米国経済は底入れの兆し、イエレン議長はどうするか

リサーチ TODAY
2016 年 3 月 15 日
米国経済は底入れの兆し、イエレン議長はどうするか
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
2016年初来の世界的な株価調整の背景にあったのは、2015年12月の利上げによる米国経済の失速不
安だった。みずほ総合研究所は四半期毎に改訂している『内外経済見通し』で1、米国の見通しを大幅に
下方修正した。米国は年内に利上げを行わないとした。また、為替が円高に大きく振れることから、日本の
成長率も大きく下方修正した。その後、米国の経済指標は改善に向かい、市場は小康状態に戻っている。
下記の図表は当社が独自に作成・公表しているCSI(Cumulative Surprise Index)である。昨年8月以降、米
国の経済指標は予想を下回る状況を一貫して続けた。そうしたなかで昨年12月に利上げが強行され市場
の不安が高まった。一方で今年2月半ばを底にCSIは改善に向かい、3月には久しぶりにプラス圏に戻った。
年初から円ドル相場が10円程ドル安に誘導されたこともあり、米国経済は小康状態を迎えたと考えることが
できる。今週のFOMCでの利上げ可能性はないだろうが、イエレン議長はメンツにかけて、どこかで利上げ
を行いたいという心情であることを市場関係者は認識すべきだろう。
■図表:米国サプライズ指数(CSI)
(DI、%)
30
2015年4月~直近
20
10
0
-10
-20
-30
2014年4月~2015年3月
-40
-50
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
(月)
(注)Bloomberg が公表している全ての米国経済指標の市場コンセンサスと公表値を比較、コンセンサスよりも良好な
場合は+1、下回る場合は-1 として 30 日間累計したインデックス。単一の指標でも前月比と前年比があれば夫々
を市場コンセンサスと比較してカウント。
(資料)Bloomberg よりみずほ総合研究所作成
次ページの図表は米国の製造業ISM指数の推移を見たものだ。2月は49.5で、5カ月連続で改善・悪化
1
リサーチTODAY
2016 年 3 月 15 日
の境目である50を下回ったが、前月からは持ち直した。在庫調整の圧力が和らぐなか、新規受注と生産に
回復の動きが見られ、製造業の業況は最悪期を脱したように見える。
■図表:米国の製造業ISM指数推移
56
6.0
54
新規受注
生産
雇用
入荷遅延
在庫
総合指数
5.0
4.0
3.0
52
2.0
1.0
50
0.0
-1.0
48
-2.0
46
-3.0
(年/月)
-4.0
16/2
15/2
15/5
15/8
15/11
(注)季節調整値。指数が 50%超で前月比改善、50%未満で悪化。総合指数は新規受注、生産、雇用、入荷遅延、在庫
指数の単純平均。
(資料)米サプライマネジメント協会(ISM)
下記の図表は米国の景気循環における回復局面の長さを示す。今年3月で回復期間はすでに前回の
73カ月を超え81カ月になる。当社は、今年米国が景気後退に陥るリスクは低いと考えている。今回、問題で
あった製造業について底入れが確認されれば、景気後退は回避されるだろう。ただし、そのためにもFRB
には当面利上げを回避し、ドルの上昇を抑制する慎重さが必要だろう。
■図表:米国の景気循環推移
(前期比年率%)
12
92カ月
10
8
6
4
2
0
-2
-4
-6
-8
-10
1980
85
90
73カ月
120カ月
95
2000
05
今年3月で
81カ月目
10
15 (年)
(注)網掛けは景気後退期。
(資料)米国商務省、NBER よりみずほ総合研究所作成
1
「2015・16・17 年度内外経済見通し」(みずほ総合研究所 『内外経済見通し』 2016 年 2 月 16 日)
当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき
作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。
2