リサーチ TODAY 2016 年 4 月 27 日 米国の今年1~3月期成長率停滞、当面ドル安で底固め 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 今週、米国の1~3月期のGDP成長率が発表されるが、その前の2015年10~12月期の年率1.4%から大 幅に鈍化していることが予想される。下記の図表に示されるように、アトランタ連銀のGDP NOWでは0.3%と 予想されている。みずほ総合研究所は0.4%と予想する。なお、ニューヨーク連銀が新しく公表した 「NYFRBナウキャスト」では1.1%となっている。1~3月期の下振れの要因としては、①年初の株価下落に 伴う逆資産効果による個人消費の減速、②エネルギー価格の下落や米銀の貸出基準の厳格化に伴う設 備投資の減少、③ドル高による外需の減少がある。今後を展望すれば、米国がドル安誘導を行ったことで 製造業に底打ち感が生じているため、年後半にかけて再び2%程度の成長経路に戻ると予想する。ただし、 減速していた製造業を中心に底入れを確実なものとすることが必要な局面ゆえ、一定のドル安でのサポー トが必要だ。それ故今年は年央にかけて、もう一段のドル安を試す動きも生じうると展望する。先週来、日 銀の追加緩和や日本の為替介入への警戒感からドルが戻す動きが生じている。ただし、基本的に米国が ドル高を牽制するスタンスにあるため、昨年までのようなドル高水準に戻る状況ではないだろう。 ■図表:米国のGDP NOWとGDP速報値推移 5 (前期比年率%) GDP NOW GDP速報値 4 3 2 1 0 -1 13/1 14/1 15/1 16/1 (年/月) (資料)アトランタ連銀よりみずほ総合研究所作成 次ページの図表は、当社が独自に作成・公表しているCSI(Cumulative Surprise Index)である。昨年12 月に利上げが強行された時にはCSIは大きく下がったが、今年2月半ばを底に改善に向かい、3月には久 しぶりにプラス圏に戻った。ただしCSIは4月以降、再びマイナス圏になっている。小売売上高や物価など 1 リサーチTODAY 2016 年 4 月 27 日 が市場予想比下振れしたことが影響している。まだ、米国経済の動きは一進一退だ。 ■図表:米国サプライズ指数(CSI) (DI、%) 足元は、小売売上高、物価、生産などが 市場予想対比下振れ 20 10 2016年 0 -10 -20 2015年 -30 -40 -50 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 (月) (注)Bloomberg が公表している全ての米国経済指標の市場コンセンサスと公表値を比較、コンセンサスよりも良好な 場合は+1、下回る場合は-1 として 30 日間累計したインデックス。単一の指標でも前月比と前年比があれば夫々 を市場コンセンサスと比較してカウント。 (資料)Bloomberg よりみずほ総合研究所作成 下記の図表は米国の景気循環における回復局面の長さを示す。今年4月はすでに前回の回復期間73 カ月を超え82カ月目に当たる。4月入り後に発表された指標では、ドル高や原油安の進行が一服したこと を背景に製造業の悪化に底打ちの動きが生じている。在庫調整圧力が和らぐなか、新規受注と生産に持 ち直しの動きが確認されてきた。当社は今年、米国が景気後退に陥るリスクは依然として低いと考えている。 ただし、景気後退を回避するため、当面は利上げを回避しドルの上昇を抑制する慎重さが米国には必要 だろう。 ■図表:米国の景気循環推移 (前期比年率%) 12 92カ月 10 8 6 4 2 0 -2 -4 -6 -8 -10 1980 85 90 73カ月 120カ月 95 2000 05 今年4月で 82カ月目 10 15 (年) (注)網掛けは景気後退期。 (資料)米国商務省、NBER よりみずほ総合研究所作成 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2
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