えられます。2013
年9月の総選挙において6年振りの政権交代で誕生したア
1.5
3,000
豪州株のPBR(左軸)
ボット政権(保守連合政権)は、中期的な財政健全化と同
1.0
時に、企業活動の活性化やインフラ投資の強化に重点を
置いた政策を進めてきました。
しかし、足元では資源価格下落による税収減や景気回
2,000
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
(年)
(出所)ブルームバーグ (期間)2001年1月1日~2015年5月11日
(注)株価はS&P/ASX200指数。PBRは株価÷一株当たり純資産。
図5:豪州の企業・消費者信頼感指数の推移
復の遅れなどに直面し、財政政策の軌道修正行う可能性
があるとの見方が強まっていました。
2015-16年度の豪政府予算案について
5月12日に公表された2015-2016年度(2015年7月~
2016年6月)の政府予算案では、緊縮財政政策を見直し、
歳出増加を伴う景気下支えのための各種支援策やインフ
ラ投資を打ち出しました。中小企業に対する法人税軽減
や子育て支援として育児補助の拡大などの各種支援策を
実施し、教育・観光産業分野などの成長を支援する方針
を示しています。
今回の予算案が、伸び悩んでいる企業や消費者の信頼
感(図5)の回復や、経済構造の変革を伴う豪州経済の成
長へとつながるかが、株価への影響も含めて注目されます。
20
(中立=100)
130
企業信頼感指数
(左軸)
120
10
110
0
100
(中立=0)
30
-10
90
-20
80
消費者信頼感指数(右軸)
-30
-40
05
06
07
保守連合政権
08
09
10
11
労働党政権
12
13
14
70
60
15 (年)
保守連合政権
(出所)ウエストパック銀行、ナショナル・オーストラリア銀行
(期間)2005年1月~2015年4月
当資料は市場環境に関する情報の提供を目的としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメントの情報を基に、ニッセイアセットマネジメントが
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