FOMCは概ね予想通り

2015 年 6 月 18 日号
Global Market Outlook
く lo
FOMC は概ね予想通り
昨日、米国金融政策決定会合(FOMC)が開催されました。市場を驚かせるような決定や発言は見られませんで
した。
1. 主な内容
① 政策金利は全会一致で、現行の0~0.25%を据え置き。
今回利上げを予想する見方はほとんどなく、市場は「据え置き」で一致していました。ただ「タカ派」と呼ばれ
る委員1名が反対票を投じるという憶測も一部にはありました。
② 声明文では景気に対する認識をやや上方修正。
先日発表された1~3月期の GDP 成長率落ち込みは、悪天候等による一時的要因によるものという認識が
強まっていることから、ほぼ予想通りと言えます。
③ 2015年の経済成長率予測を下方修正。
3月の2.3-2.7%から、1.8-2.0%へ下方修正されました。1~3月期がマイナス成長に陥ったこと、
及び今後も V 字回復は期待薄で、緩やかな成長に留まるという見方が大勢であり、これについても意外感
はありません。
④ 政策金利予測も下方修正。
参加者による政策金利予測ですが、3月時点では今年の年末までに、2、3回の利上げを見込んでいました。
またグラフ1のように4名がそれ以上の大幅な利上げを予想していました。今回は1,2,3回がいずれも5人
となりました。また来年末についてもグラフ2のように予想の分布が狭まり、今年と合わせて5回程度の利上
げが中心的な見方となっています。
グラフ2:FOMC参加者政策金利予測(2016年末)
グラフ1:FOMC参加者政策金利予測(2015年末)
利上げ回数と
0
目標水準
0.00~0.25%
1
2
3
4
5
6
7
人数
8
利上げ回数と
0
目標水準
0.00~0.25%
①0.25~0.50%
②0.50~0.75%
③0.75~1.00%
④1.00~1.25%
⑤1.25~1.50%
⑥1.50~1.75%
⑦1.75~2.00%
⑧2.00~2.25%
⑨2.25~2.50%
⑩2.50~2.75%
⑪2.75~3.00%
⑫3.00~3.25%
⑬3.25~3.50%
⑭3.50~3.75%
⑮3.75~4.00%
①0.25~0.50%
②0.50~0.75%
③0.75~1.00%
④1.00~1.25%
⑤1.25~1.50%
⑥1.50~1.75%
今回
3月会合
⑦1.75~2.00%
1
2
3
4
5
6
7
人数
8
今回
3月会合
資料:FRB,弊社
資料:FRB,弊社
2. 利上げ開始は9月か
イエレン議長は、市場が過度に利上げ開始時期に注目していることについて、不快感を示しています。しかしな
がら2006年6月以来の利上げとなり、また「ゼロ金利解除」となるわけですから、仕方のないところでしょう。これ
から年末まで7月29日、9月17日、10月28日、12月16日と4回の FOMC が予定されています。そのうち9月
と12月の会合では今回同様、参加者の予測値が公表され、イエレン議長の記者会見が行われます。「最初の
利上げ」のような重大な決定は、記者会見が設定されている9月もしくは12月に実施される可能性が高いと思わ
れます。イエレン議長は「あくまでも今後の経済データ次第」という姿勢を崩していませんが、市場は9月、12月
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で見方が分かれています。
もちろん、データ次第でしょうが、メインシナリオとしては9月の利上げ開始をみております。足もとの緩やかな
景気拡大が継続すれば、利上げを行う環境が整うと思われることに加え、やや特殊な事情があります。今回想
定される利上げは、これまでとは環境が異なります。単純にフェデラルファンド金利誘導目標を変更するというわ
けにはいかないからです。現在の政策金利は0~0.25%と0.25%の幅を持ったレンジとされており、当面こ
の方式が続くことになるようです。
米国当局が3度にわたる量的緩和を行った結果、巨額の流動性が市場に存在しています。その流動性を回収
することなく、金利を上げることはおそらく過去に例がないと言っていいでしょう。FRB は「売り現先」等を利用する
ことにより、当局の意図した水準へ、市場金利を誘導することが可能と考えているようですが、やはり経験のない
「実験」であり不安は残るはずです。12月の会合での利上げ決定となる場合、12月17日からの実施ということ
で、休暇ムードが強く、市場参加者が減少しているなかでの利上げ開始となってしまいます。また年末の資金繰
りという微妙な問題もあります。できれば回避したいと考えても不思議ではないでしょう。
3. 利上げ開始後も難しい手綱さばきが求められる
利上げを無事開始できたとしても、その後も非常に難しい政策運営となります。昨日の記者会見でイエレン議
長は、2004~2006年の利上げについて質問され、「今、振り返ってみると、もう少し速いペースでの利上げが
必要だったのかもしれない。また会合の度に0.25%という機械的な利上げには問題があった」と発言しました。
FRB の行動があまりにも容易に予期できたため、バブルの形成を許してしまい、結果として金融危機に繋がった
ということです。従って、今回は会合毎、あるいは1回おきに0.25%といった政策変更は行わないと思われま
す。
一方、利上げにより想定される市場の変動、混乱が新興国等に与える影響について質問され、「中央銀行の透
明性を高め、市場との対話を密にすることにより抑制したい」と発言しました。市場を安心させ過ぎても問題、不
安感を高めても問題が生じるわけです。そして、通常は8千億ドル程度であった FRB の資産残高が4兆5千億ド
ルまで膨張したなかで、しかもゼロ金利からの利上げ開始となります。難しい手綱さばきが求められることになり
そうです。
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※ 2015年1月以降のレポート
1月5日号
2015年金融市場の「初夢」
1月号
2014年度第3四半期の市場動向と今後の見通し
1 月22日号
原油価格急落の背景、影響と今後の見通し
2月5日号
マイナス利回りの国債が急増
2月10日号
案外「素直な」為替市場
2月27日号
欧州中銀の量的緩和
3月10日号
視野に入りつつある米国の利上げ
3月17日号
年初から意外に強い円相場
3月19日号
昨日のFOMC(米国金融政策決定会合)について
4月3日号
2014年度の金融市場、主役は日本銀行と欧州中央銀行
4月号
2014年度第4四半期の市場動向と今後の見通し
4月24日号
緊迫度を増すギリシャ情勢
4月28日号
英国選挙と金融市場
5月15日号
米国利上げ観測と長期金利
5月29日号
週初からのドル高円安について
6月1日号
5月の市場動向
6月4日号
ドラギ総裁発言で、長期金利上昇が加速
6月8日号
米国雇用統計は予想を上回る強さ
6月11日号
黒田日銀総裁発言で円高
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